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FAQ(よくある質問)

 

Q.遺骨の分骨請求はできる?

遺骨の分骨請求が認められるか争われた事例があります。祭祀承継者の問題として争われましたが、分骨請求は否定されています。

大阪高裁平成30年1月30日決定です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.1.7

動画での解説はこちら。

事案の概要

子供の遺骨が争われた事案です。

母と父と昭和46年に婚姻。

三子が生まれましたが、長男は10歳で死亡。相続人は両親でした。

父が、喪主として葬儀を執り行いました。

父を墓地使用者として市に墓地を借り、長男の遺骨を埋葬。

父母は、平成7年、に調停離婚。

その際、財産分与の調停において、墓地は父が管理し、母は随時墓参することという合意が成立。

父は、本件墳墓が無縁仏となることを懸念し、自らの死後も親族による墓参ができるように、実家の墓所内に新たな墳墓(改葬墳墓)を設け、本件遺骨を移動。


母は、平成27年、本件遺骨が移動されたことを知りました。

墓参りが困難だとして、遺骨の分骨を求める訴訟を提起。しかし、請求は棄却。


そこで、主位的に被相続人の祭祀財産の承継者を母と定める処分、予備的に遺骨の分骨・引渡しを求めました。

家庭裁判所の判断

原審は、父は、被相続人の喪主として葬儀を執り行い、本件墳墓を設け、本件遺骨を埋葬するなど、被相続人の供養等祭祀を主宰していたと認定。

婚姻中、被相続人の祭祀の主宰者は父と定められていたとし、本件遺骨は祭祀財産(民法897条)に準ずるから、その所有権は父に帰属するとしました。

その後、父母は、離婚時の財産分与の調停において、父が本件墓地を管理する旨合意したから、離婚後も被相続人の祭祀の主宰者を変更する意思はなかったと認定。

婚姻関係解消の前後を通じ、被相続人の祭祀の主宰者は既に父に定められているから、改めて祭祀財産の承継者の指定を求める主位的申立ては理由がないとしました。

また、予備的に遺骨の分骨と引渡しを求めた点について、同条項は分骨を請求できる根拠とはならないとして、却下しました。

これに対し、母が抗告しました。

高等裁判所の判断

父母の間では、遅くとも上記調停の成立時には被相続人の祭祀主宰者を相手方と定める旨の協議(合意)が成立したと認めるのが相当としました。

そうすると、祭祀主宰者については、当事者間の協議によって既に定まっているというべきとなります。


抗告人は、上記の調停においては、本件遺骨が当事者のいずれに帰属するかを意識した協議がされていないと主張していました。
しかし、上記調停においては、本件遺骨が埋葬された墓地(被相続人の墳墓)について、当事者のいずれが管理するかを殊更に条項化していることからすれば、その当時、当事者間には、本件遺骨の帰属や被相続人の墓地の管理を巡る紛争があり、これを意識していたことが優に推認できるとして、抗告人の上記主張は採用することができないとしました。


また、抗告人は、相手方が、その後、本件遺骨を改葬し、抗告人、長女及び二女による墓参に支障を生じさせ、祭祀主宰者としての適格性を喪失するに至ったから、被相続人の祭祀主宰者を相手方から抗告人に変更すべきであるとも主張しました。


しかし、相手方は、被相続人の墳墓を約20年の永きにわたって管理料を支払うなどして管理してきたが、自身が高齢化するにつれ、死亡後、管理料が支払われずに無縁墳墓となることを懸念するようになり、これを契機として本件遺骨の改葬を決め、墓所に祖先の墳墓とは別に被相続人の墳墓を設置して本件遺骨を埋蔵したものであると指摘。

このように、相手方が本件遺骨を改葬したのは、相手方の死後もその親族によって被相続人の墳墓を維持・管理させるためであって、祭祀主宰者の判断として相応の必要性や合理性が認められるとしました。

相手方への配慮は?

他方、相手方が抗告人に事前に連絡をしなかったことは些か配慮を欠くものであるが、抗告人と相手方とは離婚後20年以上の永きにわたって没交渉であったのであるから、そのような対応にはやむを得ない面もあると指摘。

さらに、相手方は、被相続人の墳墓を祖先の墳墓とは別に新たに設置した上、本件遺骨を埋蔵しているのであるから、抗告人らの心情や墓参の便宜にも配慮していると評価できるとしました。

そうすると、相手方が本件遺骨を改葬したからといって、祭祀主宰者としての適格性を喪失したということはできないと結論づけ、被相続人の祭祀主宰者を変更すべき事情がある旨の抗告人の上記主張は採用することができないとして排斥しました。

まとめ


分骨請求、遺骨の請求が裁判例にあることは珍しいでしょう。

その理論構成として、祭祀承継者の指定の申し立てという方法が試みられました。

しかし、本件では、離婚時の財産分与合意で、この指定はすでにされていたと認定されました。

明確な指定条項はなかったものの、離婚前の祭祀状況やお墓の管理という点で、指定がされていたと評価したものです。


子供の遺骨請求という事件は珍しいですが、親の遺骨請求は相続と絡んで少なくありません。

それ自体が裁判になっていないくても、相続の関連紛争や、当事者間の可能的対立の背景になっていることが多いです。

今回のように、祭祀承継者が誰であるのか、そこに遺骨の所有権がどうなるのかという点が問題となる事件です。

祭祀承継者の指定がされているとなると、分骨請求で強制力を認められるかというと、ハードルが高いことが多いです。

祭祀財産については、特別の事情がある場合には、複数の祭祀主宰者を指定したり、分骨が認められています。この特別の事情が認められるかがポイントになります。


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