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FAQ(よくある質問)

 

Q.風俗嬢の契約は雇用?業務委託?

風俗トラブルのなかで、風俗嬢と店舗との契約が雇用か業務委託か?という点が争われることがあります。

当然ながら、別業界でもこのような紛争はあります。

偽装請負のケースなどでも参考になるかと思いますので、裁判例を紹介します。

東京地方裁判所平成28年1月26日判決の紹介です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

事案の概要

原告は、店舗型性風俗店を営む被告の店舗で性的サービスの提供に従事。

被告による解雇は解雇権濫用に当たり違法と主張。

不法行為に基づく損害賠償金及び解雇予告手当・付加金の各支払を求めたという内容です。

原・被告間の関係が雇用契約になるのか、業務委託になるのかが争われました。

 

裁判所の判断

結論としては、原告の請求をいずれも棄却。

雇用契約を否定。業務委託契約と認定。契約解消も違法性はなしとの結論です。

 

紛争の経緯

被告は、個室マッサージ業の経営等を行う有限会社。

店舗型性風俗店を経営していました。

原告は、本件店舗に入店。本件店舗において男性客に対して性的サービスを提供する業務に従事。

それ以前から、アダルトビデオの出演、デリバリーヘルスなど、性風俗業界での業務経験を有していました。

入店当時も、デリバリーヘルスの業務を行うほか、性玩具を扱うアダルトグッズのネットショップや実店舗も経営していました。

約半年後、風俗店と風俗嬢との間でトラブルがあり契約解消の話が風俗店側から出されています。

オプションのサービス料の返金を巡ってトラブルがあり、原告は「辞めてやる」などと大きな声で言い、本件店舗から退出。

店長は、店舗型性風俗店で大声を出せば、来店客に不安感・不快感を与え営業上重大な支障を生ずるという問題意識を理解させた上でなければ仕事を再開させられないと考え、原告に対しメール等で面談を要請。

しかし、原告は、業務の再開を希望するだけで話合いだけのために本件店舗に行くつもりはないとして面談を拒絶。

店長は、もはや原告に問題点を理解させた上で本件店舗での業務を再開させるのは困難と考え、その旨被告の本部に報告。

被告本部は、電話で、原告に対し、本件店舗を辞めてもらう旨連絡。

店長は、原告に対し、解雇通知書を作成して交付。

ただし、これは、原告から、解雇文言のある文書を出すよう執拗に要求されたため、インターネットで書式を調べた上、原告が要求する文書を作成したものでした。

 

風俗嬢の契約は雇用契約になる?

仕事の担当が、業務委託契約なのか、雇用契約なのか争われるケースはよくあります。

雇用契約であれば、労働者の保護が厚くなり、契約解消をしにくくなります。

本件でも、風俗嬢という仕事が、業務委託なのか、雇用契約なのかが争われたものです。

原告は、雇用契約を締結し、自分は労働者だと主張しました。

雇用契約になるかどうかは、指揮監督があるか等、いくつかのポイントで判断されます。

 

風俗嬢は指揮監督を受けていた?

原告は、被告の指揮監督下で働いていたとして、次のような事情を主張しました。

本件店舗では、来店客が原告ら女性を選び、店側の指示で原告らが同来店客に対して性的サービスを提供。

原告ら女性は、被告から業務上の指示があるとこれに従っていたものであり、業務指示に対する諾否の自由はなかったと主張。

風俗店一般の形態ですね。

また、本件店舗では、原告ら女性の業務内容及び遂行方法について、予め指定されていたとも主張。

すなわち、本件店舗では、マゾヒズム的趣向の男性客に性的サービスを提供することをコンセプトにして、ルールが設定され、原告ら女性はこれに従うことが予定されていたとのことです。

また、業務遂行上の流れについては入店当初に説明を受け、タオルを置く位置やシャワーを浴びるタイミング等も指定されていたと主張。

 

場所的・時間的な拘束性は?

さらに、本件店舗では、業務場所及び業務時間が被告により指定・管理されていたことも主張。

具体的には、女性が性的サービスを提供する場所は、本件店舗内の個室に限定されており、就業場所が指定されていること。次に、本件店舗では、業務時間についても被告が管理・指定していたこと。

被告は、原告ら女性の希望を聴取した上で業務日・業務時間を調整しているが、最終的にシフトを決定するのは被告側であり、原告ら女性の希望どおりの業務日・業務時間になるわけではありませんでした。原告ら女性は、勤務として入店すると、自由に外出することはできず、店長の指示に従わなければなりませんでした。

場所や時間の拘束性の主張です。

 


報酬の労務対償性は?

業務委託か雇用契約かの区別のなかには、受け取ったお金がどのような性質のものであったか、それが労働の対価という給料といえる性質なのかもポイントになります。

この点、原告は、来店客が支払う料金は、時間・オプションに応じて被告が予め決めているところ、その中から原告ら女性に支払われる金額も決められていると主張。

ここから、本件店舗で業務をする女性は、被告が決めた金額を、労働に対する対価として受領していると主張。

 

来店客は、原告から性的サービスを提供されても、代金は店に支払い、原告は、その日の業務終了後に店から日給を受け取っていました。

原告の受け取る金銭は、原告の労働に対して被告が予め決めた金額を支払っているものであり賃金だと主張しています。

このような報酬は、時間給とは違いますが、給料でも、歩合給や成果給が存在するように、時間給でないというだけで労働者性が否定されるものではありません。ただ、この比較だと、給料の場合には、最低限の金額が決められています。この点、原告は、本件店舗では、入店から2か月間は時給5000円が保障されているとも主張しました。


風俗嬢の雑費等からの労働者性の主張

原告は、さらに備品や諸費用の点からも、労働者性は否定されないことを主張しています。

女性は、来店客に性的サービスの業務を提供する際、私物ではなく、店舗の備品を使用していました。

私物を使用する場合も化粧品やボディソープ等の低廉な物に限られているし、店舗の個室・消耗品の使用料の負担も1日当たり1000円という著しく低廉な金額でした。

また、本件店舗では女性に月1回の性感染症検査が求められ、検査費用は女性が自己負担であるものの、同店舗が提携するクリニックで検査をすれば料金が割引される上、検査結果も直接被告に告知されていました。

このような点で、自身は労働者であると主張しました。

 

風俗店側の主張は?

これに対し、店舗側は、業務委託契約だと反論。

入店時に、業務委託契約を締結し、以降個人事業者として本件店舗で稼働しているという理論構成で反論しています。

店舗内で提供する性的サービスの内容はルールの範囲内で原告ら女性の裁量に任されていると主張。

同店舗では、来店客があると、どのような性的サービスを受けたいかの要望を問診票と称する書面に記載させ、これに基づいて各女性が自分で考えたサービスを提供するのであり、原告の裁量が大きい業務だと主張。

業務日と業務時間について、他の女性との兼ね合いはあるものの、その希望に応じて自由に選択できるとも反論。具体的には、店長からある特定の日に業務を依頼されても、原告ら女性は都合が合わなければこれを拒否することもできる点。

また、週何日働かなければならないという決まりはないし、欠勤や遅刻に対するペナルティも存在しないとのことです。

被告は、原告ら女性が接客する時間や部屋を調整している点については、被告が本件店舗の管理権限を有し、業務の場所を提供している以上、かかる調整権限を有することは当然であるとして、業務委託契約によるものだと反論しています。

女性への支払の際には、当然に源泉徴収もしていない点も主張されています。

本件店舗では、原告の収入は、来店客に対応した業務ごとに発生し、時間を基準に発生するものではないと。

原告が来店客に対応せず控室で待機していても何ら対価が支給されるものはないと、労働者性を否定する主張です。

 

掛け持ちで働いていた?

さらに、被告は、原告の仕事内容についても反論していきます。

原告は、同店舗での業務期間中も、掛け持ちでデリバリーヘルスの仕事をするなど、並行して性風俗の業務に従事していたと。同店舗で専従的に業務をしていたわけではない点を強調。

性玩具を扱うアダルトショップを経営するなど、むしろ個人事業者として活動していたことを主張しています。

損害額に関する風俗嬢の主張は?

原告は、不法行為を主張しているので、その損害額についても確認しておきます。

原告主張は、賃金は歩合給であるが、平均すると月額50万円以上であったと。

違法解雇による逸失利益は6か月分に相当し、300万円を下らないとの主張です。

また、原告は、専門学校に通学しながら本件店舗で稼働し、生活費と学費を賄っていたところ、違法解雇により突然職を失い今後の生活に対する不安等の甚大な精神的苦痛を受けているため、慰謝料は100万円を下らないと主張。

これに弁護士費用を加算した請求です。

 

裁判所の判断理由は?

結論としては、雇用契約、労働者性は否定しています。

裁判所では、前提事実として、本件店舗では、提供する性的サービスの内容についてマニュアルは作成されていないことを指摘(言葉責めと称するサービスについてのみ例文集が作成されている。)、女性がスタッフとして入店した際も、個室内でのタオルの置き方やシャワーを浴びるタイミング等の指導があるだけで、具体的に性的サービスの仕方については、同店舗のコンセプトやルールの範囲内で女性の判断に任されていた点を指摘。

月1回の性感染症検査を義務付けられている点については、検査費用は自己負担であるが、被告が提携する医療機関で受診する場合は、本名を使わなくても源氏名で受診できること、この場合の検査結果は直接的には被告に告知されるが、女性らもIDとパスワードを入力すればWEBサイトで確認できる仕組みになっていると認定。

 

原告ら女性は、他の女性の希望との関係で制約されることはあるが、基本的に業務日・業務時間を選択する自由がある点や、業務内容から、業務遂行上の指揮監督があるとは認められないとしています。

そして、予定された業務日に欠勤したり、遅刻したりしても、特にペナルティが設けられておらず、時間的拘束があるとも認められないとしています。

原告ら女性がサービスを提供する場所が同店舗内に限られている点については、業務委託を締結した場合でも、その時間帯に来店した男性客にサービスを提供することを受諾している以上、これに対応するため同店舗内で待機することが求められるのは当然であり、また、本件店舗は店舗型性風俗店であるから業務の性質上、同店舗内でサービスを提供するのも当然であり、必ずしもこれが労働者としての時間的・場所的拘束を基礎づけるものではないとしました。

 

このような点から、本件店舗での原告被告の関係は雇用契約とはいえず、むしろ業務委託と認定するのが相当であるとしています。

 

業務委託契約の解消による違法性は?

原告は、仮に業務委託契約でも、契約解消は違法性があると主張していました。

この点については、原告被告間の業務委託の実質を検討するに、確かに期間の定めがない継続的な契約関係であるとしつつ、月単位・週単位等で業務を行う回数・時間の最低限を定めていないため、原告がどれだけ業務をするか、被告がどれだけ業務を委託するかの拘束はなく、いわば双方当事者の都合の調整の中で業務量が決まる関係にあり、どれだけの仕事があるかの保障があるわけではないとしています。

また、本件店舗の性風俗店という業務の性質上、原告が長期間にわたり同店舗で業務を継続することを予定して期間の定めをしていないとは考えがたいとしています。

しかも同店舗での業務は開始から5か月程度が経過しているに過ぎない点も指摘。

このような点から、原告被告間の業務委託は、期間の定めがない継続的な関係であるとしても、その継続に対する期待がそれほど大きいものと考えることはできず、やむを得ない事由又は正当な事由を要求して解除を制限すべき事情があるとは認められないとして、原告の請求を排斥しています。

 

 

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