FAQ
FAQ(よくある質問)
Q.不貞相手への訴訟告知のメリット・デメリットは?
訴訟告知のメリット・デメリットについて不貞裁判を例に解説します。
配偶者がいる異性と関係を持ち、不貞慰謝料の請求を受けた事例です。
その際、自分の不貞相手に対して、訴訟告知をすることが多いです。
この記事は、
- 自分だけが不貞慰謝料請求の裁判を起こされた
- 不貞相手の裁判で訴訟告知をされた
人に役立つ内容です。
訴訟告知をするケース
よくあるケースが、配偶者のいる男性と交際、不貞関係を続けていたところ、相手の妻から不貞慰謝料の裁判を起こされたという相談です。
この際、不貞相手である夫に対して、訴訟告知をすることがあります。
訴訟告知とは
訴訟告知は、当事者が、裁判の係属中に、補助参加など裁判に参加することができる第三者に対して、その訴訟係属の事実を告知するものです。
これにより、訴訟告知をした人(告知者)が裁判で敗訴した場合、訴訟告知をされた人が訴訟に参加しなかったとしても、被告知者に参加的効力を及ぼすことができます。
事例のように、夫に対して、訴訟告知をするシーンでは、もし、不貞事実があり、損害賠償義務を負うとすると、それは夫との共同不法行為になります。
妻に対しては、夫も責任を負う形になります。
このような共同不法行為の関係では、一人が損害賠償をすると、他の共同不法行為者に対して、責任割合に応じて求償することができます。一定割合を支払えと請求できるのです。
つまり、妻に支払った慰謝料のうち、一部は夫に対して求償し、請求できる関係です。
訴訟告知のメリット
ところが、その際、夫からは「妻とは婚姻関係が破綻していたから、慰謝料なんて払う必要なかったんだよ」等、共同不法行為の成立を争う主張がされる可能性があります。
そのような主張が認められると、片方の裁判では、共同不法行為が成立、他方の裁判では不成立となってしまいます。
そうすると、自分は払ったのに、求償できなくなるというデメリットが出てきます。
このようなことを避けるため、裁判所の裁判の結果を、訴訟告知をされた人にも及ぼすのが参加的効力です。
不貞関係がなかった、婚姻関係破綻など主張する可能性がある場合には、訴訟告知をすることで後の争いを減らせるのです。
訴訟告知のメリットは、自分の裁判と同じ結果を相手にもたらすことができる点にあります。
なお、不貞慰謝料の請求を受け、相手の夫婦がいまだに同一家計の場合、「夫への求償をしない」ということ自体を理由に減額交渉することもあります。合意書や和解条項などにも盛り込むことがあります。
妻としては、慰謝料を回収したのに、夫に求償され、家計からお金が出ていくのであれば、その分が無意味になります。そこで、求償しない代わりに、当初の支払い額を下げてくれ、と交渉するのです。
訴訟告知のデメリット
不貞慰謝料の請求を受けた側からすれば、訴訟告知をしても経済的にはデメリットはないはずです。
しかし、感情面でのデメリットが出てくることはあります。
まず、妻は、夫に対して訴訟告知をされたのであれば、怒ることがあります。これ以上、夫を巻き込むなという主張をしたくなります。
また、夫についても、わがままではありますが、裁判に巻き込まれたくないという気持ちを持っているのが通常です。そのような訴訟告知をされたことで、感情的に関係がこじれる可能性はあります。
訴訟告知のタイミング
裁判に参加してもらうなら、早いほうが良いですが、一般的には、答弁書提出後など、ある程度、争点が見えてからの方が多いです。
答弁書が出されると、訴状の主張を認めるのかどうかなど、争点がある程度、見えてくるからです。
訴訟告知を受けた側も、参加するかどうかの判断の際に、争点が何なのかはチェックすることになるでしょう。
訴訟告知の手続
裁判所用・原告用・被告知者用の訴訟告知書3通を裁判所に提出します。その際、被告知者へ送達するための郵便費用も支払います。切手等の組み合わせについては、裁判所によって違うことがありますので、書記官に連絡して確認します。
訴訟告知は、「告知の理由」および「訴訟の程度」を記載した訴訟告知書を裁判所に提出して行います。
「訴訟の程度」には、裁判所名と、審理の段階、次回期日の予定等を記載します。
審理の段階については、
「第1回口頭弁論期日が、令和2年10月16日午前10時に開かれ、訴状陳述、答弁書が擬制陳述となり第2回口頭弁論期日が、令和2年11月27日午前10時と指定されている。」
というような記載が一般的です。
訴訟告知を受けた場合の対応
訴訟告知を受けた人は、その裁判に参加し、敗訴を防ぐなどの目的で活動する意味があるのかどうか検討する必要があります。
例えば、夫が訴訟告知を受けたものの、不貞行為はあったのに、不貞相手が争っているような場合を考えてみましょう。
この裁判に補助参加をした場合には、証人尋問などを受けることになります。
その際に嘘はつけません。
そうすると、不貞行為が立証されてしまう可能性があります。
自分の主張立証によって、不貞行為が立証されるという点を不利益だと考えるのであれば、証拠関係を確認し、自分が関与しなければ不貞行為が立証されないというような場合には、あえて補助参加をしないという選択肢もあります。
不貞行為が立証されないなら、後で求償されるリスクもないからです。
ただし、このようなケースでも、証人として呼ばれ尋問される可能性もありますので、その点も考慮して検討する必要があるでしょう。
不貞行為自体が争われておらず、婚姻関係破綻などの主張がされているようなケースでは、このような点を主張立証することで、請求棄却や、慰謝料減額になることもあります。夫自身の活動が、そのように役立つ場合には、補助参加をする意味もあるでしょう。
このような構造は、不貞相手のみが訴えられ、不貞をしていた配偶者に対して訴訟告知がされたようなケースでは検討される構造です。不貞相手だけの供述では、婚姻関係の中身までわからないので、婚姻関係破綻の立証は極めて難しくなるからです。
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