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FAQ(よくある質問)

 

Q.不貞慰謝料の請求が美人局では?

不貞慰謝料の請求を受けた際に、過去のやりとりから、美人局ではないかという相談もあります。

美人局は、つつもたせ、と読みます。

美人局は、夫婦等が共謀し、妻が男性と性的関係を持った後、夫が登場し、金銭を要求する行為です。

夫婦間以外でも、彼氏と名乗る男性が出てきて脅迫してくるというパターンもあります。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

不貞慰謝料の発生理由

結婚している女性と性的関係を持った場合、相手女性の配偶者からすると、不貞行為となります。

このような場合、配偶者である夫から慰謝料請求ができるとされています。

美人局についても、相手の女性に配偶者がいる場合、客観的には不貞関係と見えるため、女性の夫が不貞慰謝料を請求してくるのは、法的に正しいように見えます。

現実には、この区別はなかなか難しいです。


女性からホテルに誘われたところ、ホテルで夫を名乗る男性が待ち構えていたような場合には、比較的わかりやすいです。

しかし、後日、請求されるようなパターンだと区別しにくいです。

なぜか、不貞に関する証拠がハッキリと残っているようなことが多いですが、美人局以外の事案でも、そのようなことがあります。

 

最近では、ネットでの出会いも多く、出会い系サイト、Twitter、LINEを通じた美人局も出てきています。

 

 

美人局は犯罪行為

美人局は、夫婦間での共謀なので、配偶者の承諾もあり、本来であれば違法行為にならず、慰謝料請求もできないはずです。それにも関わらず、慰謝料請求をしてくるのであれば、架空請求と同じく詐欺罪にあたります。

ただ、この共謀を立証することはなかなか難しいです。

妻側の裏切りでもないと、証明はしにくいです。

 

また、慰謝料請求の際に、脅迫行為があれば、恐喝罪等が成立する可能性はあります。

こちらは、言動という客観的な行為によるものなので、行き過ぎた請求を受けた場合、恐喝罪にあたるという主張は検討してみる勝ちがあるでしょう。

刑事事件として、警察に相談した場合、過去に前科や同様の相談がある場合、捜査の姿勢が変わることも多いです。

 

 

不貞慰謝料の請求自体を否定する説

裁判実務では、配偶者がいる異性と不貞関係になった場合、配偶者から不貞相手に対する慰謝料請求が認められています。

ただ、このような請求について、否定すべきと主張する学説もあります。

なぜなら、不貞行為で、第三者に責任追及を認めると、美人局を誘発するからという理由です。

実際に、不貞配偶者と離婚しないようなケースで、不貞相手に対する第三者責任を追及する行為は、第三者から不貞配偶者の家計にお金が動く行為であり、不公平になる場合もあります。

このような場合に、不貞相手から不貞配偶者に対して求償することで解決しようとする事例もありますが、不貞相手の責任がゼロになることは極めて少ないでしょう。

そうすると、ひどい事例では、不貞配偶者が配偶者と結託して不貞相手を攻撃するようなこともありえてしまいます。

このように、不貞慰謝料と美人局の事例は極めて似ている構造です。

 

 

美人局だという主張

このような構造だからといって、不貞慰謝料の裁判を起こされて「美人局」と主張して、それが通るかといえば、立証の問題があり微妙です。

詐欺罪の立証が難しいように、慰謝料を否定するための共謀の立証も難しいのが現実です。

また、根拠なく、推測だけで美人局だと主張することで、実際には、通常の不貞慰謝料請求だった場合、請求者の感情を害することになるでしょう。場合によっては、慰謝料増額の主張をされることもありえます。

 

 

美人局だから逃げる

人によっては、美人局だと思うから、連絡を断つ、逃げる、仕事も辞めて所在不明になるとまで言い出す人もいます。

ただ、相手に知らせない目的で、住所を移転したとしても、携帯電話等から請求先住所は弁護士会照会で確認できます。

裁判を起こされないようにと、相手方からみて所在不明状態になったとしても、裁判自体はできます。

公示送達という方法で裁判をされたりして、争わないうちに判決が出てしまうリスクがあります。

公示送達は、裁判所の掲示板に2週間掲示しておくことで、訴状等が送達されたものとされる手続です。その後、欠席裁判となり、判決で多額の請求が認められてしまうリスクがあるのです。

さらには、預金照会等で差押をされるリスクがあります。

裁判でしっかり主張をして争うよりも、逃げるという選択は、かえって不利益を受ける可能性が高いのではないかと感じます。

 

不貞慰謝料と自己破産

裁判所で認定された不貞慰謝料の金額や、他に借金があるような場合には、自己破産という選択を検討する人もイます。

収入や財産の状況によっては、支払不能ということで、自己破産が認められます。

自己破産では、手続をしても、支払い義務が残ってしまう非免責債権があります。

非免責債権の中で「悪意」で与えた損害賠償請求がありますが、通常の不貞慰謝料の場合には、これに該当しないとされています。

つまり、自己破産をすれば、不貞慰謝料の支払義務もなくなります。

美人局だと裁判等で争い、慰謝料の減額を主張しても、支払いできないような金額が認められてしまった場合、最悪の選択として自己破産という方法もあるわけです。

 

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