FAQ
FAQ(よくある質問)
Q.消費者契約法の取消が認められている裁判例は?
消費者契約法は、一定の事情がある場合に契約を取り消せるというものです。
今回は、この裁判例のデータについて解説します。
動画での解説はこちら。
国民生活センターによる裁判例の発表
国民生活センターでは、消費者契約法に関する裁判例を収集、紹介してくれています。
2020年12月10日にも、新しいデータが紹介されていました。
消費者契約法に関連する消費生活の相談の概要と裁判例についての資料です。
このような資料は、定期的にネット上にアップされてきていて、結構な数の消費者契約法に関する裁判例が集積されています。
消費者契約法の裁判では、参考になる資料です。
今回、紹介されているのは、2019年10月1日から2020年9月末までの裁判例でした。
非確定、新しい裁判例といえます。
この期間で、消費者契約法に関する裁判例で追加されたのは、66件だそう。
消費者契約法の裁判例の傾向は2種類
消費者契約法の判例の一つは取り消しに関するものです。
契約があって、それを取り消せれば、負担がなくなる。
事業者と消費者との間の契約があって、それを取り消せるかどうかが争点になるものです。
消費者契約法に関する裁判では、他に、契約条項の有効性について争点とされるものがあります。
適格消費者団体などが訴え、事業者が使っている契約条項自体を消費者契約法に反しているとして差止めたりするタイプの裁判です。
広く使われている契約の特定の条項が使えなくなるなど、事業者にとっては大きな問題です。
不当な契約条項に関する判決が出てしまうと、契約自体をかえないといけなくなります。
このように、大きく2つあります。取り消しが争われるケースと、不当条項か争われるケースです。
不当条項を争うこともないわけではありませんが、個人の方が争うことが多いのは、取消の方でしょう。
消費者契約法による取消が認められた裁判例
そして、この取り消しの方ですが、今回の新しい発表では、2019年10月からの裁判例で、取り消しに関する消費者の主張が認められた裁判例は、、、
なかったそうです。
全面敗訴。
厳密には、欠席判決といって、相手方が裁判に出てこなくて、消費者の取り消しの主張が認められている裁判例はあります。
しかし、相手が取り消しの有効性を争ってきた場合には、取り消しの主張が認められた判決はなかったという結果です。
ゼロです。
衝撃的な事実です。
ジン法律事務所弁護士法人のサイトや動画では、消費者に関する有利な判例とかを積極的に紹介していますが、実態として、この1年間で消費者契約の取消が争われて、認められたものがなかったという現実は受け入れるべきでしょう。
多くの裁判例は分かれています。
一つの判例を見つけてきて、100%自分のケースでも勝てると主張される人もいるのですが、現実はそう甘くありません。
消費者契約法の取消とは
ここで、消費者契約法の取消について確認しておきます。
まず、適用されるのは、消費者契約。
事業者と消費者との間の契約ですね。
個人間の取引や事業者間の取引は対象外。
こういう事業者と消費者の格差を理由に、消費者を保護してあげましょうという趣旨です。
この消費者契約の中で一定の事情があると、取り消すことができるわけです。
取り消しができる理由としてよくあるのが、今回も取り上げられている
不実告知
不利益事実の不告知
断定的判断の提供です。
不実告知
虚偽事実の告知ですね。
事実と違うことを言っただけでは要件を満たさず、契約の重要事項に関するものであることが必要です。
この重要事項について、消費者が誤解して、勘違いしてしまったということで取り消しが認められます。
不利益事実の不告知
こちらは有利なことだけ言って、悪いことは言わないというもの。
事業者が消費者にとって不利益なことを言わないことで、消費者は、有利なことだけ認識してしまい、勘違いして契約してしまったという内容です。
こちらも重要事項に関することが必要です。
断定的判断の提供
投資商品の勧誘でよく出てくる話。
将来の不確実な事情を確実であると説明してしまう内容です。
投資用ツール、FXのツールで利益保証などがあると、これが問題になります。
年利10%とか書かれているパンフレットがあると、この問題ではないか争われます。
他の取消原因
今回紹介されている裁判例では、この3つが主張されています。
消費者契約法では、他に、勧誘の態様によって退去妨害、不退去のように、その場所から出ていかないとか、最近の改正で追加された社会経験の乏しい人に恋愛感情を抱かせるような形で契約したデート商法などの規制があります。
ただ、今回の裁判例では触れられていません。
法人契約は厳しい
では、どういう理由で負けてしまっているのかチェックしていきしょう。
これではダメだろうという例が、原告が法人というケース。
原告は法人、会社だから消費者に当たらないという理由で、請求が棄却されています。
消費者契約法にもはっきりと消費者とは個人であると書かれています。
実質的に個人であるという主張をしたのか、知らなかったのかわかりませんが、当事者が法人だと消費者契約法の主張はかなり厳しいです。
事業のため消費者契約ではない
この法人と似たような話として、事業関係だと、事業者に関する契約として、消費者契約法が適用されないと主張されることが多いです。
今回の裁判例では、不動産のサブリース契約が多いです。
不動産投資の関係で、サブリース契約をして賃料を受領するというものです。
この収入は事業収入となるので、消費者契約法の適用が否定されることも。
不動産の規模、アパート一棟貸しであったり、過去に何件かそういう投資経験があると、消費者契約ではないとして請求が棄却されています。
不動産サブリースでは、その他に賃料額が高い場合には、事業、消費者ではないと判断されています。
不実告知がない
不実告知や不利益事実の不告知の主張をしていくときに、まず問題となるのが、その説明があったかどうか。
こういう虚偽のことを言われたと主張しても、その主張は本当にされたのかどうか、裁判所の認定が必要です。
不実告知の説明を証明できずに負けてしまっているケースも少なくありません。
今回の裁判例の中では、証券会社から他社株式転換特約付き債券を買ったという事案で、虚偽説明をされたと主張したものの、それに認める足りる証拠はないとして、請求棄却されています。
また、起業向けのコンサルティング契約の勧誘で、コンサル料の元は取れることを確約するという説明があったと主張したものの、裁判所は、そのような発言をしたとは認めがたいとして、否定、請求棄却されていまs.
言った、言わないの証明の時点で負けてしまっているパターンです。
重要事項ではない
不実告知の説明などが認められたとしても、これらは契約の重要事項であることが必要です。
ここが否定され、請求棄却となっているケースもあります。
例えば、中古車販売の裁判例で、ダッシュボードに傷があったり、塗装の剥がれ、リヤバンパーの不設置等の説明不足のケースでも、中古車ということで、ある程度走行距離を走行済みだったということは認識されていたので、これらの事情は、想定の範囲内であったはずとして、重要事項にならないとされています。
断定的判断の提供ではない
次に、断定的判断の提供分野。
セミナー等で、このビジネスをやらないかとフランチャイズの勧誘。
このビジネスなら利益が得られるという内容でパンフレットに具体的な金額が書かれていたというケース。
消費者側として、断定的判断の提供で取消の主張をしたものの認められませんっでした。
説明資料中には、「500万円、1000万円、3000万円の売り上げを作っていきましょう」といった記載がありましたが、これは、本件講座等を受講し実践を行う上での努力目標や心構えを記載したものと理解するとして、断定的判断の提供に当たるとはいえないとして請求を棄却しています。
パンフレットの記載は、客観的な証拠になるものの、このような記載方法だけでは弱いということですね。
まとめ
消費者側として、消費者契約法の取り消しをメインに考えて争うのは、結構リスキー。
このあたりの裁判例はチェックしておきましょう。
クーリングオフなど、他の理由で契約解消できるなら、そちらをメインに、または合わせて主張しておくことは必要です。
消費者にとって厳しい判断がされていますが、これが客観的な事実だとして、対応を考えましょう。
なお、紹介されている裁判例で、取消以外の不当条項に関する裁判例は、消費者側の主張が通っているケースも多いので、そちらもあわせてチェックしておくと良いかもしれません。
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