FAQ
FAQ(よくある質問)
Q.ペットのトラブルに関する民事裁判は?
ペット裁判についての解説です。
『ペット訴訟ハンドブック』という本をベースに、ペット関係でどういう裁判が行われているのかを紹介します。
ペット裁判に関しては、大きく3類型あります。
1つ目はペットが受けた損害に関する裁判。
2つ目はペットが与えた損害についての裁判。
3つ目ペット自体が対象になっている裁判です。
それぞれ、どういった裁判が行われているのかを解説していきます。
この記事は、
- ペットを飼っている人でどんなトラブルがあるか心配な人
- これからペットを飼うときのコスト、リスクについて検討している人
に役立つ内容です。
動画での解説はこちら。
ペットが受けた損害
まず一つ目です。ペットが受けた損害についての話。
ペットが受けた損害の裁判とは、例えば、ペットがケガをさせられた、事故によって亡くなってしまったなどの場合に、飼い主が加害者に対し損害賠償請求をするという裁判です。
よくあるのは、ペットを乗せて車で運転していたところ交通事故に遭ってしまったというケース。
自分たちのケガなどの損害賠償請求とあわせて、ペットの被害についても、損害賠償請求ができます。
ペットは法律上は動産
法律上、このペットの取り扱いは、残念ながら動産という位置づけです。
人と同じような立場ではなく、動産、もの扱いというのが、ペットが置かれている立場です。
たとえば、動産の差押さえの対象にもなります。お金を回収したいが払ってもらえないので、裁判所を使って差し押さえをする手続きで、動産執行があります。
自宅に動産を差し押さえるという場合、理論上、ペットもこの動産として差し押さえの対象にもなってしまうのです。
ペットショップの差し押さえなどであれば別ですが、一般的には、自宅にいるペットに換価価値があるか疑問なので、実際に差し押さえることは少ないでしょうが、理論上はありえます。
動産を壊されても慰謝料はない
この動産とか物を壊された時には基本的には慰謝料が発生しないというのが法律のスタンスです。
物を壊されたことに関する慰謝料は本来は発生しないのです。
例えば、大事にしていた時計が壊れてしまったので慰謝料を請求したいといっても、物自体の価値の弁償はともかく、それ以上の思い入れ、思い出のような事情に関しては慰謝料請求は認められません。
そうすると、ペットも動産なので慰謝料請求はできないのではないかと感じます。ペットが事故で亡くなっても慰謝料請求ができないのではないかと。
ここが、スタートラインではあったのですが、徐々に裁判例では、ペットへの思いを尊重し、慰謝料を認める方向に変わってきました。
とはいえ、人と同じような慰謝料金額にはなっていません。
慰謝料が認められても、一人数万円というところから、数十万円という金額帯です。
家族が何人も慰謝料請求をして、全員分を合わせて100万円を超えたような場合には、話題になるというような金額帯での認定をされています。
一人だけの慰謝料請求で、100万円を超える慰謝料を認めた裁判でないのではないかと言われています。
人が事故で死亡した場合の慰謝料相場は、事故態様や家族構成によっても変わりますが、2000万から場合によって3000万円という数字です。
大きくかけ離れた金額帯ではあります。
ペットの医療過誤による損害賠償請求
同じようにペットが受けた損害として、交通事故以外に医療事故があります。
獣医さんのミスによる医療過誤事件。
また、ペットホテルに預けたのに、トラブルがあって逃げて事故に遭ったようなペットホテルの管理上の事故もあります。
このあたりは人間が受ける損害賠償請求とパラレルです。医療過誤や、介護の施設の事故と同様の論理で攻めることになります。
医療過誤の場合、ペットの関係でも専門的な話が出てきます。
請求額が数十万円とという場合、本来、140万円までの裁判では、簡易裁判所を使います。
しかし、医療過誤のような複雑な裁判では、低い金額でも最初から地方裁判所へ訴訟提起した方が良いとされます。
簡易裁判所で訴訟提起しても、内容が複雑という理由で、地方裁判所に移されることが多いからです。
そこで時間のロスが出てしまうので、請求額が低くても最初から地方裁判所に申し立てをした方がいいのではないかとされます。
ペットが与えた損害
次にペットが与えた損害の裁判類型です。
ペットが誰かに損害を与えてしまったという場合、飼い主が損害賠償義務を負うかどうかという話です。
ペットが与えた損害に関しては、まず民法718条に定めがあります。
民法718条では、動物の占有者はその動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負うとしています。
ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときはその限りではないとされ、免責も認めています。
飼い主は、この規定により、ペットが他に与えた損害の賠償責任を負います。
相当の注意があれば免責されますが、結構ハードルが高く、あまり認められていません。
ペットの管理責任を問われる事例
裁判例では、犬が吠えたことで、被害者が転倒し、損害賠償義務が認定されたものがあります。
Q.犬が吠えただけで400万円以上の賠償義務を負った裁判とは?
民法717条でわかりやすい事件としては、犬などが他人に噛み付いてケガをさせてしまったケースです。
吠えて転倒させただけでも400万円程度の賠償義務を負う事例もあります。
噛み付いてケガという場合でも、逸失利益や休業損害の話があると、交通事故と同じように、高額な賠償義務を負うこともありえるでしょう。
裁判では、犬が吠えるのは普通ではないかと反論もされていますが、裁判所の判断としては、犬を飼うなら、調教の責任も負うべき、被害者が負担するものではないと認定されています。
飼い主に対して、結構厳しい判断がされています。
動物占有者責任の免責
このの責任の免責規定のハードルは高いという話があります。
しかし、ドッグランのような場所では、免責が認められているケースも多いです。
ドッグランでの放し飼いは当然なので、そのような場所で、犬と人が衝突してケガをした事案でも、人の不注意が原因だとして、飼い主の責任が否定されている例があります。
そういう施設の場所、環境を主張できるのか、一般的な場所なのかによって、判断基準が分かれていますので、損害賠償請求裁判では、どのような場所だったのかの主張・立証がポイントになります。
動物の取得規定
ちなみに民法では動物に関する条文は、この718条の占有者責任と、他には民法195条だけです。
195条は、家畜以外の動物について、他人が飼育していたものを占有するものは、その占有開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼い主の占有を離れた時から1か月以内に回復の請求を受けなかったときはその動物について行使する権利を取得するという条文です。
動物を取得できるという制度です。
裁判例ではあまりみかけない条文です。
というのも、家畜以外の動物でであることが要件だからです。
家畜以外の動物とはなにかというと、一般的には、牛や豚のような動物をイメージするかもしれませんが、それらにとどまりません。
通常、人が飼ったりする動物は含まれると解釈されています。犬や猫も、家畜に含まれるのです。条文から見ると、ありそうなシーンとして、犬や猫があるのですが、これらが対象外になっている規定です。
一般的には人が飼わないような動物が前提なので、あまり裁判例に出てこないという関係です。
その他のペット損害は受忍限度
その他にもペット損害トラブルはあります。
たとえば、騒音トラブル。
動物の鳴き声が、騒音だとして、近隣関係で損害賠償請求がされるケースも。
このあたりは、人間の騒音問題とパラレルに、一般人の受忍限度を超えるかどうかで判断されることがほとんどです。
動物自体は鳴くものなので、一定の範囲までは受任しなければならないとされています。
ペットの飼い方に関するルール
また、ペット特有の問題として、ペットを飼うかどうかについて、環境省で基準が出されている動物もあります。
犬や猫など、よく飼われるペットに関しては飼い方のルール、基準があります。損害賠償請求の裁判では、その基準に反していないかどうか主張、立証することで、違法性の判断に影響を与えることもあるでしょう。
また、各地の条例でルールが決められているケースもあります。
東京都では、通称、東京都ペット条例と呼ばれるものが。
犬では、公園でもリードをつけてないといけないというルールがあります。放し飼いはNGなのですね。
裁判になりそうなケースでは、お住まいの地域で、条例による規制がないか、条例違反による違法性も主張できないか検討すると良いでしょう。
ペット自体が対象の裁判
最後に、ペット自体が対象になっている裁判類型。
ペット自体の取引です。
ペットショップからペットを飼った、売買契約をしたものの、ペットが何らかの病気を抱えていたということで瑕疵があったというようなトラブルです。
売買時の説明義務、契約の有効性を争う裁判などもあります。
ペット特有の問題は少なく、一般的な契約トラブルと同じような裁判になっています。
ペット裁判の費用
ペットに関しての裁判は、上記の損害額のように金額が低いことが多いです。
裁判の認定金額が低いとなると、これを専門家に頼んだときに費用が回収額を上回ってしまう、赤字になってしまうこともありえます。
少しでも安く回収したいという場合には、もう専門家に頼まずに自分で裁判を進める本人訴訟もあります。
本の中では、一定の勉強をすることで、本人訴訟ができるように書式なども充実しています。
費用を節約したいという人は参考にしてみると良いでしょう。
また、自分で対応する方法としては民事の裁判ではなく、話し合いで関係する民事調停を使う方法もありえます。
近隣トラブルなどでは、この方が適していることも多いでしょう。
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