FAQ
FAQ(よくある質問)
Q.景表法違反の措置命令が出されたら?
企業等の事業者にとって死活問題となりうる景表法違反。
この措置命令について争われた東京地裁平成28年11月10日判決を紹介します。
措置命令の違法性を争った事案です。
法的には、この取消を求めて裁判を起こすことはできます。そのポイントがわかる裁判例となっています。
事案の概要
原告は、窓ガラスに貼るフィルムを販売していました。
そのリーフレットやサイト上で、本件商品を窓ガラスに貼ると、夏には遮熱効果、冬には断熱効果があること、冷暖房効率が向上する旨を表示していました。具体的な数値も挙げられていました。
消費者庁長官は、原告らに対し不当景品類及び不当表示防止法4条2項(現7条2項)に基づき、期限内に、本件各表示の
裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めました。
原告らは、これに応じ、資料提出。
これに対し、消費者庁は、各資料は合理的根拠資料とは認められないと判断。
本件各表示は景表法4条1項1号(現5条1号)に該当する優良誤認表示とみなされるものだとしました。
原告らに対し、各表示が同法違反であると消費者に対して周知徹底することを命ずる措置命令。
原告らは、措置命令の取消し等を求めて訴え提起。
裁判所の判断
請求棄却。
景表法4条2項の規定は、消費者庁長官が事業者に対し表示の裏付けとなる合理的根拠資料の提出を求め、事業者がこれを提出しない場合には、当該表示を同条1項1号に該当する表示(優良誤認表示)とみなすという法的効果を与えることによって、消費者庁長官が迅速かつ適正な審査を行い、速やかに所要の措置を行うことを可能にして、公正な競争を確
保し、もって一般消費者の利益を保護するという法の目的(法1条)を達成するために設けられたものであると、趣旨説明をします。
そのような趣旨等に鑑みると、同項の「当該資料を提出しないとき」とは、提出された資料が合理的根拠資料に該当しない場合を含むものと解するのが相当であるとしています。
企業としては、合理的根拠資料を出せなければ、優良誤認表示とみなされてしまうわけです。
措置命令が適法になる要件は?
本件各措置命令が適法であるといえるためには、その根拠規定である法4条2項に規定された処分要件を満たすことが必要とされます。
それについて、判決では
・消費者庁長官が、本件各表示が同条1項1号に該当するか否かを判断するため必要があると認め、本件各表示をした原告らに対し、期間を定めて、本件各表示の裏付けとなる合理的根拠資料の提出を求めたこと、
・原告らの提出した本件各資料が合理的根拠資料に該当しないこと
の各要件が充足されていることが必要であるとしています。
したがって、本件取消訴訟の審理の対象となる訴訟物は本件各措置命令の違法性一般であり、その根拠規定である法4条2項に規定された処分要件の充足の有無が審理の対象となるわけです。
今回のケースでは、1つ目の処分要件「提出を求めたこと」が充足されていることについては当事者間に争いがありませんでした。
本件取消訴訟においては、2つ目の処分要件の充足の有無、すなわち、原告らの提出した本件各資料が合理的根拠資料に該当するか否かが審理の対象となるというべきであるとしています。
このような枠組みから、本件取消訴訟において、消費者庁長官の定めた提出期限の経過後に提出された資料は、本件各資料が本件各表示を裏付ける合理的な根拠を示すものであるか否かを判断するために参酌し得るにとどまり、参酌し得るのは本件各資料の内容を説明するものや補足するものに限られるというべきであるとしています。
期限後、たとえば、裁判になってから、「根拠があるのだ」といろいろと資料を出しても、裁判所でそれを判断するのではなく、過去の処分が合法かどうかを審査するだけなのだということです。
景表法4条2項のみなし規定の効果は取消訴訟に及ばない?
原告は、景表法4条2項のみなし規定の効果は取消訴訟に及ばないと主張していました。
これに対して、裁判所は、そのような主張は、行政事件訴訟の基本原則というべき取消訴訟の審理構造との整合性を欠くものというほかないとしています。
また、客観的には、みなしの対象を措置命令の根拠規定(法6条)の適用場面に限定する文言が付加されたからといって、上記の基本原則に従って法4条2項のみなし規定の効果が当然に措置命令の取消訴訟にも及ぶと解することが別段妨げられるものともいえないとして、原告の主張を排斥しています。
みなし規定の適用は、表現の自由、営業の自由の侵害?
原告は、みなし規定の効果を取消訴訟に適用することは、憲法で定められている表現の自由や営業の自由を制約するものだから違憲だと主張しました。
しかし、これも排斥されています。
法4条2項のみなし規定は.法6条に基づく措置命令のみならずその取消訴訟にも適用されるとの解釈を前提としてその内容を検討しても、規制の目的が正当であり、これにより事業者が受ける制約がその正当な目的を達成するための手段として必要かつ合理的な範囲にとどまるものということができるとしています。
合理的根拠資料になるかの基準は?
そうすると、企業としては、提出資料が合理的根拠資料と認められるのかどうか、その基準が死活問題になってきます。
この点については、不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針があります。
こちらでは、事業者から提出された資料(提出資料)が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには、
1 提出資料が客観的に実証された内容のものであること、
2 表示された効果や性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
という各基準を満たす必要があるとしています。
また、本件運用指針は、上記「客観的に実証された内容のもの」とは、
ア 試験ないし調査によって得られた結果又は
イ 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献のいずれかに該当するもの
とし、上記アを表示の裏付けとなる根拠として提出する場合、当該試験ないし調査の方法は、表示された商品等の効果や性能に関連する学術界若しくは産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によ
って実施する必要があるとします。
そして、これらの方法が存在しない場合には、社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要があるものとしています。
判決では、本件運用指針の示すこれらの基準は妥当として、これを採用しています。
これらの基準を満たさない場合には、特段の事情がない限り、合理的根拠資料に該当しないとしています。
根拠資料としては、このような基準を満たす必要があるわけです。
判決では、期限内に提出された資料について、個別に詳細な検討をしたうえで、要件を満たさないと認定、これにより請求棄却という結論をとっています。
優良誤認表示の内容
優良誤認表示には、効果や性能を著しく優良と誤認される表示だけではなく、効果や性能が実証されていると誤認される表示も含まれます。
さらに、本件でも問題になったように、事業者が消費者庁長官の定めた期限内に裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出しないと優良誤認表示とみなされるようになりました。
また、景表法には、課徴金制度もあり、同法8条3項によれば、不実証広告にも課徴金が課されます。
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