遺言による廃除を否定した裁判例。横浜市の法律事務所

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FAQ(よくある質問)

 

Q.遺言による廃除はどれくらい認められる?

推定相続人からの廃除制度は遺言でもできるのですが、実際には認められにくいです。

推定相続人廃除が争われた事件。離婚訴訟など各種紛争中の夫婦で、遺言による廃除の記載があった事件があります。

大阪高等裁判所令和2年2月27日決定です。


この判例は

  • 夫婦間での廃除を検討している
  • 推定相続人の廃除を遺言でするか迷っている

ような人はチェックしておくと良いでしょう。

 

事案の概要

被相続人の遺言執行者が、遺言公正証書において、夫を相続から廃除する意思が表示されていたので、夫につき推定相続人廃除を申し立てた事件です。

家庭裁判所は、被相続人と夫との婚姻関係が破綻していたとは認められないとはしました。

しかし、被相続人の病状が悪化していた状態で、夫が離婚訴訟を提起し、請求棄却の判決を受けたのに、上訴して被相続人死亡までこの訴訟を維持し続けたこと、被相続人を夫の経営する会社の取締役から解任して収入を絶ったこと、理由がないにもかかわらず被相続人が役員報酬や地代についての不当利得返還請求訴訟を提起、刑事告訴するなど、被相続人にその対応をさせたことなど、一連の行動が被相続人に対する虐待及び重大な侮辱に当たると判断しました。

結論として、夫を被相続人の推定相続人から廃除しました。

しかし、高等裁判所は、廃除を否定しました。全く逆の結論がとられました。

どのような事情があると、廃除が認められるのか、ご自分の内容と比較することで、参考になるはずです。

 

家庭裁判所が認定した事実

まず、家庭裁判所が認定した事実をみていきます。

被相続人と夫は、昭和50年10月6日に婚姻し、夫の実家でその両親と同居して2人の子をもうけました。

その後、夫婦は、自動車修理業を営むようになり、昭和63年7月8日にこれを法人化。

夫が代表取締役に、被相続人も取締役にそれぞれ就任。

被相続人は、経理を担当。

 

夫婦関係が悪化

被相続人は、平成25年6月頃、夫が近隣の女性宅に赴いていたことから不貞を疑い、参加人の顔写真やその女性の写真のコピーに「死ね」とか「色きちがい」と書いて夫の居室に張るという行為に及んでいました。

また、被相続人は、平成26年4月17日頃、参加人の父から相続した土地で農作業ばかりして仕事をせず、家族の面倒を見ない夫に詰め寄り、夫から暴力を振るわれて約6週間の加療を要する頸椎捻挫、右足関節外側靭帯損傷の傷害を負ったこともありました。

さらに、夫は、被相続人が自分たちに役員報酬や地代・家賃を渡していないとして不満を募らせ、顧客にそのことを話したところ、平成27年8月頃、顧客が被相続人に対し、夫に役員報酬等を支払っているか確認し、夫との離婚を勧めたこともありました。

このように、夫婦の間で諍いが生じるようになり、両者の関係は悪くなっていたものでした。

そして、被相続人から夫に対して夫婦関係の調整を求める調停を申し立てるなどもありました。調停は不成立に。

 

被相続人の健康問題

被相続人は、平成27年12月に大腸がんに罹患しているとの診断を受け、平成28年1月15日に入院し、同月19日に手術を受けて、同月29日に退院したが、医師からは、今後1年間は治療に専念すべきであり、体力面及び精神面に負担のかかるものは極力控えるよう指示されました。

被相続人は、上記手術後、肝臓にがんの転移していることがわかり、平成29年4月11日からその治療のため入院し、その後退院して自宅に戻り療養を続けたが、平成31年死亡。

 

夫からは離婚調停、訴訟

夫は、夫婦関係調整調停事件が不成立となると、被相続人を相手方として夫婦関係調整(離婚)調停をに申し立て、この調停事件が平成28年9月23日に不成立になると、同年10月19日に離婚訴訟を提起

被相続人に対し、離婚とともに、被相続人が自身に支払われるべき金員を支払わず、管理保管しているとして、その金員の半額の1400万円を財産分与し、婚姻破綻の原因が被相続人にあるとして慰謝料300万円を支払うこと求めました。

しかし、当裁判所は、夫や被相続人の本人尋問(被相続人については同人宅での所在尋問)をした上、平成30年3月13日、婚姻関係が破たんしているとは認められないとして、夫の請求を棄却する旨判決。

これに対し、夫は、大阪高等裁判所に控訴。同裁判所は、同年10月11日、控訴を棄却する旨判決。

夫は、この控訴審判決に対し、さらに上告及び上告受理の申立て。最高裁判所は、令和元年5月22日、被相続人の死亡により離婚請求及び財産分与の申立てに係る部分が終了したことを宣言して上告を受理せず、それ以外の申立てについては上告を却下する旨決定。

 

役員解任、会社の紛争も

夫は、平成28年3月1日、被相続人を招集することなく会社の臨時株主総会を開催し、同社の取締役に就任していた被相続人らを取締役から解任。その旨の登記。

被相続人は、同年5月6日、会社を被告として上記株主総会決議の不存在確認等を求める訴訟を奈良地方裁判所葛城支部に提起。

さらに、夫が、同年10月24日、取締役会の議決を経ないで、会社の臨時株主総会を招集・開催して、再び被相続人らを取締役から解任するなどの決議を行ったため、被相続人は、同年12月2日、この株主総会決議についても、不存在確認等を求める訴訟を同支部に提起。

同支部は、被相続人が提起したこれらの事件を併合審理し、平成29年11月10日、前者については総会決議不存在確認請求を認容し、後者については総会決議不存在確認請求は棄却したものの、取消請求を認容する旨判決。

この判決に対し、被相続人及び夫の双方が控訴したものの、大阪高等裁判所は、平成30年4月11日、双方の控訴をいずれも棄却する旨の判決し、同判決は同月26日確定。

 

他方、夫が、取締役から解任したことに基づき、平成28年8月以降の被相続人の役員報酬の支払いを打ち切ったため、被相続人は、同月10日、婚姻費用分担請求の調停を申し立てたが、平成29年6月23日、病気(肝転移)のため、この調停申立を取り下げ。


さらに、夫は、会社の代表取締役として、平成28年5月23日、被相続人らが会社に帰属する金員を着服したなどと主張し、同人らを被告として不当利得返還請求訴訟を同支部に提起。

平成29年6月26日には、被相続人を会社法違反の被疑事実で警察署に刑事告訴

裁判所は、平成29年11月10日、会社の資金を家計と一体として被相続人が管理することを夫らが了承ないし許容していたなどとして、会社の請求を棄却する旨判決。これに対し、夫は、控訴したものの、大阪高等裁判所は、平成30年4月19日、控訴棄却の判決をし、同判決は、同年5月8日に確定。

刑事告訴については、嫌疑不十分の理由で不起訴処分。

 

家裁は夫婦関係悪化の原因を認定

被相続人と夫との婚姻関係は、平成25年頃から次第に悪化していったことは認められるが、その原因は、不貞を疑われるような行為に及んだり、仕事をしないとして詰め寄った被相続人に暴力を振るったり、家族で経営していた会社に他人を関わらせ、被相続人に自分らの役員報酬や地代・家賃を被相続人が取り込んでしまっているなどと言うようになった夫の言動にあったといえると認定。

しかし、夫は、平成28年末頃までは自宅で食事を摂るなどしていたもので、夫婦が完全に別居するに至ったとはいえないし、夫らの役員報酬や地代・家賃についても、同人らが会社の経理を任されていた被相続人において、これらを管理し家計に充てることを了承していたのであって、被相続人が取り込んで私的に流用していたともいえないのであるから、被相続人と夫との婚姻関係が破綻していたとまでは認められないと認定。

なお、被相続人が夫の顔写真等に「死ね」とか「色きちがい」と書いて夫の居室に張るといった行為に及んではいるが、これは夫が不貞を疑われるような行為をしたことに起因するもので、やや感情的ではあるものの、その心情は理解できると指摘。

また、実家に住むようになった夫が自由に自宅に入れないような措置を被相続人が講じたこともあったが、夫が自宅で食事を摂っていたことからすると、同人の帰宅を拒否するものとはいえない。被相続人のこれらの行為が夫婦関係悪化の原因になったとは考えられないとしました。

 

訴訟提起や刑事告訴が虐待に?

このような状況での訴訟提起や刑事告訴について、これら一連の行為がいずれも根拠のないことは、一連の訴訟がすべて夫の敗訴で確定し、刑事告訴についても嫌疑不十分で不起訴となっていることからも明らかであるところ、これらの行為が重篤な病気を抱えた被相続人に与えた肉体的・精神的苦痛は甚大であり、被相続人が前記公正証書遺言の中で夫を許せないとしているのも至極当然といえると認定。


以上によれば、夫の一連の行為は、被相続人に対する虐待及び重大な侮辱にあたるというべきであり、夫を被相続人の推定相続人から廃除するのが相当であるとしました。

夫が即時抗告。

 

高等裁判所の判断

高等裁判所は、原審判を取り消し、廃除の申立てを却下するとしました。

被相続人に対する虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行(廃除事由。民法892条)を認めることができないとしました。

 

推定相続人の廃除とは

推定相続人の廃除は、被相続人の意思によって遺留分を有する推定相続人の相続権を剥奪する制度です。

そのため、廃除事由である被相続人に対する虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行は、被相続人との人的信頼関係を破壊し、推定相続人の遺留分を否定することが正当であると評価できる程度に重大なものでなければならず、夫婦関係にある推定相続人の場合には、離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)と同程度の非行が必要であると解するべきであるとしました。

 

遺言で具体的事情をあげるも否定

被相続人は、本件遺言において、夫から精神的、経済的虐待を受けたと主張し、具体的理由として、①離婚請求、②不当訴訟の提起、③刑事告訴、④取締役の不当解任、⑤婚姻費用の不払い及び⑥被相続人の放置の各事由を挙げると指摘。


しかし、被相続人は、本件遺言時に係属中であった離婚訴訟において、婚姻を継続し難い重大な事由はないし、これが存在するとしても有責配偶者からの離婚請求であるか、婚姻の継続を相当と認めるべき事情がある旨を主張して争ったうえ、本件遺言作成の後に言い渡された上記離婚訴訟の判決において、婚姻を継続し難い重大な事由(離婚原因)が認められないと判断されている点を指摘。

しかも、被相続人の遺産は、会社の株式など夫とともに営んでいた事業を通じて形成されたものであると認定。

被相続人の挙げる上記①ないし⑥の各事由は、被相続人と夫との夫婦関係の不和が高じたものであるが、上記事業を巡る紛争に関連して生じており、約44年間に及ぶ婚姻期間のうちの5年余りの間に生じたものにすぎないのであり、被相続人の遺産形成への夫の寄与を考慮すれば、その遺留分を否定することが正当であると評価できる程度に重大なものということはできず、廃除事由には該当しないとしました。

 

離婚事情や財産の内容も考慮

廃除については、遺言で記載しても認められないことが多いです。

遺言に記載されている場合には、遺言執行者が原告となるのですが、本人ではないので、詳しい事情がわかりにくいです。今回のケースでは、複数の事情を列挙していて、かなり詳細な事情を主張して争ったものの、最終的には否定されてしまっています。

離婚訴訟で、離婚自体を争っていたことや、財産が夫婦関係から形成されたものということから、廃除するまでは認められないとしています。

被相続人の遺産形成の経過も考慮されることも、遺言作成の際には頭に入れておく必要はあるでしょう。

とはいえ、遺言での記載だけでは、柔軟な主張・立証が難しく、生前に対応しておく必要性が高いといえます。

 

 

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