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FAQ(よくある質問)

 

Q.求人票と雇用契約の内容が違う場合は?

労働問題の相談のなかで、ハローワーク等の求人票の内容を見て面接に行き採用されたものの、実際に働いてみたら内容が違ったという相談があります。

そのようなときに、参考になる裁判例です。

京都地裁平成29年3月30日判決の紹介です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

事案の概要

障がい児童への放課後デイサービス事業を営む会社が被告とされた事件です。

代表者は、職種と月給額だけを決定し、多くの人の応募を得られる形で募集要領を記載するように指示。

そこで、職種(管理責任者〔療育・介護〕)、本件事業所の開設時期、雇用形態を正社員、雇用期間を雇用期間の定めなしとし、賃金(「基本給月額25万円、月平均労働日数21.8日」)、定年制なし等と求人票に記載。

ハローワークに求人申込み。

代表者は、この求人票を確認していませんでした。


原告は、当時64歳の男性。

本件求人票を確認。

給料と定年制がない点に着目、面接を受けました。

原告は定年制の有無について質問。

被告代表者は未定と回答。

その後、採用連絡。

原告は、パートタイムの形態で稼働し、時給計算で給料が支給されました。

その後、原告は、フルタイムで勤務を開始。

このタイミングで労働条件通知書が提示されました。

そこには、契約期間(「期間の定めあり、(平成26年3月1日~平成27年2月28日)更新する場合があり得る」)との記載があり、定年制(「有(満65歳)」)の記載もありました。

原告は、収入が絶たれては困ると考え、裏面に署名押印。

後日、定年制等を認識。

 

紛争の経緯

被告会社は、契約期間満了で労働契約が終了したものとしました。

これに対し、原告が、主位的に労働契約は期間の定めのないもので解雇無効、予備的に被告がした雇止めが無効で従前の契約が更新されたと主張して、請求としては、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と解雇または雇止めの翌日以降分の賃金の支払等を請求しました。

ここで、求人票の記載がどのような効力を持つのか争われました。

 

裁判所の判断

求人票について、雇用契約締結の申込みを誘引するもので、求職者は、当然に求職票記載の労働条件が雇用契約の内容となることを前提に雇用契約締結の申込みをすることを理由に、求人票記載の労働条件は、これと異なる別段の合意をするなどの特段の事情のない限り、雇用契約の内容となると解するのが相当であるとしました。

そうすると、異なる別段の合意をしたかどうかが次に問題になります。

この点について、面接でも雇用期間の定めや雇用期間の始期について求人票と異なる旨の明確な話はなく、そのような状態で採用を通知したことから、本件労働契約は、期間の定めのない契約として成立したと認められるとしました。

同じく定年制についても、その旨の合意をしない限り労働契約の内容とはならないとし、求人票の記載と異なり定年制があることを明確にしないまま採用を通知した以上、定年制のない労働契約が成立したと認めるのが相当としました。

 

さらに、雇用条件通知書により、労働契約が変更されたかどうかが問題になりました。

しかし、使用者が提示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば、当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく、当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきという基準を出しました。

そして、同意の有無については、当該行為を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当であるとしました。

そして、本件で問題になったような労働契約の期間の定めの有無は、契約の安定性に大きな相違があるとし、賃金と同様に重要な労働条件であるといえると認定。

また、定年制の有無及びその年齢も、契約締結当時64歳の原告の場合には、やはり賃金と同様に重要な労働条件であるといえるとしました。

このような状態だと、期間の定め及び定年制のない労働契約を、1年の有期契約で、65歳を定年とする労働契約に変更することには、原告の不利益が重大であると認められるとしました。

通常であれば、変更に応じるメリットが労働者側にはないことになります。

 

このような流れで、原告の請求を認め、原告には労働契約上の地位を認めました。

 

求人票の条件が違う

求人票に書かれていた内容と違う、という声はよく聞きます。

今回の判決は、そのような場合でも、求人票記載の条件を労働契約の内容として認めたものです。

特に重要な事項に関して契約内容に認められやすくなっています。

労働者側として重要な判決であるとともに、求人をする企業としても求人票の記載に気をつけなければならないことがわかる判決です。

従来の裁判例でも、求人票の位置づけについて、求職者の雇用契約締結の申込みを誘引するものとされていました。

ただ、契約成立時に当事者間で求人票と異なる契約がされた場合、原則としてその契約による合意が優先するとされていました。

今回の契約書では、雇用条件通知書に記載があるものの、採用面接時の説明状況を認定し、求人票記載の合意があったものと認定したものです。

使用者側としても、書面をもらえば自分たちの主張が通るというわけでもないことに注意しなければなりません。

 

 

雇用契約の変更は?

求人票と面接時の話が異なる場合、どぢらが労働契約の内容になるかが争われるケースは多いです。

これに対し、今回の判決では、求人票の内容が契約、面接時の話が、一度された契約の変更になるかどうか、という視点で判断されました。

労働条件の重要なものについては、変更したかどうか慎重に判断しなければならないとしたのです。

今回の原告は、その年齢から、期間の定めと定年制のない契約を重視していたもので、これらの変更は、不利益が重大となります。そのような変更は自由な意思に基づくものではないと判断したものです。

 

求人票と実態が違ったような場合には、参考にしてみてください。

 

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