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FAQ(よくある質問)

 

Q.刑事事件の資料は文書提出命令の対象になる?

刑事事件の捜査資料を、民事裁判でも活用したいと思うことは多いです。

実況見分調書のような書類の活用はよくあるのですが、それ以外の資料、とくに刑事裁判の公判で使われなかった書類を民事裁判で証拠にできないか争われたケースがあります。

刑事資料に対する文書提出命令に関する裁判例です。

最高裁平成31年1月22日第三小法廷決定の紹介です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

事案の概要

原告は、平成27年1月に傷害事件の被疑者として逮捕され、その後、起訴されて、平成29年12月に有罪判決が確定していた人物です。捜査は大阪府警察が担当。

その後、原告は、大阪府警の違法捜査などを主張して、大阪府に地足、国賠法1条1項に基づき損害賠償請求をして提訴したという事件です。

この国賠法の民事訴訟において、傷害事件の刑事裁判公判では提出されなかった書類の提出を求めました。

具体的には、大阪府が所持する捜査に関する通話履歴報告書等の各写し、逮捕状請求書、その疎明資料および逮捕状の各写しでした。

これらの文書について、民事訴訟法220条1号ないし3号の文書として、文書提出命令の申立て。

 

原審の判断


原審である大阪高裁は、本件各文書は、まず220条1号所定の引用文書または同条3号所定の法律関係文書に該当する
とは認めました。

ただし、これらの文書の原本は検察官が保管し、刑事訴訟法47条ただし書によれば、これを公にすることが相当か否かの決定権限は検察官にあり、その写ししか所持していない大阪府は判断権限を持っていないことを指摘し、大阪府に対して各文書の提出を命じることはできないとしました。

文書提出命令の申立ては不適法として、却下しました。

これに原告が不服申立て、最高裁に持ち込まれました。

 

最高裁の判断

原決定を破棄する。
本件を大阪高等裁判所に差し戻すとの決定でした。

 

まず、原審が指摘した刑訴法47条については、その本文において、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」と定め、そのただし書において、「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」と定めている点について解説されています。

同条ただし書の規定によって「訴訟に関する書類」を公にすることを相当と認めることができるか否かの判断は、当該「訴訟に関する書類」が原則として公開禁止とされていることを前提として、これを公にする目的、必要性の有無、程度、公にすることによる被告人、被疑者及び関係者の名誉、プライバシーの侵害、捜査や公判に及ぼす不当な影響等の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情を総合的に考慮してされるべきものであり、当該「訴訟に関する書類」を保管する者の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきであるとしています。

そして、民事訴訟の当事者が、民訴法220条3号後段の規定に基づき、刑訴法47条により原則的に公開が禁止される「訴訟に関する書類」に該当する文書の提出を求める場合においても、当該文書の保管者の上記裁量的判断は尊重されるべきであるとはしています。

しかし、当該文書が法律関係文書に該当する場合であって、その保管者が提出を拒否したことが、民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無、程度、当該文書が開示されることによる上記の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものであると認められるときは、裁判所は、当該文書の提出を命ずることができるものと解するのが相当であるとしました。

法律関係文書についての取扱いは違うという話ですね。

これをさらに展開していきます。

また、民事訴訟の当事者が、民訴法220条1号の規定に基づき、上記「訴訟に関する書類」に該当する文書の提出を求める場合においても、引用されたことにより当該文書自体が公開されないことによって保護される利益の全てが当然に放棄されたものとはいえないから、上記と同様に解すべきであり、当該文書が引用文書に該当する場合であって、その保管者が提出を拒否したことが、上記の諸般の事情に照らし、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものであると認められるときは、裁判所は、当該文書の提出を命ずることができるものと解するのが相当であるとしています。

 

原本を持っていない点は?

原本は検察庁にあるという点は、どのように解釈されたのでしょうか。


ところで、公判に提出されなかった、刑事事件の捜査に関して作成された書類の原本及びその写しは、いずれも刑訴法47条により原則的に公開が禁止される「訴訟に関する書類」に該当するところ、同法その他の法令において、当該原本を保管する者と異なる者が当該写しを保管する場合に、当該原本を保管する者のみが当該写しについて公にすることを相当と認めることができるか否かの判断をすることができる旨の規定は存しないと指摘。

そして、当該写しをその捜査を担当した都道府県警察を置く都道府県が所持する場合には、当該都道府県は、当該警察において保有する情報等を基に、前記の諸般の事情を総合的に考慮して、同条ただし書の規定によって当該写しを公にすることを相当と認めることができるか否かの判断をすることができるといえるとしました。

したがって、この場合には、上記の判断は、当該都道府県の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきであるとしています。

刑事事件の捜査に関して作成された書類の写しで、それ自体もその原本も公判に提出されなかったものを、その捜査を担当した都道府県警察を置く都道府県が所持し、当該写しについて引用文書又は法律関係文書に該当するとして文書提出命令の申立てがされた場合においては、当該原本を検察官が保管しているときであっても、当該写しが引用文書又は法律関係文書に該当し、かつ、当該都道府県が当該写しの提出を拒否したことが、前記イの諸般の事情に照らし、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものであると認められるときは、裁判所は、当該写しの提出を命ずることができるものと解するのが相当であるとしました。

写ししか持ってもらず、原本は検察庁にあるという反論は有効でないことになります。

 

差し戻しへ

裁量権逸脱の基準を出したので、それについて本件ではどうなのか審理すべきということで、差し戻しています。

本件各文書の提出を命ずるか否かは、本件各文書に含まれる個々の文書ごとに、その提出を拒否した相手方の判断が、本件の本案訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無、程度や当該文書が開示されることによる弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものであると認められるか否かを検討するなどした上で決せられるべきものであるから、これらの点について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととするとしています。

 

刑事資料の写しと文書提出命令

刑訴法47条で公開が制限されている刑事関係の書類ついても、民訴法220条1号の引用文書に該当すれば、法律関係文書と同じく、文書提出命令が認められる可能性が出てきたということになります。

この際は、民事訴訟においてその文書を取り調べる必要性と、当該文書が開示されることによる関係者や刑事手続等に生じる弊害などを総合考慮、提出拒否の判断が合理的な裁量権の範囲を逸脱して、濫用と認められれば、文書提出命令が認められることとなりました。

そして、原本の所持者以外に、写しの所持者も、独自に判断する権限があるとされたものです。

刑事文書ということもあり、裁量権自体があるため、簡単に認められるものではありませんが、余地はあるということになります。

特に捜査資料では、普通に入手できない資料も多く、裁判での証拠価値が高いものも含まれているため、有効に活用できれば、訴訟が有利に働くでしょう。

自分が認める書類の写しがどこにあるのかを確認することで、これらの資料を入手できる確率も上がることになります。

 

 

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