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FAQ(よくある質問)

 

Q.預り金が流用されたら弁護士賠償保険は使える?

事件などで弁護士に預けていたお金が流用されるという事件もないわけではありません。

過去、相続や過払い金などで、このような事件は起きています。

そのような流用問題が起きたとき、弁護士賠償責任保険で保護されないのかという問題があります。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7


動画での解説はこちら。

弁護士賠償責任保険

弁護士賠償保険について解説します。

弁護士の預かり金流用問題などで弁護士の賠償保険などで、依頼者が保護されないのかと質問を受けました。


弁護士賠償保険については、加入は義務ではありません。

ただ、全体の74%程度の弁護士が加入している保険です。

他の業界でもあることが多いですが、弁護士が依頼者に対して損害を与えてしまった際に賠償金を保証してくれる保険です。

医療過誤の保険だったり、美容師さんの保険だったりと似たような保険です。


弁護士もこ、弁護過誤などで依頼者に損害を与えてしまう事態に備えて、この賠償保険に加入していることも多いのです。

ただ、この保険が想定しているのは、保険会社と契約して弁護士が依頼者に対し多額の損害賠償義務を負ってしまった場合のフォローです。

自分の資産・収入だけでは払えないので保険会社にフォローしてもらうという趣旨です。

弁護士賠償保険が使われるケース

弁護士賠償責任保険の適用例などをみると、どのようなケースで保険が認められているのかわかります。

たとえば、過払い金請求事件。

依頼者が弁護士に依頼し、弁護士から貸金業者に対して取引履歴を開示請求。

これが開示された時点で、あと1か月で過払い金が時効になってしまうというケースでした。

過払い金の請求のためには、利息制限法の計算をしなければならないところ、これを外注に回して戻ってきたら、時効期間が過ぎてしまっていたという内容です。

急いで計算すれば、間に合ったのに、弁護士のミスだという主張ですね。

かなり前から、過払い金については、受任通知段階で請求しておくという方法も叫ばれていますが、これが使われていたのかは不明です。

消滅時効に関しては、弁護過誤も多いところで、弁護士の中でもシビアに意識することが多い問題です。

依頼者からの保険請求?

このような保険の構造だと、依頼者の皆さんは、弁護士が請求するもので、自分が請求するものではないから、関係ないと感じるかもしれません。

しかし、実は依頼者など被害を受けた人から代位して保険会社への直接請求をしたり、弁護士から保険金請求権を債権譲渡してもらって直接請求したりするケースもあるので、無関係なわけではありません。

預り金の流用と賠償保険の利用?

では、この預かり金流用問題、預り金を勝手に使われたというケースで、弁護士賠償保険が使えるのかという問題です。

これは、なかなか厳しいのではないかという印象を受けます。

基本的に、預かり金がなくなってしまったとか、そういった場合も、基本的には保険の対象外、ただし、特約をつけると保証されるものもあります。


保険にありがちなオプションでフォローするというパターンです。

この特約では、自分は管理しているような仕事上での預り金、物品が災害などでなくなってしまった場合に、保証されるものです。

ただ、このような特約があっても、預かり金を流用や、間違って他人に振り込んでしまうようなケースでは、保険の利用は難しそうです。

誤返金と弁護士賠償保険

誤返金で、弁護士賠償保険が使えるのか問題になったケースが紹介されています。


X社代表者Aが、連絡窓口Bと共に弁護士を訪問、X社の債務整理を依頼。

売掛金を回収した上で、それを原資に債務整理を勧める予定でした。

弁護士が売掛金の一部を回収し預り金と保管。

ここで、Bが、大口債権者への弁済に充てる、代表者Aの許可は得ているからといい、回収済みの売掛金の交付を要求。

弁護士が代表者に確認することなく約2000万円の金員をBに交付。

Bは持ち逃げ、行方が分からなくなったという事案。

X社は弁護士に対し、Bに交付した金銭相当額の支払を請求。

弁護士がこれに応じ、弁護士賠償保険の請求。


この事案では、保険の適用は否定されました。

弁護士賠償責任保険は、被保険者が「弁護士の業務」に起因して、「法律上の賠償責任を負担することによって被る損害」を填補するもの。

被保険者弁護士が第三者に対し金銭支払義務を負担する場合であっても、その性質が賠償責任でないのであれば、弁護士賠償責任保険による填補の対象にならないとされました。

裁判所は、本件金銭は何ら他の金銭から特定される事情がなく、占有者である弁護士の所有に属するのであり、これをBに交付しても、弁護士のX社に対する預り金返還債務が履行不能になることはなく、X社の本来の債権がそのまま存続
するのであるから、X社につき損害賠償請求権が成立することはないとして、保険の適用を否定。

担当者だと誤認して返金しても、自己負担となるわけです。

誤振込、誤返金では、保険による救済は難しいことになります。

故意免責

損害保険については、故意免責規定があるのが通常です。

故意に事故を発生させた場合には、免責、保険会社は責任を負わないという規定です。

火災保険金請求などでよく争われる規定です。

意図的に、事故を起こしても保険金はもらえませんよ、という規定です。

このような規定が、弁護士賠償保険の中でもあります。

意図的に、依頼者に損害を与えて、それで損害賠償請求を受けて保険会社に請求みたいなことをされると、保険というシステムがなりたたなくなり、モラルでも問題になるので、免責されているのです。


これと同じく、法令に違反することを認識し、もしくは他人に損害を与えることを予見しながら行った行為に起因する賠償責任についても免責の対象とされます。

法令違反の認識

預り金との関係でも、法令違反とされることはあります。


事例として、社会福祉法人の補助金の預り金があります。

弁護士は、社会福祉法人の依頼を受け、会が受給した補助金の一部(5億8219万円余り)を預かっていました。

会の理事長の母から、「自分が経営する会社の資金繰り等のために上記補助金を貸してほしい」旨の依頼を受けました。

理事長もこれに同意。

これを受け、弁護士、上記預り金のうち合計2億6755万円を返金し、その後、当該金員はさらに母へと送金されました。

しかし、その後、母は、社会福祉法人に返金しきれませんでした。

社会福祉法人は、弁護士に対し損害賠償請求訴訟を提起。

その中で、弁護士賠償責任保険に基づく保険金請求権が社会福祉法人に譲渡される和解が成立しました。

その後、社会福祉法人から保険会社に訴え提起。保険会社は免責を主張しました。裁判所は、保険会社の主張を認めました。


そもそも補助金は、流用が刑罰をもって禁止され、流用された補助金は交付決定を取り消されて返還を命じられることもあるのであるから、補助金が流用されることにより社会福祉法人が被る損害は、いったん補助金が流用された時点において確定的に生じるものであって、仮に流用された補助金が後に返還されたとしても、それは、いったん発生した損害が、事後的に補填されたものにすぎないと評価するのが相当であるとしています。

したがって、仮に流用された補助金が返還されると信じていたとしても、前記のように流用が厳格に禁止される補助金の性質を熟知しながら母に流用を認めた時点において、会に損害を与えることを認識しながら会に損害を発生させたものであるとしました。

少なくとも、免責条項の解釈適用上「損害を与えるべきことを予見」していたことにあたると解するのが相当としています。

法令違反を助長する行為では、弁護士賠償責任保険は適用されないものなのです。


このような裁判例からしても、故意免責条項からしても、預り金が流用された、横領されたような事件で、被害者が弁護士賠償責任保険で保護される可能性は極めて低いという結論になりそうです。


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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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