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FAQ(よくある質問)

 

Q.詐害行為取り消しの遅延損害金は?

 

最高裁平成30年12月14日第二小法廷判決の紹介です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

事案の概要

ある銀行が経営破綻。

その銀行の取締役について、損害賠償責任が問われました。

銀行は、ノンバンクから巨額の商工ローン債権を買い取ったのですが、これを承認する取締役会決議に賛成したとして、取締役の善管注意義務違反が認められ、取締役は、会社法423条1項に基づき、約37億6000万円の支払いを命じられました。

原告は、銀行から、この損害賠償債権を譲り受け、預金保険機構との協定に基づき整理回収業務を行っていました。

 

この取締役は、親族に資金を渡していたため、原告は、これを詐害行為とし、その取り消しと、受領済みの金銭相当額およびこれに対する遅延損害金の支払いを求める訴えを提起。

訴えられたのは、弟と妻。

弟は、ほとんど価値のない破綻銀行の株式を取締役に売却した代金であると主張。

妻には、取締役から1億2000万円が贈与されていました。

 

第1審と原審ともに原告の主張を認容。

被告らが上告、上告受理申立て。

 

その申立て理由は、遅延損害金の起算点が「訴状送達日の翌日」とされた点でした。

被告らは、判例(高裁判例)違反を主張。
請求認容判決の確定までは金銭支払債務自体が発生していないはず、遅延損害金の発生を防止する手段もないとして、起算点は「判決確定の日の翌日」と主張しました。

 

最高裁判所の判断

上告棄却。

 

まず、被告側の主張の確認。

所論は、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務(以下「受領金支払債務」という。)は、詐害行為の取消しを命ずる判決(以下「詐害行為取消判決」という。)の確定により生ずるから、その確定前に履行遅滞に陥ることはないのに、上告人らの被上告人に対する各受領金支払債務につき各訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を命じた原審の判断には、法令の解釈適用の誤りがある旨をいうものであるとしています。

 

そして、詐害行為取消権の効果について確認。

そこで検討すると、詐害行為取消しの効果は詐害行為取消判決の確定により生ずるものであるが(最高裁昭和34年(オ)第99号同40年3月26日第二小法廷判決・民集19巻2号508頁参照)、その効果が将来に向かってのみ生ずるのか、それとも過去に遡って生ずるのかは、詐害行為取消制度の趣旨や、いずれに解するかにより生ずる影響等を考慮して判断されるべきものであるとしています。

 

詐害行為取消権は、詐害行為を取り消した上、逸出した財産を回復して債務者の一般財産を保全することを目的とするものであり、受益者又は転得者が詐害行為によって債務者の財産を逸出させた責任を原因として、その財産の回復義務を生じさせるものである(最高裁昭和32年(オ)第362号同35年4月26日第三小法廷判決・民集14巻6号1046頁、最高裁昭和45年(オ)第498号同46年11月19日第二小法廷判決・民集25巻8号1321頁等参照)と制度趣旨を確認しています。

 

ここから、効果についての考え方を展開。

そうすると、詐害行為取消しの効果は過去に遡って生ずるものと解するのが上記の趣旨に沿うものといえるとしています。

また、詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領金支払債務が、詐害行為取消判決の確定より前に遡って生じないとすれば、受益者は、受領済みの金員に係るそれまでの運用利益の全部を得ることができることとなり、相当ではないと、実質的な判断も。

 

したがって、上記受領金支払債務は、詐害行為取消判決の確定により受領時に遡って生ずるものと解すべきであると効果についての結論を導いています。

そして、上記受領金支払債務は期限の定めのない債務であるところ、これが発生と同時に遅滞に陥ると解すべき理由はなく、また、詐害行為取消判決の確定より前にされたその履行の請求も民法412条3項の「履行の請求」に当たるということができるとしています。


以上によれば、上記受領金支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当であるとしました。

期限との関係を整理していますね。


これを本件についてみると、被上告人は、上告人らに対し、訴状をもって、各詐害行為の取消しとともに、各受領済みの金員相当額の支払を請求したのであるから、上告人らの被上告人に対する各受領金支払債務についての遅延損害金の起算日は、各訴状送達の日の翌日ということになると結論づけました。

 

 

詐害行為取消権の効果


詐害行為が取り消された場合、受益者は取消債権者に対して回復義務を負います。

金銭の贈与などが取り消された場合や、弁済が取り消された場合には、金銭支払義務が生じます。

これがいつから遅滞になるのかというのが争われました。

裁判例は分かれていました。

訴状送達日の翌日とするものもあれば、金銭受領(詐害行為)時とするもの、判決確定日の翌日とするものもありました。

 

このようななかで、最高裁が結論を出したものとなります。

今回の判決では、受益者の回復義務は、期限の定めのない債務としました。

詐害行為取消しの効果を、行為時にさかのぼって生じるとして、この結論を導いています。

遡及効があるのであれば、受益者が債務者から受領した金銭は回復義務の対象となります。

 

 

遅滞時期は?

遡及効との関係で、遅滞時期が問題になったわけです。

不法行為による損害賠償債務では、不法行為時から遅滞となります。

遡及効が認められるとすれば、回復義務は発生と同時に履行期となるともいえます。

ただ、詐害行為取消権は、裁判上の行使が必要とされます。

この観点からすれば、判決確定日にも一理あります。

 

このような点はあったものの、この判決では、遅滞に陥る時期を、訴状送達の日としました。

バランスを考慮しての判断ともいえます。

 

 

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