FAQ
FAQ(よくある質問)
Q.民事裁判の起こし方、流れ、期間は?
民事裁判、民事訴訟のイメージがわかない、裁判を起こすべきか?裁判を起こされたけど、どうなるのか?という相談があります。
こちらの記事では、民事裁判の起こし方、流れ、期間、費用などよくある質問について広く解説しています。
この記事は、
- 相手を訴えたい
- 民事裁判の流れ、どんなイメージなのか知りたい
という人に役立つ内容です。
動画での解説はこちら。
目次
民事裁判とは?
民事裁判とは、刑事事件ではないもので、誰かが誰かに対して訴えを提起するものです。
民事訴訟とも呼びます。
一般民事事件には、
・交通事故で損害賠償請求をする
・貸したお金を返してほしいと請求する
・不貞行為の相手に慰謝料請求をする
など様々な事件があります。
民事裁判と刑事裁判の違い
刑事裁判は、検察官が起訴して、裁判官が有罪か無罪かを判断し、有罪の場合にはどのくらいの重さの刑罰を与えるか決める手続です。
民事裁判とは全く違う手続です。「刑事で訴える」ことはできません。
民事裁判では、逮捕されることはないですし、懲役刑を受けることもありません。
一般的に、民事の裁判を起こされたとしても、私的な紛争のため、それを理由として、職場で解雇、学校を退学させられるようなことはありません。
民事裁判では、当然ながら有罪率なども関係がありません。
敗訴しても、前科前歴にはなりません。
これらはすべて刑事裁判での話です。
民事裁判と民事調停の違い
民事裁判は、原告の請求が認められるかどうか裁判所が判断をする手続きになります。
これに対して、民事調停という手続きは、裁判所が間に入って、私人間の紛争を話し合いで解決することを目指す手続きです。
必ずしも法的に権利が認められるかどうか判断するものではありません。
民事調停手続きは、離婚や相続などの家事調停手続きとは別に設けられています。
家事調停は家庭裁判所で行いますが、民事調停手続きは簡易裁判所でおこないます。
調停期日では、双方の言い分を調停委員が交互に聞いて、話し合いができそうか詰めていく点で家事調停と似ています。
民事裁判の起こし方
民事裁判を起こす、訴えを起こすには、原則として、自分の権利をハッキリさせたい、請求したい側が動く必要があります。
民事事件には、訴える側(原告)と訴えられる側(被告)がいるのです。
まず、原告側で、弁護士などが訴状を作成し、裁判所に提出するところから始まります。
訴状には、当事者の表示や請求内容を記載することになります。
どのような権利を主張するのかを記載する書面が訴状です。
また、訴状の提出段階で、ある程度の証拠を合わせて提出することが通常です。
当事者の表示は必要なので、原告を訴える側の原告が匿名でできる手続きではありません。
自分のことを隠して訴えたいという人もいるのですが、そのような手続きは認められていません。
離婚事件などで、DVが絡むような事件では住所を隠す手続きもありますが、一般民事では基本的には住所氏名を明らかにしての訴えとなります。
訴状の書き方、作り方
最初に裁判所に提出するのが訴状という書面です。
ここには、大きくわけて、当事者欄、請求の趣旨、請求の原因欄があります。
これらを記載して完成させます。
当事者欄には、原告となる自分、被告となる相手方の住所、氏名等を書きます。
請求の趣旨欄には、どのような請求なのか、金銭請求であれば金額などをシンプルに書きます。
請求の原因欄に、請求の趣旨に記載した請求が認められる根拠を書いていきます。売買代金の請求であれば、売買契約をしたことなどを記載しますし、貸したお金の返還請求であれば、返還の合意や貸金の交付事実、年月日等を書いていくことになります。
このようにして作成した訴状を複数枚用意し、それぞれに印鑑を押します。
裁判所に出すのは、裁判所用と被告用です。被告1名であれば、2部を出します。被告2名であれば、3部を出します。
裁判では、自分の控えも大事ですので、コピーを1部、手元に置いておきます。
民事裁判の管轄裁判所
民事裁判は、管轄裁判所に対して訴えを提起する必要があります。
そのため、どこが管轄裁判所なのかを調べて、そこで訴えを提起する必要があるのです。
そして、この管轄裁判所は、訴えの内容によってどこなのか変わってきます.。
原告側の住所地でできる訴えもありますし、相手方の住所地でなければできない訴えもあります。
例えば、お金を貸したので返してほしいという裁判は、貸主側の住所地を管轄する裁判所で手続きを進めることができます。
それ以外に、不法行為等の場合には、相手でも自分でも住所でもない、不法行為の場所を管轄する裁判所で手続きを進めることができます。
その他、相手と自分で合意をして、その合意した裁判所で行う合意管轄という方法もあります。
簡易裁判所と地方裁判所
上記の管轄は、場所での管轄になりますが、裁判では金額によっても取り扱い裁判所が変わってきます。
簡易裁判所と地方裁判所の違いです。
140万円を基準に、金額が低い総額の裁判は簡易裁判所でおこないます。
金額が大きい事件を地方裁判所で扱います。
そのため、訴額がいくらなのかというチェックと、場所はどこなのかというチェックによって民事裁判の管轄裁判所は決まります。
ただし、争点が複雑な事件などは、簡易裁判所に提訴しても、地方裁判所に移送されることがあります。
これは被告の意見も聞いたうえで、簡易裁判所の裁判官の判断で行います。最初からあまりにも複雑な事件であれば、上申書を添付したうえで、地方裁判所に提訴することもあります。
また、民事裁判の中には、訴額がいくらなのか算定不能のものもあります。
財産上の請求でない事件、金銭請求でない事件など、訴額がいくらかわからない事件について、算定不能とされた場合には160万円とされます。
そのため、地方裁判所での取り扱いとなります。
民事裁判の流れ
原告が管轄裁判所に訴状を提出します。
裁判所は訴状を審査・受理し、裁判手続きの日時(口頭弁論期日)を指定します。
原告に都合を聞いての指定となります。
その後、被告に裁判期日等について、郵便で連絡をします。
この連絡は、特別送達という特別な郵便で配達され、受け取りを拒否することはできません。
このとき、被告は答弁書も提出するよう催促されます。
答弁書とは、訴状に書かれている内容に対して、被告が内容を争うか認めるかを明確にするものです。
被告も弁護士をつけるのであれば、被告代理人の弁護士が答弁書を作成して裁判所に提出することになります。
送られてきた書類については、答弁書の提出期限が書かれています。通常は、第1回口頭弁論期日の1週間前が期限とされています。しかし、ここで、多少遅れても、法的には問題ありません。最悪の場合には、第1回口頭弁論期日の直前であっても、答弁書自体は有効となります。ただ、遅れないように、余裕を持って出しておいた方が良いことは確かです。
民事裁判の費用
民事裁判の費用については、実費と弁護士費用があります。
弁護士費用については自己負担です。基本的には相手方が払うべきものではありません。
自分でつけた弁護士の費用というのは自分が払うとのが原則です。
交通事故の損害賠償等、一部の不法行為の裁判では、請求の一定額が弁護士費用として認められることもあります。
しかし、これは、一部の裁判のみであり、基本的には誰が払うのかというと、弁護士を依頼した人が頼むことになります。
弁護士なしで民事裁判を進めるのであれば、この弁護士費用はかかりません。
弁護士費用の金額等は、弁護士事務所によって自由化されているため、事件内容や事務所によって全く異なります。
多くの弁護士では、着手金と成功報酬形式をとっており、敗訴した場合でも着手金部分は自己負担となるのが通常です。
また事件内容や事務所によっては、タイムチャージ形式もあります。
弁護士なしで民事裁判を進めたとしても、実費はかかります。
裁判を起こす段階では実費として、印紙代と切手代がかかります。
印紙代は、請求の金額によって変わってきます。
たとえば、50万円の裁判であれば5000円、100万円の裁判なら1万円というように金額が上がっていきます。
切手代は、被告に対する送達費用となるので、被告の人数等によって変わってきますが、被告1名であれば6000円程度です。
民事裁判の中では、訴訟費用の負担をどうするかという話があります。
訴状にも、「訴訟費用は被告の負担とする」との記載をします。
訴訟費用には、印紙代や切手代、証人の出頭費用をなどが含まれます。ここに弁護士費用は含まれておりません。
正確な訴訟費用を請求する場合には、判決後に、訴訟費用を確定してもらう手続きが必要です。
民事裁判での法廷の場所
民事裁判の呼び出しを受けて、実際に第一回弁論期日に裁判所に行った際に、まずすべきは、裁判所の中で、法廷の場所を特定することです。
通常、裁判所には、複数の法廷があります。
そのため、自分の裁判がどの法廷で行われるのか特定し、その法廷に行く必要があります。
通常、裁判の呼び出し状には、法廷の場所が書かれています。
○号室というように部屋番号が書かれているはずです。
多くの裁判所では、506号法廷などの記載であれば、裁判所の建物の5階にあるという意味です。
そこまで法廷の数が多くない裁判所では1号法廷、2号法廷というような1桁の番号だけが書かれています。
この場合、裁判所の建物内の案内図で、この場所を特定することになります。
このため、裁判所に行く際には、なるべく呼び出し状を持っていくようにしましょう。
自分の法廷番号を控えていない場合に、法廷の場所を特定できる方法もあります。
裁判所には、その日に行われる裁判の事件内容が公開されています。
大きくない裁判所の場合には、この事件内容が紙で貼り出されています。
建物入り口付近の分かりやすい場所に貼り出されているはずですので、その紙を探し、自分の名前を探します。
これで、自分の事件がどの法廷で開かれるのか分かります。
東京地方裁判所のように、大きい裁判所の場合には、紙で貼り出されておらず、冊子のような形になっていたり、検索する必要があります。
民事裁判の第一回期日の内容
指定された裁判手続きの日時(第一回口頭弁論期日)に、提出された訴状や答弁書の陳述がされます。
訴状と答弁書の内容によって、この裁判で何が訴えられ、何が争われるのか争点が詰められることになります。
その後は、原告・被告それぞれが各自の主張をまとめた準備書面を作成し、陳述していく期日が繰り返され、争点をさらに絞っていくことになります。
答弁書の書き方については、裁判所からの呼出状にある程度の記載があります。しかし、そこに縛られるものではありません。
第1回口頭弁論期日までに時間がないときには、答弁書の書き方として、請求を棄却する旨の記載のみをし、請求原因に対する認否欄には、追って主張するという記載をし、2回目以降の期日で詳細に反論するという方法も許されます。
なお、期日については、弁護士などの代理人が就いている場合には、代理人のみが出席することで進められます。
基本的には、当事者は来ずに、代理人だけ出席ということの方が多いです。
また、第1回口頭弁論期日では、被告側の予定は聞かずに決められていることから、被告は欠席しても書面だけ出すことで、答弁書を陳述したものとみなされます。これを擬制陳述と呼びます。
簡易裁判所の第一回口頭弁論期日
簡易裁判所の第一回口頭弁論期日では、地方裁判所とは違う特徴もあります。
簡易裁判所では、貸金請求など、少額の事件で、あまり争いがなく、分割払いの調整などをする事件が多いです。
このような点から、第一回口頭弁論期日から、和解の話が出されることがあります。
訴状の請求内容に争いがなく、被告側が出頭して分割払いの希望をするような場合には、司法委員と呼ばれる人が間に入って、分割払いや総額の調整等を行ったうえで、裁判上の和解を成立させることがあります。
つまり、第一回期日から、具体的な和解の話をされるというわけです。
このような手続きでは、担当の司法委員が決まり、いったん法廷の外に出て、別室で話を詰め、そのうえで法廷に戻り、裁判官の前で和解を成立させる流れになります。
民事裁判期日の座り方
民事裁判で、第一回口頭弁論期日に行くと、たいていは、同じ裁判所の同じ係で、複数の事件が並行して行われています。
そのため、まずは傍聴席に座ることになります。
法廷では、裁判官が座るちょっと高い場所にある席のほかに、正面に証言台があり、証言台の左右に、当事者席があります。
これらの法廷と、柵の外に、傍聴席があるはずです。
法定に入るときに、普通はドアが2つあり、当事者入り口と、傍聴席の入り口があります。
裁判所によって違いますが、傍聴席の入り口から入る方が間違いがありません。
法廷に入るドアには、小さな窓があるので、蓋を開けて覗き込み、入って問題ないか確認できます。
そのうえで、見えるところに、出頭カードが置かれているはずなので、そこの出頭カードで自分の事件のカードを見つけ、出席者欄に名前を書いたり丸をつけたりします。
そうすると、順番に呼ばれますので、それまでは傍聴席で座っていることになります。
事件番号や、名前を呼ばれたら、当事者席に移動して座ることになります。
ほとんどの法廷では、原告席は、傍聴席から見ると左側にあります。
被告席が右側にあります。
呼ばれたら、これらの席に座ります。
椅子が2つ、3つあることも多いですが、座り方に決まりはありません。
好きな椅子を利用するようにしましょう。
1回の口頭弁論期日にかかる時間
1回の口頭弁論期日にかかる時間は、数分のことがほとんどです。
多くの裁判所では、30分単位、事件が多い裁判所でも10分、15分単位で複数の事件の期日を開きます。
10時に呼び出された事件の場合、複数の事件が10時からの法廷で順番に行われます。
次の事件が10時30分からの場合、最大でも30分程度ですべての事件を終わらせるスケジュールです。
揉める事件があると遅れることはありますが、どんなにひどい場合でも、30分程度の遅れでしょう。
この中で、自分の事件のやりとりは、数分のことが多いです。
ただし、簡易裁判所での和解の話などがあると、1時間程度かかることがありますので、多めにスケジュールを確保しておいた方が良いでしょう。
このような裁判所でも、第1回目の口頭弁論期日で何時間もかかることはありません。
民事裁判の最短期間
民事裁判に、どれぐらいの時間がかかるのか気にする人もいます。
民事裁判の最短期間としては1ヵ月ぐらいでしょう。
訴状を提出すると、第一回弁論期日の指定がされます。
裁判所の混み具合によっても変わりますが、早くて1ヶ月程度先の期日が指定されることでしょう。
それぐらい先になるのは、期日を決めてから被告に呼び出しをかけるためです。
被告も準備に一定の時間がかかることから、通常はこれぐらい先のスケジュールとなります。
第一回口頭弁論期日で、被告が争わない、答弁書を出さなくて欠席するなどの場合には、判決が言い渡されるので、最短期間ととしては1ヵ月程度で終わることになるでしょう。
ただし、被告が出席したり、争ったりした場合には、当然ながら争点を整理したり、立証が必要になってくるので、裁判は時間がかかるスケジュールになります。
第二回目以降の期日がどれぐらいで指定されるのか、また何回くらいの期日を重ねるのかによって、裁判全体にかかる時間は変わってきます。
数ヶ月終わるケースもあれば1年以上かかるケースもあります。
民事裁判の二回目以降の期日
期日は1か月に約1回の間隔で開かれ、今回は原告の主張、次回は被告の主張・・・というように期日ごとにそれぞれの主張をおこなっていくことが多いです。
それぞれが3回ほどで主張が出尽くすことが多いとも言われますが、新しい争点が出てくることもあり、回数制限はありません。
裁判官が、あまりにも主張が行ったり来たりしているような場合には、主張期間を制限して、証拠調べに入る流れとなります。
裁判所の準備書面のタイトル番号のルールは?
民事裁判では、訴状・答弁書以降の主張は、準備書面という書面で出します。相手の主張への反論もこの準備書面の中でします。
この書面には、番号をつけることが多いです。
たとえば、準備書面(1),準備書面(2)・・・
または、第1準備書面、第2準備書面・・・
のように、何回目の主張なのかを特定するのが通常です。
ここに明確なルールはなく、準備書面1、準備書面2・・・という人もいますし、中には、途中で番号が抜けているケースもあったりします。
この形式は、途中で変えない方が良いでしょう。わかりにくくなるので。
すなわち、第1準備書面のあとに、準備書面(2)とするとわかりにくいです。
証人尋問などが終わった最終段階で出す準備書面に番号を振らず、最終準備書面というタイトルで出す人もいます。
しかし、予想外に、裁判が続いてしまい、
最終準備書面(1)、最終準備書面(2)・・・と(4)くらいまで続いた事件を見たことがあります。普通に連番で出しておいた方が良いと考えます。
民事裁判期日の記録
裁判では、期日ごとに、議事録のようなものが作られます。
裁判所の書記官が、期日調書というものをつくります。
こちらでは、その裁判期日に、どのような主張の書面が陳述された扱いになっているのか、何の証拠を取り調べたのか記録されます。
当事者であれば、この期日調書を謄写することもできます。
期日調書にどのような記載がされているのか確認したければ、書記官に確認して教えてもらえます。
また、書面以外に口頭でした主張についても、記録に残しておいてもらいたい場合には、調書に残しておいてくれと主張することで、記載してもらいます。
なお、裁判期日は、平日の日中のみで、土日にはありません。
民事裁判記録の謄写
期日調書や裁判所に提出された準備書面、証拠は当事者であれば謄写できます。
主張や証拠提出が、いつおこなわれたのか扱いになっているのか正確に知るために、裁判所の期日調書を閲覧・謄写する方法があります。
弁護士も、裁判の途中から依頼を受けるようなことがあり、そのような場合、ご自身や以前の弁護士がどのような活動をしていたのか知る必要があります。このときには、期日調書の謄写をします。
ご自身で裁判所に謄写手続きをする場合には、証拠説明書や準備書面、裁判所からの呼出状に書かれている事件番号で事件を特定し、裁判所に謄写申請をします。
地方裁判所の一般民事事件では、「令和3年(ワ)○号」のように書かれています。
謄写手続は、対応してくれない時間帯がある裁判所もあるので、事前に電話等で確認してから行った方が良いでしょう。
民事裁判での証拠調べ
民事裁判で、交互に主張をしていき、争点が絞れてきた場合、その後は証拠調べに入ります。
それまでに、証拠の書類(書証)を提出していると思いますが、さらに、証人尋問、本人尋問などをするかどうか検討されます。
事件によっては、検証や鑑定(土地の価格や怪我の程度など)がおこなわれることもあります。
証人尋問や本人尋問をする場合には、事前に陳述書を作成し、証拠提出したうえで、誰を尋問するのか、時間配分はどうするかなどを詰めて行き、尋問期日が開かれます。
証人尋問については動画でも解説しています。
このような証拠調べでは、主張している事実の立証責任がどちらにあるかがポイントになります。
裁判では、当事者が主張している事実のうち、争いがあるものを立証していかなければなりません。
事件内容ごとに、立証責任が決められているので、この立証責任を負う側が証拠を提出したりすることになるです。
民事裁判の傍聴
民事裁判の弁論期日は公開されています。
裁判は公開されているものなのです。
そのため、民事裁判は、誰でも傍聴できます。
勝手に裁判所に行って、法廷に入り、傍聴席に座ればよいだけです。録音・撮影はNGです。人気事件の場合には、傍聴席が抽選になります。
ただ、民事裁判の弁論期日は、基本的には書面の提出にとどまり、これを口頭で主張したことにするというものなので、傍聴していても何が何だかわからないことがほとんどです。
証拠の提出も、書面の原本を確認する程度なので、どのような証拠が出されているのかも傍聴席からはわからないです。
これに対して、証人尋問の期日は、ある程度長い時間が取られ、質問と答えを見ることができるので、弁論期日よりは雰囲気を味わえるかと思います。
裁判の傍聴でいうと、民事裁判よりは刑事裁判の方が事件内容がわかりやすいです。
刑事裁判で、争いがない事件の傍聴をすると、1時間弱で、起訴状の朗読から求刑や弁論まで見ることができるので、裁判を見たという実感はより得られるでしょう。
民事裁判の終了
裁判の終了には、大きく分けて「和解」と「判決」という2つのパターンがあります。これ以外だと、訴えの取下げ、請求認諾等もありますが、よくあるのは和解と判決です。
和解とは、原告と被告が主張を譲り合って訴訟を終わらせる合意をすることです。
訴訟手続の間、裁判所はいつでも和解を促すことができます。職権で和解が勧告されるシーンです。
和解が成立すると和解調書が作成され、訴訟は終了します。
判決とは、裁判を経て裁判所が示す判断のことです。
判決に不服がある場合は、控訴ができます。控訴をしないと判決は確定します。
和解で終わるケースが7~8割、判決で終わるケースが2~3割ほどと言われます。
民事裁判の和解の流れ
民事裁判の和解については、上記の通り、裁判官の勧告により、どのようなタイミングでもあります。
一般的には、裁判の早い段階で、争点がそれほどないようなケースでは、和解の打診があります。
また、争点が複数あるようなケースでも、当事者尋問の前に、和解による解決の可能性を打診してくるような裁判官も多いです。
さらに、当事者尋問等の証拠調べの直後に、裁判官の心証を踏まえた和解の話が出てくることが多いです。
時間に余裕ががあるようなケースでは、せっかく当事者が出席したということで、尋問期日に、そのまま和解の話を進めることがあります。
和解については、お互いが承諾したうえで合意するものになっているので、意思に反するのであれば拒絶することも可能です。
ただし、裁判の終盤での和解提示は、裁判官の心証に従ったものが多く、少なくとも、その審級での判決は、裁判官から提示された和解案に近い形で出される可能性が高いです。
民事裁判の判決で負けた場合
民事裁判の判決で負けた場合、判決の内容に従う義務があります。
金銭請求などの裁判を起こされ、負けたら、支払義務を負います。
判決が確定したのに、無視する、バックレる、払わないという対応を取ると、請求側は強制執行手続をしてくることが多いです。
判決が出た場合の財産差押えです。
請求側が相手の財産を特定し、差押の申立をすると、財産から強制的に回収されることになります。
預金であれば残高が出金できなくなり、給料であれば、一部が控除され、債権者に払われてしまいます。
日本の民事裁判では、一審の判決で負けた場合でも、控訴することができます。
ただ、一審判決で、仮執行宣言がついていると、控訴して争っている段階でも、財産差押を受けることになります。
通常の金銭請求の事件では、仮執行宣言がついています。財産差押を避けたければ、控訴とともに、仮執行宣言による差押を止める手続もしておく必要があります。
民事裁判のデメリット
民事裁判のデメリットとしては、少なくとも実費の費用はかかりますが、金銭請求の場合、相手に財産がないと勝訴判決をとっても回収ができないという事態になります。
裁判中に、相手が自己破産をするということもあります。
この場合、費用倒れになるという点がデメリットにはなります。
また、ペンネームで活動しているようなケースでも、訴状には実名を出すことになり、裁判は公開となるので、このような情報を外に出したくない人にとっては、デメリットになるでしょう。
とはいえ、交渉や調停で話がつかない事件では、法的にしっかり判断してもらわないと解決できない事件も多いため、これらのデメリットを受け入れても、民事裁判しか選択肢がないということも多いです。
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