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FAQ(よくある質問)

 

Q.破産管財人から訴えられたら?

破産管財人から訴えられたときには、通常の裁判と同じく、対応が必要です。

ただ、破産管財人固有の問題として、頼んでいはいけない弁護士がいるという話があります。

破産管財人と破産会社は、弁護士法25条の関係で同視されるか争われた事案があります。

最高裁平成29年10月5日決定の紹介です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

事案の概要

抗告人は、破産会社の破産管財人。

破産管財人が、管財業務において、ある会社に対し訴訟提起。

その訴訟で、破産会社から、破産手続開始決定前に再生手続開始申立てにつき依頼を受けていた弁護士が被告の訴訟代理人となったという事案。

さらに、その弁護士からの委任を受けて訴訟復代理人となった弁護士も出てきました。

これに対し、破産管財人が弁護士法25条1号違反を理由として、各弁護士の訴訟行為の排除を申し立てました。

 

過去に再生の依頼、その後、破産をした会社の破産管財人が相手の訴訟について、代理人となることが弁護士法違反の訴訟行為とされるかどうかが問題になったケースです。

 

原審までの判断は?

一審は、排除申立て後の弁護士の訴訟行為を排除する決定をしました。

これに対し、被告や弁護士が即時抗告。

原審は、破産管財人の権限は独立性があることなどから弁護士法違反を否定。原々決定を取り消しました。

これを受けて破産管財人が抗告許可を申し立て。

 

最高裁の判断は?

最高裁は原決定を破棄し、原々決定に対する被告の抗告を棄却し、弁護士の抗告は却下しました。

 

まず手続面としてどうか。

弁護士法25条1号は、先に弁護士を信頼して協議又は依頼をした当事者の利益を保護するとともに、弁護士の職務執行の公正を確保し、弁護士の品位を保持することを目的とするものだと趣旨を認定。

 

弁護士法25条

「弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件」


この場合、相手方当事者は、同号違反の訴訟行為および同号違反の訴訟代理人から委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為について異議を述べ、裁判所に排除を求めることができるとします。


相手方である当事者は、裁判所に対し、同号に違反することを理由として、上記各訴訟行為を排除する旨の裁判を求める申立権を有すると明確に述べました。

 

なお、訴訟行為に対する排除に対する不服申立てができるのかという点にいて、当事者は自らの訴訟代理人の訴訟行為の排除について利害関係を有するから、訴訟代理人の訴訟行為を排除する決定に不服申立ての機会を与えられるべきであるとしつつ、他方で、訴訟の迅速な進行のためには、この決定の判断内容を早期に確定する必要があるとしています。

そして、この点について、訴訟手続からの排除という点で類似する除斥・忌避申立て却下決定と同様であるとし、弁護士法25条1号違反を理由とする訴訟行為排除決定に対し、自らの訴訟代理人の訴訟行為を排除された当事者は、民訴法25条5項の類推適用により即時抗告をなしうるとしました。

 

他方、訴訟行為を排除された訴訟代理人は、訴訟行為の排除につき固有の利害関係を有しないため、自らを抗告人とする即時抗告をすることはできないとしました。

弁護士の即時抗告が却下されているのは、この理由からです。当事者本人が不服申立をできれば良いだろうという判断です。

 

弁護士法違反になるか?

そして、弁護士法違反の点について検討。

破産手続開始決定前の破産会社と弁護士の委任契約により、弁護士は、債権管理や財産の不当流出の防止等につき破産会社を指導すべき立場にあったと認定。

本件訴訟の請求は委任の期間中に発生した債権および委任の期間中に行われた送金等への否認権行使に基づく金員の支払請求権でした。本件訴訟は破産会社の債権管理や財産の不当流出の防止等に関するものといえます。

破産手続開始の決定により、破産者の財産に対する管理処分権が破産管財人に帰属することを理由に、本件において弁護士法25条1号違反の有無を検討するに当たっては、破産者とその破産管財人とは同視されるべきとしました。

破産会社と破産管財人が別であるとすれば、破産会社からの依頼を受けていても、形式的には問題視されないようにも思えます。しかし、本件は、同視されると結論づけました。

 

同号の「相手方」は、文献等においては、民事刑事を問わず同一案件における事実関係において実質的に利害の対立する状態にある当事者をいうとされます。

破産管財人は破産者と別人格であるものの、破産財団の管理処分権を行使する立場であるにすぎず、権利や義務は破産者にあります。

そのため、同視したうえで、実質的に利害対立していると見られるのはやむを得ないという印象を受けます。

 

そうすると、本件訴訟は弁護士にとって「相手方の依頼を承諾した事件」に当たるとし、弁護士法違反になると認定しました。

 

弁護士法25条違反の訴訟行為の効力は?

弁護士法25条違反の訴訟行為の効力については、争いがありました。

この違反がされたときに、どのような手続ができるのかも、この効力をどう考えるかによって変わります。

過去の判例では、異議を出せるとする説が採用されていました。

ただ、異議が出せるという訴訟法上の根拠が何なのか、また、異議を述べた場合の効果がどうなるのかという点がはっきりしないという指摘もありました。

 

弁護士法違反の弁護士の訴訟行為を排除する旨の裁判、代理人として活動するなという申立は、実際にどうすればよいのか問題になるわけです。

裁判例では、中間判決をしたというものもあるようですが、独立して控訴できないことから、結局、この弁護士は代理人として活動を続けられるのか、すぐに確定できないと言われていました。

迅速に進めるなら、決定手続が良いでしょうと言われており、今回の判断もこれに対応するものとなりました。

 

訴訟行為の排除決定に対して不服申立は?

では、この排除の決定に対する不服申立は、どのような手段によるべきなのでしょうか。

今回は、忌避の規定という判断でした。

忌避は、公正な判断ができないような場合に、担当裁判官を外してもらう制度です。

ただ、弁護士の忌避の場合には、裁判官の忌避とは異なり、忌避の理由があるとして排除を認める決定に対しても、依頼者である当事者は不服申立てができるべきとされます。

そこで、民事訴訟法25条5項類推という形式がとられたものといえます。

この不服申立については、当事者についてのみ認められればよく、弁護士である訴訟代理人には、依頼人の当事者と別個に不服申立ての機会まで必要がないとされています。

 

 

 

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