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FAQ(よくある質問)

 

Q.口裏合わせで犯人隠避罪が成立?

悪い結果を回避しようと口裏合わせをしようとすることはよくあります。

しかし、これが刑事事件となると問題です。

ある刑事事件をおこした犯人を助けようと、口裏合わせをし、警察等に虚偽供述をすることで、犯人隠避罪が成立することもあります。

今回は、そのような争いになった最高裁平成29年3月27日第二小法廷決定の紹介です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

事案の概要

ある不良集団のメンバーが、普通自動二輪車の運転で、過失により死亡事故を起こしました。

しかし、救護義務・報告義務も果たしませんでした。

 

被告人は、その不良集団のトップでした。

被告人は、本人から事故を起こしたことを聞きました。

二輪車の破損状況をみるに、捜査機関がメンバーの犯行を突き止めると考えました。

被告人は、メンバーとの間で、この二輪車が盗まれたものとするという話合いをしました。

 

その後、メンバーは逮捕。

被告人も参考人として取調べを受けました。

被告人は、警察官に対し、本件事故当時、二輪車は盗難されていたと虚偽説明をしました。

具体的には、「メンーがゼファーという単車に実際に乗っているのを見たことはない。メンバーはゼファーという単車を盗まれたと言っていた。単車の事故があったことは知らないし,誰が起こした事故なのか知らない。」などと発言。

被告人の虚偽供述もあって、検察官は、メンバーを勾留期間内に家庭裁判所送致できず、処分保留で釈放するに至っています。

 

この虚偽供述について、被告人に犯人隠避罪が成立するのではないかが争われました。

 

最高裁判所の判断

結論として、上告棄却としました。


被告人は、前記道路交通法違反及び自動車運転過失致死の各罪の犯人がメンバーであると知りながら、同人との間で、二輪車が盗まれたことにするという、メンバーを前記各罪の犯人として身柄の拘束を継続することに疑念を生じさせる内容の口裏合わせをした上、参考人として警察官に対して前記口裏合わせに基づいた虚偽の供述をしたものであると事実認定しました。

そのうえで、このような被告人の行為は、刑法103条にいう「罪を犯した者」をして現にされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為と認められるのであって、同条にいう「隠避させた」に当たると解するのが相当であるとしました。

 

犯人隠避罪の「隠避」とは?

判例上、刑法103条の「隠避」は、蔵匿以外の方法により官憲の発見逮捕を免れしむべき一切の行為とされています。

すでに、犯人が逮捕されている場合には、虚偽供述をしても、犯人を逃がすことにはならないではないかという疑問もあります。

しかし、過去の最高裁でも、犯人が既に逮捕勾留されているケースで、身代わり犯人として自首する行為について、犯人隠避罪の成立を認めたケースがありました。

この身代わり犯人による犯人隠避罪は有名な決定となります。

今回のケースでも、最高裁は同じような考えをとり、身柄拘束中であっても、参考人が虚偽供述することで犯人隠避罪が成立すると判断したものです。

 

犯人隠避罪の保護法益は?

犯罪の成否を考えるには、その規定の趣旨、刑法であれば保護法益から考える必要があります。

犯人隠避罪の保護法益は、国の刑事司法を適正に作用させようという点になります。

犯人を逃しても問題なければ、刑事司法が適正に運用されることにはならないでしょう。

 

身代わり犯人のケースでは、身代わり犯人が自首しても、犯人が既に逮捕勾留されているのであれば、そこに変化がないことから、「隠避せしめた」にはならないのではないかという疑問がありました。

実際に、地裁判決ではそのような結論がとられました。

しかし、身代わり犯人の自首により、犯人が誰であるのか捜査が混乱や妨害されることになります。このような点から、高裁以降は、犯人隠避罪が成立するとしたものです。

 

刑事司法としては、身柄が確保されるかどうかという点以外に、刑事裁判での判決、処罰までの全体的な運用が大事です。

捜査機関における逮捕勾留という身柄確保は、あくまで一連の流れの初期段階にすぎません。

犯人の身柄確保が、一旦されたからといっても、その後も刑事司法の適正な運用は大事です。

犯人隠避罪の保護法益から外されるのはおかしい話です。

 

このような保護法益からの観点では、警察等によって身柄拘束されている犯人を、そこから逃れさせる行為も対象になるはずです。

 

 

抽象的危険犯とは?

犯人隠避罪は抽象的危険犯とされます。

犯罪の成立に、具体的な危険の発生までは不要です。

ただ、隠避行為は、法益侵害の危険を実質的に備えたものでなければなりません。

身柄拘束されている犯人に対し、実行行為とされる「隠避させた」といえるかどうかは疑問を唱える見解もありますが、物理的な身柄解放だけではなく、刑事司法全体を見て、正当な刑罰から隠避させるような危険性が一室的にあるかどうかで判断していくことが重要とされます。

今回の決定でも、被告人の行為を、現にされている身柄の拘束を免れさせるような性質の行為だとして、危険がある行為だと認定しています。

 

補足意見における虚偽供述の関連性は?

 

なお、補足意見では、「犯人の身柄拘束を免れさせる性質の行為」といえるためには、単に身柄拘束の可否を判断することに何らかの関連を有する供述というだけでは広範なものが含まれ、処罰の範囲を画することができないので、その可否判断に直接ないし密接に関連した供述内容でなければならないとしています。

そして、今回の被告人の供述は、二輪車が盗まれたと言っていたというもので、これが事実であれば、犯行当時、メンバーは二輪車を使用できなかったことになる、メンバーの犯行と矛盾するものであるから、犯人の身柄拘束を免れさせることに直接関わる虚偽供述内容としています。

さらに、口裏合わせという態様は、単なる虚偽事実よりも、信用性判断を困難にするもので、より危険性があると認定しています。

口裏合わせの事実は、虚偽供述が隠避に該当するというための重要な考慮要素ともしています。

 

 

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