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FAQ(よくある質問)

 

Q.宅建士の名義貸し責任とは?

宅建士の名義貸しに関する相談が増えています。

名義貸しについては禁じられていますが、毎月数万円の収入を得られたり、業務委託契約などの書類をかわして勧誘に応じてしまう登録者もいます。

その結果、不動産会社が詐欺などをすると、共同不法行為責任を問われる例も増えてきています。

被害者としては、回収率を高めるため、少しでも責任がある人は被告に加えるのが通常です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

このような名義貸しの責任を認めたのが、秋田地方裁判所大曲支部平成29年9月22日判決です。

 

事案の概要

原告は、山林を所有していました。

ここに不動産会社の従業員が登場。

金銭を支払う意思がないのに、それがあるかのように装って、「札幌の顧客が苫小牧市所在の土地を探している」「原告がこの土地を購入して不動産会社に対し80万円を支払えば、不動産会社が、原告から代金420万円で本件山林を購入して、原告に対し80万円と合わせて500万円を支払う」と言って、原告を欺きました。

 

そして、従業員らは、原告に対し、不動産会社が原告から代金420万円で本件山林を購入する旨の売買契約書、原告が不動産会社から代金500万円で本件土地を購入する旨の売買契約書及び同売買契約書の重要事項説明書を示しました。

各売買契約書には宅地建物取引主任者として被告の記名及び印影があり、重要事項説明書の「説明をする宅地建物取引主任者」欄には被告の記名及び印影がありました。


このため、原告は、同日、その旨誤信して、前記各売買契約書及び重要事項説明書に署名して押印して、訴外会社との間で前記各売買契約を締結しました。

この際、被告は、同日、従業員らに同行しておらず、原告に対し、重要事項を説明していませんでした。


その後、原告は、従業員らに対し、80万円を支払いました。


そして、不動産会社は、同月24日、本件山林について、前記本件山林の売買契約に基づいて所有権移転登記を経由。


詐欺については、一度、被害を受けると、連続して被害を受けることが多いです。

今回も、いろいろな名目で被害者は追加支出を求められます。

 

従業員らは、原告に対し、金銭を支払う意思がないのに、それがあるかのように装って、別の人が別の土地を購入したいと言っていること、原告が不動産会社から代金600万円でこの土地を購入して、訴外会社が立て替える300万円に加えて、原告が不動産会社に対し300万円を支払えば、不動産会社が前回のの500万円と合わせて800万円を支払うこと、原告が不動産会社に対し300万円を支払わなければ、不動産会社が原告に対し以前の500万円を支払うことができなくなることを言って、原告を欺きました。

ここで、同じように契約をさせられてしまいます。

契約に関し、宅地建物取引主任者として被告の記名及び印影がされる一方で、同行しなかった点も同じです。

 

一度、払うと行ったお金を難癖をつけて払わない、払うために追加支出を求めるのも詐欺の常套手段です。

不動産会社はこれを繰り返し、
平成28年10月13日支払の80万円
平成28年10月27日支払の300万円
平成28年11月4日支払の300万円
平成28年11月9日支払の500万円
平成28年11月17日支払の700万円

と、合計1880万円を約1ヶ月の間に払わせています。

 

宅建士の責任に関する主張


前提として、不動産会社や従業員については、共謀して、詐欺行為を行って、損害を負わせたのであるから、共同不法行為責任を負うとの主張です。

宅建士であった被告も共謀により責任を負うというのが第一の主張。

これに対し、被告は、請求原因事実について、すべて、知らないとし、不動産会社に対し、名義の使用を承諾したが、不動産会社がどのような仕事をしているかについて知らなかったと主張しています。

 

これに対し、原告は、被告が不動産会社に対し名義を貸しただけであるとしても、被告は、宅地建物取引士であり、宅地建物取引業法の規定からすると、不動産会社らが被告の名義貸しによって顧客に対し詐欺行為を行って、これによって顧客が損害を被る可能性について認識することができ、かつ、不動産会社らの詐欺行為を阻止する法律上の義務を負っていたというべきであり、被告は、少なくとも重大な過失によって、これを怠り、不動産会社らの詐欺行為を幇助したのであるから、共同不法行為責任を負うと反論しました。

 

裁判所の判断

被告が不動産会社に対し名義の使用を承諾し、その結果、売買契約書に宅地建物取引主任者として被告の記名及び印影が表示され、重要事項説明書の「説明をする宅地建物取引主任者」欄に被告の記名及び印影が表示されたことによって、被告が不動産会社らの原告に対する詐欺行為を補助し容易ならしめたと認めることができるから、被告の不動産会社に対する名義の使用の承諾は、訴外会社らの原告に対する詐欺行為の幇助に当たるというべきであると認定しました。

詐欺行為を容易にしたため、幇助という理由です。

 

また、宅建業法15条が、宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行わなければならないと規定していること、同法15条の2が、宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならないと規定していること、同法35条が、宅地建物取引士は、宅地又は建物の売買等の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引業者の相手方等に対し、重要事項説明書を交付して説明すると規定していること、同法68条及び同条の2が、宅地建物取引士が他人に自己の名義の使用を許して当該他人がその名義を使用して宅地建物取引士である旨の表示をしたときは、都道府県知事は、当該宅地建物取引士に対し、必要な指示をすることができ、情状が特に重いときは、当該登録を消除しなければならないことを規定していることからすると、これらの規定の趣旨は、宅地又は建物の取引の専門家の宅地建物取引士が、宅地又は建物の売買等の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引業者の相手方等に対し、重要事項説明書を交付して説明すること等によって、購入者等の利益を保護することであるというべきであるとしています。

専門家の責任を法律から導き出している内容です。


そして、これらの規定及びその趣旨からすると、被告は、不動産会社に対し名義の使用を承諾したことによって、私法上、不動産会社が被告の名義を悪用して不動産会社の顧客に対し適法な取引行為を装って詐欺行為をするなどして損害を被らせることを予見する義務があり、かつ、予見することができたというべきであり、さらに、被告は、私法上、不動産会社に対し名義の使用を承諾することによって、訴外会社の顧客に対し損害を被らせる行為をしてはならない法的義務を負っていたというべきであるとしています。

しかし、被告は不動産会社に対し名義の使用を承諾して同義務に違反したのであるから、被告には少なくとも過失があるというべきであるとしました。

専門家なんだから、名義を貸したりしたら、悪用されるリスクがあることくらい予見しなければならなかったという内容です。

 

損害額

原告が騙し取られたお金、不動産の評価額とこれらの1割の弁護士費用として、合計2095万5200円の損害が発生したと認定しています。

なお、原告は慰謝料請求もしていましたが、これは否定されています。

判決で、名義貸しをした宅建士に対し、2095万5200円と最後の不法行為の日である平成28年11月17日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を命じています。

 

宅建士資格をお持ちのみなさま、くれぐれも名義貸し等なさらぬようご注意ください。

 

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