任意整理を一部だけする方法と法的リスクの解説。横浜駅西口の法律事務所。

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FAQ(よくある質問)

 

Q.一部のカードだけを任意整理できる?

クレジットカードを複数枚使っている人から、一部のカードだけを任意整理して、他をそのまま支払うという方法ができるかという質問を受けることがあります。

理論的にはできますが、リスクが大きいという回答になります。

この記事は

  • 一部の借金だけ任意整理したい
  • 車ローンなど整理できない借金があっても任意整理は使える?

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

 

任意整理とは

任意整理は、借金問題を解決する債務整理のうちの一つの方法です。

ほかには、自己破産や個人再生など裁判所を使った解決方法があります。

任意整理は、弁護士のような専門家が、借主と貸金業者との間に入り、1件1件の債務について交渉をし、分割払いの和解や合意をしていく方法です。

貸金業者としては、契約に従って利息や遅延損害金を請求することが法的にはできます。

ただ、多重債務のような状態になってしまっている場合には、そのままだと支払いができなくなることが想定されます。

自己破産や民事再生などの法的な手続をされると、元金も回収できなくなります。

それよりは、元金だけでも支払ってもらえた方が良いということで、貸金業者が任意整理での分割払いの和解に応じてきたという経緯があります。

 

任意整理の合意内容

任意整理は、1件1件の債権者と交渉を進める方法です。

基本的には、それまでの借金で生じた元金を分割で支払っていく交渉を進めます。

10年以上前までは、分割払いの対象は元金だけであること、将来利息をつけないことなどの条件が、日弁連統一基準としてつくられ、このような内容でほとんどの合意ができていました。

 

しかし、過払い金請求が増え、貸金業者の経営は悪化、債権者によっては任意整理に対して厳しい対応をし、一定額の利息や遅延損害金の主張をしてくることも増えました。また、一定回数以上の場合には、将来の利息も含めての和解にしか応じないという業者も出てきています。

そのため、過去の日弁連統一基準での和解交渉にこだわった場合に、交渉が決裂し裁判になるケースもあります。

裁判

 

任意整理による支払回数

任意整理では、交渉になるので、ケースごとに条件は違います。

しかし、合意できやすいラインは、3年から5年での分割払いです。

3年であれば、36回払い、5年であれば60回払いとなります。

過去の取引がよほど短くなければ、5年の60回払いまでの和解を認めてくれることが多いです。

 

業者や事案によっては、さらに長期分割の合意ができることもあります。

借主の家計状況、財産状況、収入状況、家族状況などの情報を開示したうえ、長い交渉を続けることで、5年を上回る分割払いを認めてもらえることも少なくありません。クレジットカード会社では、長期分割がまとまりやすい会社もあります。

逆に、最近では、過去の取引期間が短い場合には、3年などの長期分割すら認めない消費者金融も出てきました。2021年ではアコムあたりがそのような対応に出ています。

数ヶ月分しか利息が払われていないのだから、債務者も短期間で返せという対応です。

 

 

任意整理から外すという選択

冒頭の質問のように、任意整理をするカード、外すカードと選ぶことも理論的には可能です。

この点は、任意整理と、自己破産や個人再生では違います。

 

自己破産や個人再生のように裁判所を使った手続では、全ての債権者を公平に扱う必要があります。

そのため、ここは対象に入れる、ここは外す、という選択ができません。これは法律で決められたルールです。

これに対し、任意整理では、1社1社との交渉という性質上、対象を選択して、一部の業者だけ依頼するということもできてしまいます。

任意整理で一部だけ

もちろん、債務整理という性質上、債権者を平等に扱うべきという原則はあるのですが、やむを得ず一部だけを任意整理の対象とすることもあります。

 

一部だけ任意整理をする場合

では、どういう場合に、このように、一部だけを任意整理するということが行われるのでしょうか。

たとえば、車のローンがあり、これはそのまま支払を続け、他のカード系借金だけを任意整理するということがあります。同様に、家電ローンなどを外すということもあります。

車や家電を残す必要性が高い場合に、整理対象から外すというものです。これらのローンでは、所有権留保がついていると、任意整理した際に車などが引き上げられてしまいます。それを避けるために外すという対応です。

 

また、残っている借金が少額の債権者を外すということもあります。任意整理では、1件ごとに費用がかかるのが基本なので、残りの借金が数万円、完済間近という債権者について、費用対効果から外す人も多いです。

この場合、全体の整理への影響も少ないといえます。

給料

そのほか、銀行系のカードローンがある場合に、その銀行の預金口座を一定期間でも止めたくない場合にも、これを外すという選択をする人も多いです。給料の振込先口座が指定銀行であって変更できないという場合に、その銀行口座を使い続けるために、そのローンを外すという選択をする人もいます。

また、職場からの借り入れ、保証人がついている奨学金などを外して整理するということもあります。

もともとが無利息だったり、低金利だったり、長期間の返済期間が設定され、返済額が少額の場合、任意整理をするメリットが少ないこともあります。

 

任意整理と信用情報

一部の借金だけ任意整理をしたいという声には、他のカードを使い続けたいという本音もあります。しかし、これは保証できるものではありません。

一部のカードだけを任意整理した場合でも、任意整理をすると信用情報に載ってしまうので、1社でも全社でも同じなのでしょうかという質問もあります。

任意整理をすると、対象のクレジットカードについて信用情報に異動登録されます。

しかし、信用情報機関から対象外の会社に通知はありません。

このような仕組みのため、その会社が信用情報を確認しないと、他社の異動情報は判明しません。

また、カード契約の利用を停止するかは各会社の判断です。そのため、直ちに対象外のカードが使えなくなるというわけではありません。しかし、有効期限後に更新がされないケースもあります。

 

一部の借金のみ任意整理をした場合のリスク

ただ、一部のみ任意整理できるのは、任意整理後に完済の見込みがある場合です。

任意整理をしなかったカードからの追加借入れ等をして、別の会社の返済をすると自転車操業状態になるほか、万一、自己破産等の法的手続きをとることになった場合には、偏頗弁済ととして様々なリスクを負います。

自己破産等では、支払を停止したのに、不公平な弁済をしている場合には、それを否認して取り返すこともあります。

また、一定の偏頗弁済は、免責不許可事由ともされています。

注意点

免責不許可事由にならなくても、否認権の検討のため、自己破産手続きでの簡単な同時廃止手続ではなく、管財手続とされるリスクは高くなります。

このように、一部のみ任意整理をすることは、万が一、払えなくなった場合に、自己破産などの最終手段がとりにくくなる、その際のコストが上がるリスクがあります。

特に、任意整理後、短期間で払えなくなった場合などは問題とされやすいです。

一部のみ任意整理という方法をとるのであれば、このような点も理解し、慎重に進める必要があるでしょう。

 

クレジットカード決済を残したい場合の対策

すべてのクレジットカードを任意整理すると、決済方法として、クレジットカードが利用できなくなり不便だという声もあります。

特に、ETCカードなどの利用でそのような声が多いです。

このような決済方法としては、代替手段がないか確認してみましょう。

あらかじめ一定額を預託することでクレジットカードのように利用できるサービスも広まっています。

デポジット型のサービスを調べてみると、意外に使える方法はあります。

デポジット型のカード決済は、自己破産者でも利用している人はいます。

店頭決済であれば、デビットカードでも足りることは多いです。

手元にクレジットカードがあると、使いたい誘惑に負け、借金が増えてしまい、任意整理での返済ができず失敗してしまう人もいます。

カード決済方法のみが理由で、一部のカードを外したいという人は、このような代替手段を検討してみると良いでしょう。

 

 

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