マンション管理費の滞納と遅延損害金、弁護士費用の請求。横浜市の法律事務所

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FAQ(よくある質問)

 

Q.マンション管理費の滞納で遅延損害金の請求はできる?

マンションの理事会では、滞納管理費の回収が問題になることも多いです。

この回収については、管理規約によることになりますが、遅延損害金や弁護士費用の請求が認められることもありますので、これを元に交渉する方法も有効といえます。

たとえば、これらの請求を認めた裁判例に東京地方裁判所平成30年4月17日判決があります。

滞納管理費の交渉をする際には、このような裁判例を提示し早期回収のメリットを説得する方法が考えられます。

マンションの法律問題

 

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

事案の概要

原告は、東京都西東京市にあるマンションの管理組合。

区分所有者であった被相続人は、平成23年10月11日に死亡。

マンションの区分所有者の共同相続人が被告。具体的には、妻、子2人でした。

管理組合が、管理規約に基づき、被相続人の死亡後に発生した平成24年2月分から平成29年5月分までの管理費、修繕維持積立金及びコミュニティ費用、平成24年2月分から平成26年10月分までの駐輪場使用料、弁護士費用等並びにそれらの遅延損害金の支払を求めたというケースです。

 

管理費滞納

 

管理費の金額

原告では、管理規約及び総会の決議により、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、平成24年2月分から平成29年5月分までの管理費として月額1万8300円、同期間の修繕維持積立金として平成28年2月分まで月額8300円、同年3月分から月額1万1200円、平成24年2月分から平成26年10月分までの駐輪場使用料として月額300円、平成24年2月分から平成29年5月分までのコミュニティ費用として月額200円を支払う旨定めていました。

修繕積立金が、値上げになるパターンですね。

 

管理規約における遅延損害金、弁護士費用負担

原告では、管理規約において、管理費等の支払期限を当月の6日(金融機関の休業日の場合は翌営業日)とし、上記期限までに支払われない場合には、原告が、本件管理費等を支払わない区分所有者に対し、年14.6%の割合による遅延損害金と、弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用とを加算して請求することができる旨を定めていました。

同じような管理規約にしているマンションも多いのではないでしょうか。

 


管理費滞納の際に弁護士費用の請求もできる

管理規約では、弁護士費用の請求ができるとされています。

原告は、被告らの本件管理費等の滞納により、本件弁護士費用として、着手金8万1000円、報酬金22万9210円及び訴状貼用印紙代1万6000円の合計32万6210円を負担していました。

しかし、被告らはこれを争いました。

被告の1名は、原告は、弁護士に依頼することなく、理事長において、本件訴訟の提起をし、追行することができたので、被告らが本件弁護士費用の支払義務を負うべきでないと主張。

裁判所は、管理規約において、原告は、本件管理費等を支払わない区分所有者に対し本件弁護士費用を請求することができる旨定めているから、原告は、理事長において訴訟を提起するのでなく、弁護士に委任して本件管理費等を支払わない区分所有者に対する訴訟を提起させ、追行させることも許容しているということができると指摘。

原告は、弁護士に委任して被告らに対する本件管理費等に係る本件訴訟を提起していることが認められるので、原告は、本件訴訟に係る本件弁護士費用を請求することができるというべきであるとしています。

弁護士費用の請求もできるとしました。

 

管理費滞納の際に請求できる弁護士費用の金額には限度がある

裁判所は、弁護士費用の請求もできるとしつつ、その金額の相当性についても判断しています。


原告が請求している本件弁護士費用は、原告が負担し、又は負担することとなる弁護士の着手金8万1000円及び報酬金22万9210円並びに本件訴訟に係る訴状貼用印紙代として1万6000円であり、その着手金及び報酬金の額は、日本弁護士連合会がかつて定めていた報酬等基準の範囲内にとどまるものであり、被告が主張するような相当性に疑義があるものとはいえないとしています。


したがって、原告は、本件訴訟に係る本件弁護士費用を請求することができ、原告が主張するその額も相当であるということができると結論づけています。

弁護士費用の請求をする場合には、反論がされたときのために、かつての日弁連規程なども参考にしておく必要はありそうです。

 

マンション管理費は不可分債務

被告は、被相続人の死亡前から、被相続人の許諾を受けて、本件区分建物において、被相続人と同居していたので、被相続人の死亡を始期とし遺産分割を終期とする使用借権を取得していると主張。そのため、本件区分建物の通常の必要費を負担することとなるから、本件管理費等の支払義務を負担するのはマンションに居住している被告だけであると主張しました。

 

原告の管理規約では、以下の記載がありました。

 

  • 敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、各区分所有者に対し、原告に管理費、修繕維持積立金、駐輪場を含む駐車場等の使用料及びコミュニティ費用を納入すべき義務があること
  • 管理費は、公租公課や共用設備の保守維持費等の通常の管理に要する経費に充当すること、
  • 修繕維持積立金は、一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕等の特別の管理に要する経費に充当すること
  • 原告が駐輪スペースを賃貸借契約に基づき特定の者に使用させることができ、同スペースを使用する者が原告が定める使用料を原告に納入しなければならないこと
  • 管理費等の料金一覧には、コミュニティ費用につき居住者の親睦を目的として集めていること

との記載です。

これらの事実から、本件管理費等は、全て区分所有者において負担するものであり、また、敷地及び共用部分等の管理に要する費用、駐輪スペースの使用料又は居住者の親睦に係る費用との性格から、不可分的に受ける利益の対価としての性質を有するということができるとしました。

そうすると、本件管理費等に係る債務は、本件区分建物について遺産として共有している被告らにおいて、性質上の不可分債務として負担することとなると解するのが相当であると結論づけました。

さらに、本件弁護士費用は、本件管理費等の不履行により発生する違約罰であるので、本件管理費等と同様に、性質上の不可分債務となると解すべきであるともしています。

 

支払の猶予も支払期限の変更の合意もされていない

被告は、本件管理費等は、原告が、平成28年3月頃、「相続人がはっきりしたら払ってください」との指示をして、遺産分割まで本件管理費等の支払を猶予したと超しました。

 

しかし、管理会社は、被告らに対し、平成28年12月15日頃、本件管理費等の未払額が同月13日現在で159万0400円であり、同金員の支払を求める旨を記載した管理費等支払催告書を送付していました。

被告は、本件管理会社に対し、平成28年12月22日、電話で、本件管理費等の一部について分割で支払いたい旨打診したところ、本件管理会社の担当者から、協議をして折り返す旨伝えられました。そして、本件管理会社は、その打診を拒絶することとし、その旨を伝えました。

本件管理会社は、被告に対し、平成29年3月17日頃、未納分として170万9200円を同月31日までに、同年4月分として2万9700円を同年4月6日までに支払うように求める催告書を送付。

このような経緯も、支払の猶予を受けたこととは整合しないと指摘しています。

したがって、原告は、本件管理費等について、支払の猶予をし、又は支払期限の変更の合意をしたということはできないとし、滞納一覧表のとおり、各支払期日の翌日から支払済みまで年14.6%の割合による遅延損害金も含めて支払うよう命じています。

 

このような督促の経緯を証拠化しておくことも大事でしょう。

 

 

マンション管理費滞納事案等で参考にしてみてください。

 

 

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