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FAQ(よくある質問)

 

Q.法定利率の民法改正点は?

2020年4月施行の改正民法で、法定利率が変更されています。

この取扱は注意が必要です。改正点や法定利率が使われる場面を解説します。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

貸付で法定利率が使われる場合

民法改正により、法定利率についても変更されています。

法定利率は、金銭貸付けの際の利息、遅れた場合の遅延損害金、将来の給付分を現在もらう場合にされる中間利息控除などのシーンで使われます。


金銭の貸付けでは、通常は利息を何パーセントにするか利率を決めます。

当事者間によって、合意された利率は「約定利率」と呼ばれます。

利息制限法違反のような高利の場合を除いて、合意すれば、その利率による利息を払わないといけません。

法定利率の出番は、当事者が利息を発生させることだけは合意したのに、利率を定めなかったときです。

この場合は、法律の定める利率で利息が算定されます。これが「法定利率」です。

利息を発生させる合意がない場合には、無利息ですので、そこを間違えないようにしてください。

 

貸付以外で法定利率が使われる場合は?

お金の貸付以外に「法定利率」を使うシーンが、金銭債務の遅滞による損害賠償の額です。

これは「法定利率」によることが原則とされています。ただし、これよりも高い利率が定められている場合は「約定利率」に従います(民419)。

貸金業者などでは、貸付の際の利息の利率以外に、遅れた場合の損害金についても利率を定めています。

通常は、利息よりも遅延損害金のほうが高い利率でしょう。

この遅延損害金については、利息のように発生させる合意までは必要とされていません。

特に合意がされていなくても、遅れたら法定利率での支払い義務が発生します。支払い期限後は、法定利率により遅延損害金を払わなければならなくなるのです。

 

中間利息の控除とは?

もうひとつ、法定利率が使われるシーンとして、中間利息の控除があります。

これは、将来、取得すべき利益についての損害賠償額を算定する際に利息を控除するものです。中間利息を控除する場合には、法定利率で控除しなければならないとされています(最判平17.6.14)。

もっとも使われるのが、交通事故で、死亡事故や後遺障害が発生し、逸失利益の計算をするシーンです。

逸失利益は、将来得られたであろう収入のことです。

これを計算する場合には、本来なら、1年後、2年後・・・10年後などにもらえた給料を、いま受け取ることになるので、利息を控除する作業が必要です。

今もらえたのであれば、それを運用することによって、10年後には利息がつき増えているはずです。

10年後に、500万円の年収があったときに、いま500万円を渡してしまうと、10年分の利息をもらえることになります。これは損害賠償の適正という点ではよくないということで、現在、受け取る場合には、500万円からさらに割り引く計算をします。

これが中間利息の控除というものです。

この計算をする場合には、利息を決めなければならないのですが、これを法定利率でするというわけです。

つまり、年5%分が割り引かれて減額されることになります。

過去には、年5%の運用なんてできないのだから、中間利息の控除はおかしいと主張された事件もありますが、この主張は裁判例では排斥されています。

 

法定利率の引き下げ

いままで年5%だった法定利率は、法改正により変動利率へ、2020年時点では、年3%とされています。

年5%の法定利率は、約120年見直しがなされていませんでした。

市中金利を大きく上回っていて、実態に合わないとされました。

逸失利益算定の際に争われたことなどが理由となり、これが下げられたものです。

 

法定利率の変動制とは?

この利率は、3年に1度の変更があります。

市中金利は短期的に変動します。

しかし、法定利率を頻繁に変更すると、手間が大変なため、3年に1回の変更とされました。

法定利率の見直しの際には、「基準割合」を基準とします。

「基準割合」とは、日本銀行の発表する国内銀行における短期貸付け(貸付期間が1年未満の新規貸付け)の貸出約定平均金利を指標とし、その5年間の平均値といわれます。

 

利率の変動の仕組みは?

まず、直近変動期の「基準割合」を出す。

次に、当期の基準割合を出す。

その差に相当する割合を、直近変動期の法定利率に加算したり減算したりします。

その差の1%未満の端数は切り捨てます。

直近変動期の基準割合との差が1未満であれば、法定利率は変動しないことになります。

 

法定利率の適用基準時は?

各種の計算シーンで、いつの時点における法定利率を使うのかは問題になります。


新民法では、利息の算定では、その利息が生じた最初の時点における法定利率を使います(新民404条1)。

遅延損害金の算定では、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率を使います(新民419条1)。

中間利息の控除では、損害賠償請求権が生じた時点における法定利率を使います(新民417の2)。

 

貸付けの利息では、「利息が生じた最初の時点」、すなわち、利息を生ずべき元本債権について利息が生じた最初の時点をいうのですが、利息は原則として、貸付金を借主が受け取った日以降に生じます(新民589Ⅱ)。
そのため、貸付金を受け取った日である貸付日に利息は発生、この時点の法定利率によります。

つまり、貸付け時点の法定利率が適用されます。

 

次に、遅延損害金では、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によります。ることになる。
債務者が遅滞の責任を負うのは、支払期日が到来した時点(新民412条1)です。

売買では代金の支払期日到来の時点の法定利率となります。売買契約時ではないことになります。

中間利息では、損害賠償の請求権が生じた時点の法定利率です。

交通事故など不法行為による損害賠償請求権は、事故の時点で発生しますので、中間利息控除に当たっては、事故の時点の法定利率を適用して中間利息控除の計算をします。

 

法律家の頭だと契約日基準と誤解することもあるので注意しないといけません。

 

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