風俗嬢への掲示板上の誹謗中傷で開示請求が認められた裁判例

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FAQ(よくある質問)

 

Q.風俗嬢に対する誹謗中傷で発信者情報開示はされる?

風俗嬢に対する誹謗中傷で、発信者情報開示請求が認められた裁判例は多くあります。

掲示板で気軽に投稿してしまう人もいますが、結構危ないです。

お店への営業妨害にもなりそうな投稿の場合、店舗が費用負担して動くこともあります。

 

今回問題になったのは、「まな板胸」「勃つか?」「やりたくねーな」「やってる時笑いがでそう」などと風俗嬢としての容姿に優れない女性であるかのような投稿です。

この類の掲示板だとよくありそうな投稿だと感じますが、これについて権利侵害性を認めています。

東京地方裁判所令和2年8月14日判決です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.9.22

発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求訴訟は、匿名での情報発信者を特定するため、その情報を持っている業者に対し、開示請求をする裁判です。

発信者情報開示訴訟で、開示が認められると、発信者の情報が分かるので、その後に、名誉毀損等の損害賠償請求をするという流れです。

損害賠償請求等に動くための最初の流れといえるでしょう。

この発信者情報開示請求訴訟では、経由プロバイダから、投稿者に対して、開示に対する意見照会がされることも多いですが、投稿者自身はまだ裁判の当事者にならず、経由プロバイダが一般的な主張をするという裁判になることがほとんどです。

 

風俗嬢の発信者情報開示

事案の概要

今回も、経由プロバイダに対する発信者情報開示請求事件です。

原告は北九州市等で営業しているデリバリーヘルス店で働く風俗嬢。

被告が経由プロバイダ。

原告が、インターネット上の電子掲示板にされた投稿によって権利を侵害された旨主張して、同投稿についてインターネット接続サービスを提供した被告らに対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき、同投稿に係る発信者情報の開示を求めた事件。

 

原告の源氏名が「X1’」。

権利侵害の内容は、ネット上の掲示板の投稿です。

 

風俗嬢の同定可能性

風俗嬢に対する誹謗中傷事件では、原告本人が、その対象であるという特定をする必要があります。

投稿の対象が誰か、また、源氏名と当事者を結び付けないといけないわけです。

裁判では、同定などと呼ばれる争点です。

今回のケースで、原告は、本件スレッドが、北九州市等で営業しているデリバリーヘルス店「A」をテーマとするものであり、原告が、同店において「X1’」という源氏名で在籍していることからすれば、本件スレッドの閲覧者は、本件投稿にいう「X1’」が原告を示すものであると判断することができると主張。


また、本件投稿3が、「X1’」についての質問をした投稿に対して返信したものであり、本件投稿4ないし8が、「X1’」を有名人のG氏になぞらえた本件投稿3に続いて、G氏を話題にするものであることからすれば、本件スレッドの閲覧者は、本件投稿3ないし8が原告を話題にするものであると判断することができると主張しました。


本件各投稿は、原告の権利を侵害するものである一方、各投稿の違法性を阻却する事由は存在しないと主張しました。

 

これに対し、被告は、本件スレッドやAのホームーページには、「X1’」の本名や顔立ちを特定する情報がないから、本件各投稿の閲覧者は、本件各投稿が原告に向けられたものであると判断することはできないと反論しました。

 

源氏名での在籍と文脈で証明

この点について、裁判所は、本件スレッドが、北九州市等で営業しているデリバリーヘルス店「A」をテーマとするものであり、原告が、同店において「X1’」という源氏名で在籍していることからすれば、本件スレッドの閲覧者の一定数は、本件投稿1,2にいう「X1’」が原告を示すものであると判断することができると認められるとしました。


また、本件投稿3が、「X1’」についての質問をした投稿に対して返信したものであり、本件投稿4ないし8が、「X1’」を有名人のG氏になぞらえた本件投稿3に続いて、G氏を話題にするものであることからすれば、本件スレッドの閲覧者の一定数は、本件投稿3ないし8が原告を話題にするものであると判断することができると認められるとしています。

原告の主張を認め、前後の文脈から特定しています。

 

掲示板


情報交換・感想の域を越えて権利侵害

本件原告に対する権利侵害があったのかという点について、裁判所は、各投稿は、原告をG氏になぞらえているところ、G氏に対して世間が抱いているイメージは様々であろうが、G氏には、テレビ番組で、鼻にテープを付けた容貌を笑いのネタにしている一面があることを踏まえ、本件各投稿の表現ぶり及び投稿の経緯を総合的に考慮すれば、本件各投稿は、G氏を風俗嬢としての容姿に優れない女性として侮辱的に扱った上で、原告をそのように扱ったG氏になぞらえ、もって原告を誹謗中傷し、原告の名誉感情を侵害するものであると認められるとしています。


すなわち、本件各投稿は、原告をG氏になぞらえた上で、「まな板胸」(本件投稿1)、「勃つか?」(本件投稿2)、「やりたくねーな」(本件投稿6)、「やってる時笑いがでそう」(本件投稿7)というように、原告を風俗嬢としての容姿に優れない女性である旨直接的に誹謗中傷し、または、「愛嬌のあるG」(本件投稿3)、「Gに似ててきれいです」(本件投稿4)というように、原告を同旨皮肉的に誹謗中傷し、あるいは、原告についての質問をした投稿に対し、原告をG氏になぞらえる流れに悪乗りして、「G□□です。」(本件投稿5)、「テープ不要でございます。自然とあの鼻になるので、とても環境に優しい方となっております。」(本件投稿8)と回答し、原告を同旨誹謗中傷するものであると認定。


そして、本件各投稿は、原告の容姿について、揶揄を交えて不要に攻撃し、風俗嬢である原告に関する情報交換、感想ないし批評の域を越えるものである上、その一つ一つの投稿による損害は小さいかもしれないが、それらが蓄積していった場合には、原告の精神面や職業上の収益に大きな悪影響を及ぼす危険があるというべきことも考慮すれば、本件各投稿は、社会通念上許される限度を超える侮辱に当たると認めるのが相当であるとしました。

 

権利侵害を否定した投稿

一方、原告は、本件投稿2の「キャンセルされた」、「満員御礼解消」との部分について、原告の出勤状況を執着的に監視していることを明かして、原告の人格的利益を侵害するものである旨主張するが、本件投稿2の文理からは、上記部分をそのように解することはできないともしています。


また、原告は、本件投稿5の「□□」との部分について、「原告は、5000円(5k)で買春行為をする。」との事実を摘示して、原告の名誉を毀損し、原告を侮辱し、原告の人格的利益を侵害するものである旨主張するが、本件投稿5は、その投稿の経緯も併せ読めば、「X1’はロハですか?」との投稿(「ロハ」とは、「只(タダ)」から転じた、「無料で買春行為を行うこと」の隠語)を受けて、原告をG氏になぞらえる流れに悪乗りして、単に「G」と言いたいがために、「5k」と掛け合わせて、「G□□です。」と摘示したにすぎないとも解されるから、上記部分が、上記事実を摘示したものと認めることはできないとしています。

投稿内容によって否定している部分もあるという結論ですね。

風俗開示請求を否定

風俗事件での発信者情報開示事件

風俗嬢は誹謗中傷を受けやすいということもあり、発信者情報請求事件が増えているという印象です。

あくまで、損害賠償請求の前の発信者情報請求事件ではありますが、このような投稿が問題になるということを、ネット上で投稿するときには理解しておいたほうが良いでしょう。

今回も、一連の投稿の中で、ノリで投稿した人もいそうですが、発言内容によって開示の結論が違っており、その後の賠償責任などでも明暗が分かれています。

 

 

ジン法律事務所弁護士法人では、経由プロバイダとしての裁判事例もあります。

開示請求者側以外に、投稿者側での効果的な動きも把握しておりますので、心配な方はご相談ください。

 

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