FAQ
FAQ(よくある質問)
Q.著作物の私的使用、引用は?
著作権は、自分の作品を他人にコントロールされない権利です。
ただ、どのようなシーンでもこの権利が認められるものではなく、私的な使用や引用は許されています。
これは、著作権者から見ると、自分の著作権が制限されていることになります。
そこで、どのような制限があるのか、基本的な内容を紹介しておきます。
著作権の制限
著作権については、著作物を守る権利ですが、一定の制限があります。
著作権を重視しすぎることで、社会が混乱するような事態になってしまうのを避けるため、制限があります。
著作権法には制限規定が複数あります。
理論的には、著作物の複製のようなケースでも、例外的に権利者の許可を不要としている規定です。
私的複製や引用などが有名な規定です。
図書館での複製、教科書や試験問題での利用などの規定もあります。
また、裁判での証拠提出の場合にも、著作権者の利益を不当に害する場合を除いて、複製などが認められています。
このような制限規定では、それぞれの条件を満たすことで、著作権者の許可がなくても著作物を使用できます。
そのため、著作権者に確認を取らずに利用することができます。
法的な話をするのであれば、著作権者に対して「引用しても良いか?」と質問するのはおかしい話です。
法的に認められた引用であれば、承諾は不要だからです。
承諾があるならば、許諾による使用となるので、引用の要件を満たしていなくても使用が認められることになります。
多くの場合、法的には引用にならなかったり、グレーな状態で、一応、許諾による使用という形を取ろうとして、著作権者に照会をかけているようです。
私的使用のための複製
著作権法では、私的使用のための複製は認められています。著作権者もこれを止めることはできないわけです。
TV番組の録画は、著作物の複製になりますが、自分や家族が観るための複製であれば、私的使用として問題がないということになります。
小学生が、『鬼滅の刃』のキャラクターをノートに描くような行為も問題ありません。
このような行為で、著作権者の承諾が必要となると煩わしいことになります。
そこで著作権法は、私的に使う目的であれば、許可なしに複製してよいとしたものです。
ここでは、複製が認められているだけで、複製以外の利用方法には、このような規定はありません。
私的使用としては、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内でのみ認めれています。
引用しての利用
他人の著作物については、引用して利用することができるとされています。
この場合は、著作権者の承諾などが不要です。
認められている行為としては、複製に限られておらず、利用とあります。そのため、許される引用であれば、複製以外に、公表したり、ネットワーク配信もできます。
ただ、この引用とは何なのかが問題になります。
著作権法第32条では、その方法について、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならないとしています。
裁判でも問題になり、最高裁では、引用の条件として、
・明瞭区別性
・主従関係
を挙げています。なお、著作者人格権を侵害しないことも必要です。
また、引用の際にはどこからの引用であるのか、出典の明記も必要です。
このような引用は、作品の前提として必要になることが多いことなどから認められています。
たとえば、過去の論文を前提にした論文を作るときなど、議論の前提として、引用を認めたほうが便利です。読む方としてもそうでしょう。他人の著作物を伝達したり、論評したりすることで、全体的な文化活動・社会活動に役立つことになります。
『脱ゴーマニズム宣言』事件
この引用が問題になった事件です。
『ゴーマニズム宣言』という、小林よしのりさんのマンガがあります。
これを批判的に批評した、『脱ゴーマニズム宣言』という本の著作権違法違反が争われた事件です。
ここでは、『ゴーマニズム宣言』のマンガカットが57箇所使われていました。
小林さんは、承諾しておらず、著作権侵害を主張。
被告側は、引用だから承諾なくても許されると反論した事件です。
ここでは、引用部分について明瞭に区別がされていました。
また、57カットはバラバラの箇所で、多くは1ページの4分の1以下のサイズでした。本の中心は評論部分とみられ、主従関係も認められました。
東京地裁は、小林さんの請求を棄却。
最高裁の基準を満たしているとし、その場合には、引用は必要と考える範囲内で認められ、必ずしも必要最小限である必要はないとしました。
引用と無断転載
このように引用では、主従関係も必要です。
これが欠けた無断転載も多くおこなわれてしまっています。これは著作権法違反でしょう。
出典を明記していても、無断転載は引用とは認められないでしょう。
現実には、これらは混同されていることが多く、無断転載も多い一方で、引用であっても、とりあえず許諾をとろうとする動きもあります。
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