横浜市の法律事務所。横浜市西口。土日夜間も相談可能。

HOME 〉FAQ(よくある質問) 〉Q.アマゾンの価格表示で措置命令が問題になった事件とは?

FAQ

相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

FAQ(よくある質問)

 

Q.アマゾンの価格表示で措置命令が問題になった事件とは?

アマゾンのサイト上の価格表示が二重価格表示ではないかと争われた事件があります。

東京地方裁判所令和元年11月15日判決です。

措置命令が出された後、アマゾンが原告となって起こされた措置命令取消請求事件です。


事案の概要

消費者庁長官は、平成29年、原告が、原告の運営する商品販売用ウェブサイトである「Amazon.co.jp」において、平成26年10月から平成29年7月までの間に順次、C株式会社が製造して一般消費者に販売している3種類のクリアホルダー等の商品について、それぞれ、製造事業者が一般消費者への提示を目的としないで商品管理上便宜的に定めていた価格又は製造事業者が設定したいわゆるメーカー希望小売価格より高い価格を、本件ウェブサイト上の販売価格を上回る「参考価格」として、いわゆる見え消しにした状態で併記し、実際の販売価格が「参考価格」に比して安いかのように表示し、もって景表法5条2号が規定する表示(いわゆる有利誤認表示)をしたとして、原告に対し、景表法7条1項の規定に基づく命令(本件措置命令)をしました。

原告は、本件措置命令は、原告が本件商品に係る参考価格を自ら決定した事実はないこと、本件各表示は、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものではないこと等を看過してされた違法なものであるなどとして、被告に対し、本件措置命令の取消しを求めて、本件訴訟を提訴しました。

 

アマゾンの概要等

裁判所が認定したアマゾン社の概要です。

原告は、多数の従業員を擁し、数億アイテムにわたる幅広い商品を取り扱う100億米ドルを優に超える売上高(ただし、平成28年度)を有する本件ウェブサイトを運営してリテール事業及びマーケットプレイス事業(原告が、商品の製造事業者、小売業者等に対し、原告が運営する電子商店街である本件ウェブサイトにおいて商品を出品し、販売するための場及びこれに伴うサービスを提供する事業)を営む法人。

世界各地で様々な商品を販売するウェブサイトを運営する世界的にも著名な米国法人の傘下にある法人であると認定。

 

なお、原告は、平成28年5月1日、アマゾンジャパン株式会社とF株式会社が合併し、存続会社であるF株式会社が組織変更されて成立した合同会社です。

このF株式会社は、同日付けで、我が国における本件ウェブサイトの運営事業、我が国における本件ウェブサイトを通じた小売事業を、それぞれ、事業譲渡により承継しています。

 


アマゾンの提供商品、価格表示の仕組み

アマゾンのウェブサイトにおいて提供されている商品には、

・原告のみが(リテール事業として)販売するもの、

・単数又は複数の出品者のみが(マーケットプレイス事業を利用して)販売するもの、

・原告(リテール事業)及び単数又は複数の出品者(マーケットプレイス事業を利用)のいずれもが販売するもの

の3種類があります。

 

サイトの設定により、複数の販売者が存在する場合であっても、同一の商品については1つの商品詳細ページしかなく、複数の販売者のうちの1者を商品詳細ページ上において販売者として表示する仕組みです。

当該ページのリンク先に他の販売者の名称、販売価格等が掲載されるようになっています。

 

原告及び出品者が同一の商品を販売している場合、原告がリテール事業において販売する商品の販売価格は、同一商品を販売する競合他社の販売価格等を参考にして、原告が使用するコンピュータシステムを利用して決定され、出品者が販売する商品の販売価格は、出品者が本件ウェブサイトに掲載する商品の情報を登録する際に原告が使用するコンピュータシステムに販売価格を入力することによって決定されます。

その上で、原告が使用するコンピュータシステムが総合評価によって最も顧客に信頼されると判定した販売者(原告又は出品者)が、商品詳細ページにおいて販売者として表示され、当該販売者が決定した販売価格が当該商品詳細ページの中央部分に表示される一方、他の販売者が決定した販売価格は、当該商品詳細ページの右側及びリンク先ページに表示される仕組みです。

 

販売価格や参考価格の表示

アマゾンサイトには、商品詳細ページの価格欄に販売価格が表示されるほか、参考価格が併記されることがあります。

これは、リテール事業における原告の仕入先や出品者が、任意で、原告が使用するコンピュータシステムに入力する情報です。

同一商品について、複数の者によって参考価格が入力されることもあるが、商品詳細ページにおいては、そのうちの1つのみが表示されることになっています。


本件措置命令に至る経緯等

アマゾンが販売する本件商品は、本件ウェブサイト中の商品詳細ページにおいて、平成26年10月1日から平成29年5月10日までの間、実際の販売価格を上回る「参考価格:○○」との価格が、実際の販売価格と併記されて表示されていました。

このような商品が複数あったものです。

本件5商品の本件各表示の直下には、本件各表示に係る本件5商品の販売者が原告であることを示す旨の記載である「この商品は、Amazon.co.jpが販売、発送します。」との記載が表示されていました。


そこで、消費者庁長官は、平成29年、原告に対し、本件5商品の取引について、景表法5条の規定によって禁止されている同条2号に該当する不当な表示を行っていたとして、景表法7条1項の規定に基づき、本件措置命令をしたものです。

 

措置命令の内容

その内容としては以下のものでした。

(ア) 原告は、原告が一般消費者に販売する本件5商品の各商品に係る表示に関して、次に掲げる事項を速やかに一般消費者に周知徹底しなければならない。この周知徹底の方法については、あらかじめ、消費者庁長官の承認を受けなければならない。


a(a) 原告は、本件3商品を構成する各商品を一般消費者に販売するに当たり、本件ウェブサイトにおいてそれぞれした前記ア(ア)の表示が、実際の販売価格を上回る「参考価格」と称する価額を実際の販売価格に併記することにより、あたかも、「参考価格」と称する価額は、一般消費者がこれを参考にすることにより実際の販売価格の安さの判断に資する価格であり、実際の販売価格が当該価格と比較して安いかのように表示していたこと(本件表示①)。
(b) 実際には、「参考価格」と称する価額は、本件3商品の製造事業者が社内での商品管理上便宜的に定めた価格であり、一般消費者への提示を目的としていなかったものであったこと。

中略

d 前記a(a)、b(a)及びc(a)の各表示は、それぞれ、前記a(b)、b(b)及びc(b)のとおりであって、それぞれ、本件5商品の各商品の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であり、景表法に違反するものであること。

(イ) 原告は、今後、本件5商品又はこれらと同種の商品の取引に関し、前記(ア)a、b及びcの表示と同様の表示が行われることを防止するために必要な措置を講じ、これを原告の従業員に周知徹底しなければならない。

(ウ) 原告は、今後、本件5商品又はこれらと同種の商品の取引に関し、前記(ア)a、b及びcの表示と同様の表示を行うことにより、当該商品の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示をしてはならない。

(エ) 原告は、前記(ア)に基づいて行った周知徹底及び前記(イ)に基づいてとった措置について、速やかに文書をもって消費者庁長官に報告しなければならない。

 

原告の提訴

原告は、平成30年1月26日、本件訴えを提起。


原告は、同日、東京地方裁判所に対し、本件措置命令の効力の停止を求める申立てをしたが、東京地方裁判所は、同年6月13日、上記の申立てを却下する旨の決定。

原告は、同月20日、東京高等裁判所に対し、上記の決定に対する即時抗告をしたが、東京高等裁判所は、同年9月10日、上記の即時抗告を棄却する旨の決定。

結局、本件訴えのなかで争われることとなりました。


アマゾンが本件各表示をした事業者なのか?

最初の争点がこれでした。

景表法が規制する対象になるのは、表示内容の決定に関与した事業者としています。

アマゾンのサイトでは、マーケットプレイスによる出品者もいたことから、価格表示の主体は誰なのかという問題がありました。

「表示内容の決定に関与した事業者」とは、自ら又は他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者のみならず、他の事業者が決定したあるいは決定する表示内容についてその事業者から説明を受けてこれを了承しその表示を自己の表示とすることを了承した事業者も含まれるとしました。

本件においては、原告は、アマゾンウェブサイト上に、いつ、何を、どこに、どのように表示をするのかという仕組みを自由に決定することができること、原告と出品者が同一の商品を販売している場合、当該商品の販売価格は、原告が販売するものは原告が使用するシステムが、出品者が販売するものは出品者が、それぞれ決定し、原告が使用するシステムがした総合評価の結果に従って、1つの販売者が設定した販売価格が商品詳細ページの中央部分に表示される仕組みを構築していることなどを指摘。

本件5商品については、いずれも原告が販売者であり、その旨が本件5商品の商品詳細ページにも表示されていたこと(「この商品は、Amazon.co.jpが販売、発送します。」との表示がされていたことも併せ考慮すると、本件においては、原告が、一定の場合に二重価格表示がされるように本件ウェブサイト上の表示の仕組みをあらかじめ構築し、当該仕組みに従って二重価格表示である本件各表示が実際に表示された本件5商品について、原告が、当該二重価格表示を前提とした表示の下で、自らを本件5商品の販売者として表示し、本件5商品を販売していたのであるから、原告は、本件各表示について、表示内容の決定に関与した事業者といえるのであって、本件各表示の表示者は、原告であると認められるとしました。

 

本件各表示は有利誤認表示か?

表示がアマゾンによるものであったとして、問題になる有利誤認表示となるかが争われました。

二重価格表示が有利誤認表示に該当する場合とはどのような場合なのか問題になります。


景表法5条2号は、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示に該当する表示をしてはならない旨を定めています。


そして、二重価格表示のうちどのようなものが同号に該当するのかを判断する基準として、公正取引委員会は、ガイドラインを定めています。

このガイドラインは、消費者団体、小売業の関係団体の代表者等を構成員とする「価格表示の在り方に関する懇談会」において関係者から意見を聴取したり、実際の事例を収集して分析したりした上で、パブリックコメントも経て定められたものであると認められ、その内容については、一般的な合理性を有するものであると認められるとしました。

 

本件ガイドラインは、「二重価格表示が行われる場合には、比較対照価格として、過去の販売価格、希望小売価格、競争事業者の販売価格等多様なものが用いられている。これらの比較対照価格については、事実に基づいて表示する必要があり、比較対照価格に用いる価格が虚偽のものである場合には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。」と定めた上で、希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示について、「希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に、製造業者等により設定され、あらかじめ公表されているとはいえない価格を、希望小売価格と称して比較対照価格に用いるときには、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。」と定めています。

また、「希望小売価格に類似するものとして、製造業者等が参考小売価格や参考上代等の名称で小売業者に対してのみ呈示している価格がある。これらの価格が、小売業者の小売価格設定の参考となるものとして、製造業者等が設定したものをカタログやパンフレットに記載するなどして当該商品を取り扱う小売業者に広く呈示されている場合(製造業者等が商談の際に当該商品を取り扱う小売店の一部の問い合わせに対して個別に呈示するような場合は含まない。)には、小売業者が当該価格を比較対照価格に用いて二重価格表示を行うこと自体は可能であるが、希望小売価格以外の名称を用いるなど、一般消費者が誤認しないように表示する必要がある。また、参考小売価格等を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合に、製造業者等が当該商品を取り扱う小売業者に小売業者向けのカタログ等により広く呈示しているとはいえない価格を、小売業者が参考小売価格等と称して比較対照価格に用いるときには、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。」と定めていました。


本件表示で比較対照価格として用いられた価格は、出品者が社内において、商品管理上便宜的に定め、小売業者から個別の問い合わせがあった場合に、「参考上代」という名称で回答していた価格であったと認定されています。

また、他の部分で比較対照価格として用いられた価格が記載されたものは、一般消費者向けにも、小売業者向けにもなく、本件ウェブサイト以外では、当該価格を表示したものは存在しないものもありました。

そうすると、本件表示の「参考価格」は、「参考上代等の名称で小売業者に対してのみ呈示している価格」であり、かつ、「製造業者等が商談の際に当該商品を取り扱う小売店の一部の問い合わせに対して個別に呈示するような場合」であるため、「小売業者の小売価格設定の参考となるものとして、製造業者等が設定したものをカタログやパンフレットに記載するなどして当該商品を取り扱う小売業者に広く呈示されている場合」に係るものには該当せず、かつ、「製造業者等が当該商品を取り扱う小売業者に小売業者向けのカタログ等により広く呈示しているとはいえない価格」であることになると指摘。

ガイドラインの記載から、「一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当する」ものと認めるのが相当であるとしました。


他の価格についても、誤入力等により、事実に基づかない、客観的には虚偽のものであったことになるとして、不当表示に該当すると判断しました。

 

 

消費者庁長官が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用の有無

アマゾンは、裁量権の逸脱等の主張もしていました。

しかし、原告に対して措置命令をする必要性がないとも認め難いとして排斥。

裁判所は、本件措置命令がインターネット上の小売業者に対して遵守不可能な規制を課すものであることをうかがわせる事情等は見当たらないとしています。

また、消費者庁長官が、差別的意図をもって特に不利益性の高い内容の措置命令を発出したなどの平等原則に違反して本件措置命令を発出したことをうかがわせる事情等も見当たらないとして排斥。

 

表示が取りやめられていたとしても、措置命令を発出することが必要性を欠くものであるとも直ちには、認め難いとしました。

本件措置命令が、消費者庁長官が有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであることを認めるに足りる証拠はないとして、原告の主張を排斥しました。

 

手続の違法性は?

アマゾンは、措置命令を発出する手続の適法性についても争いましたが、こちらの主張も排斥されています。

まず、原告は、消費者庁の担当者が、平成29年12月8日、原告の従業員に対し、弁明の機会の付与をする旨の通知をした際、本件措置命令の内容の概要を口頭で説明したにとどまり、消費者庁が保有する証拠について閲覧及び謄写をする機会を与えず、保有する証拠の内容について説明せず、証拠が存在するか否かについても説明をしなかったから、実質的には、原告に弁明の機会の付与をしたものとはいえないのであり、本件措置命令には、行政手続法13条1項2号に違反する瑕疵があると主張しました。


しかし、行政庁が、弁明の機会の付与をする際、不利益処分の名宛人となるべき者に対し、当該行政庁が保有する証拠について閲覧及び謄写をする機会又は当該行政庁が保有する証拠の内容若しくは証拠の存否についての説明を受ける機会のいずれか又は双方の機会を与えなければならない旨を規定する法令上の根拠は見当たらないから、原告の主張は、その前提を異にするものであるとしました。

そして、本件全証拠によっても、消費者庁長官が原告に対してした弁明の機会の付与が、同号に違反するものであったことをうかがわせる事情等は見当たらないとして、この点は排斥。

その他の手続の違法性に関する主張も排斥されました。

 

アマゾンほどの企業が争っても主張が認められなかった裁判となります。

サイト上等で複数の価格表示、複数業者の商品を取り扱うような場合には、このような事態にならないようチェックするようにしておきましょう。

 

 

横浜にお住まいの方で、法律相談をご希望の方は、以下のボタンよりお申し込みできます。

相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

オフィス

ジン法律事務所 弁護士法人

横浜駅前事務所

代表者:弁護士 石井琢磨

〒221-0834
横浜市神奈川区台町16-1
ソレイユ台町805

TEL:0120-141-961

8:00~20:00

 

 

<主要業務エリア>

クリック 相談予約

ジン法律事務所弁護士法人Webサイト

横浜駅前事務所

9/29相談会開催


厚木本店

9/21相談会開催

ページトップへ