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FAQ(よくある質問)

 

Q.黙示の共謀で共同正犯になる?

共犯事件の相談も多いです。

共犯事件では、共謀が問題になるケースも多いです。

この共謀が、明確にされておらず、黙示でも良いかが争われた事件があります。

犯行現場にいることで比較的緩やかに共謀が認定され、生じた結果すべてに責任を負わされた事例です。

札幌高裁平成29年4月14日判決の紹介です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

事案の概要

被告人は2名。

仮に、XとYとします。

2人とも、酒気帯び状態。

Xは普通乗用自動車、Yは普通貨物自動車を運転。

信号機がある交差点を直進する際、お互いの車の速度を競うように高スピードで走行。

交差点の赤信号を無視。

2台とも、時速100キロ以上で、交差点に進入。

Xの運転する車が、交差点の左方から進行してきた車に衝突。

被害車両には、5名が同乗。

うち2名が車外に放出され、路上に転倒。

Yの運転する車が、うち一人を轢き、その車底部で引きずるなどしました。

同人を含め、4名を死亡させ、1名は加療期間不明の重傷。

 


2人の被告人は、信号が赤色表示でも無視して進行しようと考えて共謀したものとし、赤色信号殊更無視類型の危険運転致死傷罪の共同正犯などで起訴されました。

 

一審判決の判断は?

札幌地方裁判所平成28・11.10判決は、XおよびYに対し、共同正犯の成立を認め、それぞれ懲役23年の刑としました。

この原審判決に対し、被告人側は、控訴。

2人は、競うように高速度で走行したと認められない、殊更に赤色信号を無視して本件交差点に進入した事実もない、本件危険運転に関する共謀を遂げた事実はないと主張し、共同正犯の成立を争いました。

 

高裁判決の判断は?


結論として、控訴棄却。


被告人両名は、同じ目的地に向けて走行を開始した後、信号認識可能地点以降も相当な時間と距離にわたり高速度で走行を続けた上、本件交差点が迫っても減速等の停止に向けた格別の措置を講じることなく時速100キロメートルを上回る高速度で進行していたものと認定。

さらに、そうした走行に当たり互いに相手車両の走行状況に関する認識を妨げる格別の事情が見当たらず、むしろ、各被告人が、自車の走行状況に加えて相手車両の走行状況を認識していたとも指摘。

互いの走行速度を意識し、自動車で競走する意思の下に、本件交差点が迫っても互いに停止する状況にないことを知りながら、上記の高速走行を続けていたものと認められるとしました。

そして、これらの事情に照らすと、被告人両名は、本件交差点に至るに先立ち、殊更に赤色信号を無視する意思で両車両が本件交差点に進入することを相互に認識し合い、そのような意思を暗黙に相通じて共謀を遂げた上、各自がそのままの高速度による走行を継続して本件交差点に進入し、本件危険運転の実行行為に及んだといえると結論付けています。

暗黙の共謀で、共同正犯を認定しています。

 

共同正犯でなかったら?

今回のようなケースで、共同正犯だと認められなかったとすると、Xは、車内の被害者について本罪が成立するものの、Yについては、自身が轢いた1名のみ責任を負うか検討されることになるでしょう。

しかし、Yからすれば、被害者は、前車両の衝突で突然車内から路上に放り出されていたことから、責任が発生するか微妙なところです。

 

これに対し、共同正犯となれば、Yにも全員の死傷結果の刑事責任が出てきます。

しかし、本件では、明確な意思の連絡がありませんでした。

共謀共同正犯の責任を問うにしても、黙示の共謀という理論構成になる点が問題でした。

 

 

危険運転致死傷罪では、何を共謀?

危険運転致死傷罪は、結果的加重犯と言われます。

このような場合、判例は、基本犯部分について、共同正犯責任を基礎づける程度の共謀があるのであれば、共同正犯を認めるたちばにあります。

危険運転行為としては、類型的な行為が規定されています。

このような行為について共謀していれば、危険行為により、人の死傷という加重結果も予見していたと評価されます。

危険運転行為の共謀があるなら、共同正犯は成立すると認定されることになるでしょう。

 

黙示の共謀で良いのか?

さらに、本件では、黙示の共謀で良いのか?という問題もあります。

そもそも、共同正犯において、実行行為をしていない共犯者に責任を負わせる共謀共同正犯については、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よって犯罪を実行した事実がある場合、共謀に参加した事実がある以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったと評価できるという前提があります。

 

明示的な共謀がないような場合にも、「他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行った」と評価して良いかという問題になります。

共謀共同正犯の認められやすさとしては、共犯者が現場にいる事案の方が高いです。

現場であれば、黙示の意思の連絡があったとも評価しやすいです。

本件でも、2人の被告人が「赤信号無視してでも競走だ!」なんて、話は出ていません。

しかし、2人とも、相手が高スピードで走っていたことを確認しながら、近いところで走行していたものです。

しかも、交差点に近づいても、相手が停止しそうにない、お互いがスピードを緩めないという状況でした。

そうであれば、相手が赤信号を無視するだろう、という認識がお互いに出てきていたものと思われます。

このようなな具体的な状況から、黙示の共謀共同正犯を認めたものでしょう。

 

 

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