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FAQ(よくある質問)

 

Q.詐欺投資勧誘で関係者の責任は?

国内株式のデイトレード等を行うと称して元本保証や高利回りを謳って、不特定多数人から出資を募ったケースで、関係者を含めて共同不法行為責任が認められた事案があります。

金商法上の無登録、虚偽告知、金融商品まがい取引、出資法違反等から、本件集団投資スキーム持分の募集が不法行為に該当するとした判断です。

出資運営主体の会社代表者、会社構成員らの一部も共同不法行為責任が認められています。

高松高等裁判所令和元年7月19日判決です。

勧誘者の責任追及をする際などには参考になる内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

 

事案の概要

ファンドを名乗る会社らが、違法な方法で、本件会社に投資させる共同不法行為をしたとして、不法行為による損害賠
償請求権に雄づき、請求された事件です。

会社については、一審でも、弁論が分離され、消費者の全部勝訴の判決が言い渡され、確定。

ただし、関係者に対する請求はいずれも棄却されました。この件に関し、控訴されたという流れです。

 

会社設立の経緯

代表者であるA(昭和57年生)は、高校卒業後、音楽活動や小説執筆等をしていたところ、契約していた出版社が倒産したことをきっかけに、株式のデイトレーダーで生計を立てるようになりました。


Aは、自己資金でトレーデイングをしていた際には、月15%程度の利益を確保することもあれば、1か月間では損失を計上することもありました。

Aは、平成21年2月、ベンチャー企業に対する投資、有価証券の取得及び保有、経営コンサルタント業、投資助言・代理業等を目的とする本件会社を設立。

本件会社を設立した当初から、A自身がかねてから行っていたトレーディングによる株式投資事業と、若手に対するベンチャー投資事業と、飲食事業を行っており、本件会社に、「証券部門」と「若者起業推進部門」を設けていました。


Aは、本件会社を設立した当初は、株式投資事業部門及びベンチャー投資事業ともに、A個人の資産から資金を準備していました。Aは、A個人の資産から、ベンチャー投資事業に、約2000万円から3000万円を投資。

 

本件会社のパンフレットには、「「デイトレーダー集団」「起業家集団」が集まるからこそ可能な高配当率」「CSR(企業の社会的責任)をいつも念頭に個人投資家の皆様へ新しい運用スタイルを提供」との表題の下、「年率6%~という高配当が可能な理由は、新事業というベンチャー的投資といかなる相場でも勝ち続けるデイトレーダーが本件会社を築いているからなのです。」などと記載。

 

被告らの属性

 

被告Y2(昭和60年生)は、平成23年頃にAと知り合い、本件会社の従業員に。

主に、本件会社の営業や事務、電話対応等をしていました。「営業部長」と名乗っていました。

被告Y1(昭和58年生)は、薬剤師の資格を有している人物。薬学系大学院を修了後、年収約600万円を得ていました。
在職中に、国内よりも多額のレバレッジ取引をすることができる海外Fx取引をするために、会社設立。
平成23年7月頃、知人を通じてAと知り合い勤務先を退職することを決意。
平成24年4月から、本件会社の事務所に通い、本件会社の業務として、株式譲渡の方式による出資をした者に対する投資運用実績報告等をメール送信したり郵送したりするようになりました。「パートナー」と名乗っていました。

 

被告Y3(昭和57年)は、Aとは小学校のときからの友人。

以前から、投資に関心があり、他社に勤務中に、本件会社の事業に出資。証券外務員1種の資格を有していました。
Aの勧誘を受けて、平成24年3月に退職し、同年4月から、本件会社の事務所に通うようになり、毎日午前8時30分頃か
ら午後8時又は午後9時頃まで本件会社の事務所にいました。平成24年4月以降、本件会社の構成員として、倫理法人会(経営者団体)に出席していたほか、本件会社において、出資者に対する対応、配当の支払い、事業投資部門の管理・
運用、税理士との連絡等を行っていました。また、本件会社の事務所に通うようになった当初から、本件会社のベンチャー投資事業に実質的に関与。「コンブライアンス担当」「総務部長」と名乗って、本件会社の業務を担当。

この3名の関係者の責任が問題になっています。

 

勧誘に至る経緯

Aは、Y1から出資を集めることができると聞いたことから、ベンチャー投資をするための資金について、一般投資家から出資を募集することを計画。
Y1は、Aに対し、自己株式募集の体裁で出資を募集すれば金商法上の規制を回避することができると教えました。

A及びY1は、本件会社の投資契約書の書式を作成。インターネットでビジネス関係のサイトを閲覧するなどして投資契約のひな型を収集して、条項を作成していきました。

 

原告らの属性

原告X1(昭和46年生)は、薬剤師。不動産投資、株式投資、太陽光発電投資をしていました。
知人から、Y1を紹介されました。Y1は、「自分は○○に勤務しているが、給料以上を投資で儲けることができるようになったので辞めて、今は高松で投資の手伝いをしている。海外で会社を作って、FXの投資を立ち上げている。」などと自己紹介。

Aの方が、自分よりも利益を稼げる怪物トレーダーなどと述べ、本件会社のパンフレットを示し、事業への投資は年6%であるが、縁故者については月3%の単利と複利で投資をすると説明するとともに、Aに会わせると話しました。
X1は、この勧誘を受けて投資を検討。

 

原告X2(昭和51年生)は、不動産投資の営業担当者から、Y1を紹介されました。X1とも面識がありました。
Y1から、「海外に会社を持っていて、自分もトレードが得意なので、それで生計を立てている。」と自己紹介されました。「高松にかなりの勝率で勝ちを残せるすごいトレーダーがいる。短期での負けはあるが、長期で見たときに負けはない。」などと、Aのことを紹介。

Aと面会することに。

 

勧誘文句

X1及びX2は、平成24年6月頃、本件会社の事務所において、A及びY1と面談。

「もともとはデイトレードの集団で、香川で事業も展開している。」

「主に若者から地域活性化で出資を募って営業をする。売上げが下回った場合には、デイトレードで利益を上げて補完する。年6%の配当は可能である。」

「日本株のトレードの運用は月3%であるが、このことはあまり話さないでほしい。」

「元本は、最短でも半年前に言ってもらえれば、利益を上乗せして買い取る。」
などと説明。

 

X1は投資へ。

 


X3(昭和59年生)は、不動産投資をしていたところ、その営業担当者から、被控訴人Y1やAのことを教えてもらいX1らが投資契約をすると言われて、本件会社の事務所へ行くことに。

X2も契約。

この日も、A及びY1は、

「月3%の複利と単利があるので、その旨を記入してください。本当は年6%ですが、今回は特別の定めがあるので、その通り記入してください。」

「トータルで負けることがないので、元本は心配ない。」と説明。

 


原告らは、本件各契約における取引の形式が、本件会社の株式購入と再譲渡とされ、毎月3%の利息が支払われ、元本が保証されるものとなっていると認識。Y1は、「株取引の形式とすることにより、法律的な問題はない。」旨説明。


X3も契約。

 

 

追加勧誘

Y1は、原告らに対し、投資の運用結果に関する報告として、株式トレードをした銘柄や、運用金額のグラフ等を記載して、メール送信したり報告書を交付したりしていました。

これを見た原告らは、運用で利益が出ると理解し、さらに出資を追加。

Y1は、平成24年10月6日及び同月7日、X2に対し、「ボーナス的な投資案件を頂きました。」
「日程的にかなり急な案件ですが、口数が少なく、また非常に固い案件ですのでご検討の程よろしくお願いします。」

「説明不足で申し訳ありません」

「当初は資本金の全てをAさんが出資する予定だったのですが、せっかく今まで事業を応援していただいている方がいるので、その方々のために良い思いをしてほしいという配慮です。」との電子メールを送信。

Y1は、平成24年10月11日、X2の携帯電話にもメール。

それぞれ追加契約。

 

会計処理


Aは、本件会社の株式譲渡形式による出資金については、本件会社の法人税を免れるため、A個人の口座に振込入金してもらい、本件会社の決算書にも記載していませんでした。
原告らは、投資開始から平成27年2月までの間は、本件会社から、月3%単利の配当を受けていました。

原告らは、本件会社から、「Aの名前で投資を行い、一旦税金を支払っているので、投資家の配当に対しては税金を納める必要がない。したがって、現金書留で現金を支払う。」などと説明され、上記の配当金を受け取っていたのでした。

本件会社における出資募集の規模は、本件会社の株式購入形式と、投資事業組合への出資形式と併せて約40人であり、総額で約2億6000万円に上っていました。


もっとも、本件会社では、株式購入形式による出資募集を行っていたものの、資本金を900万円から2400万円に増資しただけで、それ以上に増資手続をしたことはありませんでした。

 

自転車操業が判明

Aは、投資契約書では月3%の利回りを確保すると約束していましたが、関連会社が行うベンチャー投資事業による利益をほとんど回収することができず、デイトレードによっても高利回りを実現するだけの利益を確保することができな
くなり、次第に、新規の出資金を既存の契約の配当金に充てるなど自転車操業の状況になっていきました。

平成26年秋頃、Aが消費者金融業者から、Y1及びY2名義で融資を受けていたことが発覚。

Y1及びY3は、平成27年1月11日、Aが投資家に提示した本件会社名義の証券口座残高(約12億円)の画面について、URLや残高のフォントが不自然であることに気づいきました。
Y1及びY3が、本件会社証券口座のID及びパスワードを調査してログインしたところ、同日時点の残高が2万円弱であることが判明。

Y3は、本件会社において、本件会社の出資者に対する配当金支払事務を担当していたところ、平成27年2月10日、本件会社の出資者に対し、出金手続の不備により配当金の支払が遅延しているとの電子メールを送信。

 

Aは、平成27年2月15日以降、本件会社に出社しなくなり、一時消息を絶ちました。

 

財務局の対応

四国財務局は、本件会社を検査したところ、平成27年4月24日、Aが所在不明となって以降、国内上場株式の取引等で運用を行うとする任意組合に係る契約書等の出資状況を記録した書類等がほとんど残っていなかったこと、銀行口座に振り込まれた上記任意組合に係る出資金は既に全額が出金されており、これ以外に現金で受け入れたとする上記任意組合に係る出資金も、入出金を記録した書類等が確認できなかったことから、運用資産の現状力轆認できない状況にあり、投資者保護上重大な問題があると認められるとする検査結果を、本件会社に通知。

原告らは、平成27年10月19日、本件訴訟を提起。

 

出資の募集は、集団投資スキーム持分の募集に当たるか

原告らは本件会社の株式譲渡は、いわゆる集団投資スキーム持分(金商法2条2項5号)の募集に当たる旨主張しました。

集団投資スキーム持分の要件は、・権利を有する者(出資者)が金銭等を出資又は拠出すること、・出資又は拠出された金銭等を当てて事業が行われること、・出資者が出資対象事業から生じる利益の配当又は分配を受けることができる権利であること、・法の除外事由に当たらないことです。

これを本件についてみると、本件各契約は、本件会社の株式を購入する形式を取っているものの、原告らが金銭を出資し、同出資金を、主として国内上場株式のデイトレード事業に充て、一部はAによるベンチャー企業への投資事業に充てることとされ、原告らは、これらの事業の収益から配当を受ける権利、ないし本件会説に対し、株式の買取を求めることにより出資元本相当額を請求する権利を有することになるから、金商法2条2項5号の集団投資スキーム持分に当たるというべきであるとしました。

 

ところで、金商法2条2項5号ロは、出資者が出資又は拠出された額を超えた収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする場合には、集団投資スキーム持分には当たらないとしています。

これは、そのような場合には、投資としての性格が認められず、金商法による投資家保護の必要性が類型的に低いと解
されることによるものであるとされます。
一方で、本件各契約による本件会社の株式譲渡についてみると、本件各契約には、出資者が本件会社に求めたときには、原則として出資者の拠出した額で株式を本件会社が買い戻す旨規定されており、実質的には、株式購入名下で本件会社に出資した金員を全額返還することを約束するものといえる(いわゆる元本保証)と認定。

また、本件各契約は、月3%(年利にすると36%)の配当支払が約束されているところ、近年の預貯金金利の動向に照らしても、実現可能性に乏しい高額な配当の支払を約束するものといえると指摘。

さらに、本件会社では原告らを含む不特定多数の投資家に株式譲渡をすることにより出資を募集した一方で、それに見合うだけの増資手続をした形跡はなく、株式譲渡は名目的なもので、実質は本件会社が行う資金運用による利益を目当てとした投資であったといえるとしました。


そうすると、本件各契約は、本件会社に対する出資者に対し、元本保証をしつつ高利回りも約束したものであることは明らかというべきであるとしています。
したがって、本件各契約による株式譲渡は、出資者が出資した額を超えた収益の配当を受けることを内容とするもので、投資としての性格を強く持つものであるから、集団投資スキーム持分の募集に当たると解するのが相当としました。

 

金商法の趣旨

判決では、まず、金商法違反の点について、金商法2条2項5号所定の集団投資スキーム持分の募集に当たると認定。


本件会社は、株式購入形式による出資を含めて、月3%の配当が可能であると宣伝し、それによって、本件会社の株式購入形式と投資事業組合への出資形式を併せて、約40人から総額で約2億6000万円もの出資を募集したことが認められるとしました。したがって、本件会社は、事業として、本件各契約によって集団投資スキーム持分の募集を行っていた
と認めるのが相当であるとしています。

集団投資スキーム持分は、「第二項  有価証券」(金商法2条3項柱書)に当たり、第二項有価証券の募集等に係る取引を業として行うことは「第二種金融商品取引業」(金商法28条2項2号)に該当し、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行うことができない(金商法29条)とされています。

本件会社は、第二種金融商品取引業の登録を行っていなかったと認められるとし、金商法所定の登録を受けないで第二種金融商品取引業を行ったものとして、金商法に違反するというべきであるとしました。

第二種金融商品取引業者は、法人の場合には、1000万円の資本基準資産を維持しなければならず(金商法施行令15条の7第1項)、財産的基盤の整備が求められています。また、第二種金融商品取引業者は、事業年度ごとに業務及び財産の状況に関する事項を記載した説明書類を作成し、全ての営業所および事業所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならず(金商法46条の4,47条の3)、情報開示が求められます。

しかしながら、無登録業者に対しては、金商法による一般投資家保護のための上記行為規制が及ばないことになります。


ところで、有価証券の取引は自己責任が原則であり、無登録業者の勧誘により有価証券を購入したからといって直ちに不法行為の成立が認められるわけではないとも言及。
しかしながら、平成23年法律第49号(資本市場および金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律)による改正後の金商法171条の2(平成23年11月24日施行)は、無登録業者が未公開有価証券について売付け等を行った場合における売買契約は、無登録業者等において、当該売付け等が相手方の知識、経験、財産の状況及び当該契約を締結する目的に照らして顧客の保護に欠けるものではないこと又は当該売付け等が不当な利得行為に該当しないことを証明しない限り、原則として無効とする旨定めている点を指摘。


金商法に違反する無登録業者は、違法行為を行う者であるがゆえに、一般的に、自己の利益を図るため、取引の相手方に対し不当な行為を行うおそれがあると考えられるとしています。

また、未公開有価証券はその証券や発行体に関する情報が乏しいため、未公開有価証券の取引力垳われる際には、販売業者と投資者との間に著しい情報の非対称性が存在すると考えられるとも指摘。

このため、無登録業者が未公開有価証券の販売を行う場合には類型的に顧客の保護に欠ける行為等を行う蓋然性が高いものと考えられ、無登録業者がそうした行為を行っている場合には、公序良俗違反の一類型である暴利行為に該当するものと推定し、原則として売買契約を無効としたものと解されるとしています。このような金商法171条の2の規定の趣旨に照らすと、本件各契約による本件会社の株式譲渡行為が、原告らの知識、経験、財産の状況及び売買契約を締結する目的に照らし原告らの保護に欠けるものか、又は、本件会社による不当な利得行為に該当すると認められるときは、本件会社の原告らに対する本件会社の株式譲渡行為は、公序良俗に違反し、かつ不法行為を構成するものと認めるのが相当であるとしました。

 

本件での金商法違反


これを本件についてみると、無登録業者である本件会社が本件各契約において募集の対象としたのは、本件会社の株式であるところ、本件の証拠関係に照らしても、これは金商法171条の2第2項が除外事由として規定する有価証券に当たるとは認められないとしています。
加えて、上記認定事実によっても、A及びY1は、原告らと本件各契約を締結する際に、元本保証及び高利回りを約束して原告らにその旨信用させる一方で、元本保証及び高利回りが確実に実現できることについて、根拠を示して説明していたとは認められないとしています。


そして、本件会社は、元本保証や高利回りを約束して出資を募集しておきながら、利益を上げる見込みが立っていないベンチャー事業投資や関連会社への資金に上記出資金を充てていたもので、顧客の保護に欠けるものでないことについ
て配慮していたとは認められないと指摘。


そうすると、本件各契約は、無登録業者による集団投資スキーム持分の募集として金商法29条に違反する上、同法171条の2第1項の規定により無効になると解されるとともに、原告らの顧客の保護に欠けるものとして不法行為に当たると解するのが相当であるとしました。

 

虚偽告知、金融まがい商品の販売及び説明義務違反

さらに、他の違法性の検討も進められます。


A及びY1は、原告らをはじめとする一般投資家に対して本件集団投資スキーム持分の募集をする際に、元本保証及び月3%の高利回りを約束して原告らにその旨信用させていたことを認定。


一方で、本件会社では、原告らをはじめとする一般投資家からの出資について、株式投資事業(デイトレード)やベ
ンチャー投資事業に投資をしていたものの、ベンチャー投資事業は当初から赤字であったのであるから、常識的に考えても、ベンチャー投資事業に投資をしつつ、デイトレード等で、月3%(年36%)の高利回りの配当をした上でさらに元本保証まで確実に実現できるとは考え難く、いずれ破綻することは容易に予測できたというべきであると指摘。


元本保証及び月3%の高利回りを約束することは、虚偽の事実を告知して上記持分の募集をしたものというべきであるとしています。


また、本件集団投資スキーム持分の募集は、ベンチャー投資事業に投資しつつ月3%もの高利回りの配当をした上でさらに元本保証まで実現できるようなものであったとは認められないから、集めた金銭の流れもリスクの具体的内容も明らかではない不適正な金融商品(金融まがい商品)の販売というべきであるともしています。


さらに、本件会社は、本件集団投資スキーム持分の募集に際し、月3%もの高利回りの配当をした上でさらに元本保証まで実現できるようなものではなかったのに、元本欠損等のリスクを説明せず、上記持分の募集を行ったものであるから、説明義務に違反するというべきとしました。

 

 

出資法違反

本件会社は、本件契約において、原告らを含む一般投資家に対し、本件会社の株式購入名下に金員を払い込ませるとと
もに、元本保証及び月3%の配当を約束してその払込みをした金額を超える金額に相当する金銭を支払うことを約束していたと認定。


これは、不特定かつ多数の者に対し、後日出資の払戻しとして出資金の全額を超える金額に相当する金銭を支払うべき旨明示して出資金の受入れをしたというべきであるから、出資法1条に該当する違法行為であることが明らかであるとしています。

 

これらの点から、不法行為に当たると結論づけています。

 

関係者の責任

会社が不法行為責任を負うとして関係者も負うのかは別問題です。

この点で、原判決では否定されてしまっています。

Y1は、薬剤師の資格を有しており、大手薬品会社に勤務するなどの社会経験がある上、FX取引の経験があるなど、投資に関する知識・経験も豊富であったこと、本件会社において、「パートナー」と名乗り、Aから月額50万円の報酬支払を約束された上で、投資契約書の書式をAと共に考案し(金商法上の規制を回避するため、自己株式募集の方法をAに
教えてまでいる。)、本件集団投資スキーム持分の募集の枠組みを作り、Aと共に、元本保証及び高利回りを謳って原告人らを積極的に勧誘し、自らも月3%の高利回りを得られると説明するなど、重要な役割を担当していたと認定。

本件各契約が約束している元本保証及び高利回りを実現することはできず、原告らを含む一般投資謎損害を被らせることを認識していたか、容易に認識できたにもかかわらず、これを秘し、直接勧誘をしていたことが認められるとし、共同不法行為責任を肯定しました。

 

Y3は、銀行勤務の経験があるなど、社会経験がある上、証券外務員一種の資格を有しており、投資に強い関心を有するなど、投資に関する知識も相当程度あったこと、本件会社において、「コンブライアンス担当」又は「総務部長」と名乗り、本件会社のベンチャー投資事業の実質的な運営を担当した上、本件会社の構成員として、倫理法人会(経営者団
体)に出席したり、本件会社の出資者に対する配当の支払を担当するなど、重要役割を担当していたといえるとしました。

本件各契約において約束していた元本保証及び高利回りを実現することが不可能であることを認識していたか容易に認識することができたにもかかわらず、本件会社から投資家による出資金を受けることによってベンチャー投資事業の運営を続けた半面、出資金が元本保証及び高利回りを実現できるような投資家保護の方策を講じたり検討したりしたとは認められないとして、共同不法行為責任を肯定。勧誘行為に直接関与していないことで左右されるものではないとしました。

 

Y2は、平成23年頃から、本件会社の飲食店業務に従事し、その後は「営業部長」と名乗っていたと認定。Y2の業務の内容は、専ら機械的な事務的行為にとどまり、本件各契約の書式作成や原告らを含む一般投資家の出資募集に関与していなかったこと、本件会社の株式投資事業やベンチャー投資事業における資金管理にも関与していなかったことが認められるとしました。
本件各契約による集団投資スキーム持分の募集に主体的に関与していたとはいえず、原告らが本件各契約によって被った損害について、本件会社及びAと共同不法行為責任や常助責任を負うとはいえないと結論づけました。

被告担当者でも、業務内容によって責任が変わるという結論となりました。

 

過失相殺

本件各契約は、いわゆる集団投資スキーム持分の募集であって、金商法上の登録が必要であるにもかかわらず、登録を受けないまま控訴人らに出資をさせたものであり、また、本件各契約には、元本保証及び高利回りと、実現が著しく困難な条件を付していたものであると指摘。

本件については、虚偽告知、金融まがい商品の販売、説明義務違反、出資法違反という違法事由もあり、責任は重大であるとしました。


他方、上記認定事実によると、原告らは、本件各契約締結時、いずれも30代から40代で、相当程度社会経験も積んでおり、一定の投資経験を有するか、投資に関心を有していたと認められるとも指摘。


したがって、原告らは、元本保証及び高利回りを謳う金融商品であっても相応のリスクがあることを認識していたと認められるとしました。そうであるとすると、原告らにおいても、本件損害を発生させたことについて一定の過失があったといわざるを得ないとしました。


これらの事情を総合考慮すると、各3割の過失相殺をするのが相当として、減額を認めました。

 

 

関係者も広く被告に含めて責任追及する際には、どのような業務を担当していたのか、実態によって結論が変わる可能性があります。その際に参考にしてみてください。

 

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