FAQ
FAQ(よくある質問)
Q.過払い金のミネルヴァ移送事件とは?
過払い金大手の弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所の破産管財人との裁判で、移送が問題になっている事例です。
過払い金は信託財産だとして、不当利得返還請求をする際、依頼者の地元の裁判所でやろうという決定が出ています。
裁判所の場所に関する裁判例ですね。
福井地方裁判所敦賀支部令和3年2月12日決定です。
この判例は
- 遠い裁判所で裁判を起こされた
- 過払い金ミネルヴァ問題がどうなったか知りたい
ような人はチェックしておくと良いでしょう。
事案の概要
過払金回収でCMなども展開していた弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所は破産しました。
破産手続きでは、破産管財人が選任されています。
過払金をミネルヴァが回収したのに、依頼者に返還していなかったお金がどうなるのか争われています。
一般の債権だと扱われた場合には、他の債務と同順位で配当されることになります。
これに対して、過払金の回収はミネルバの預り金口座に入ったのだから、これは信託財産だと理論構成して主張している依頼者もいるとのことです。
ミネルヴァの破産管財人は、回収した過払金に係る預り金口座の預金から払い戻しをし、破産財団に組み入れました。
この点について、依頼者の中には、信託財産だから破産財団に組み入れるべきではないと主張している人もいます。
信託財産であるのに、破産財団に組み入れたことは問題だとして、不当利得返還請求訴訟を起こしている事例もあります。
今回のケースでは、依頼者の住所地である福井地方裁判所に提起。
これに対し、破産管財人は東京地方裁判所への移送申立てを行ったという流れです。
同じような裁判が複数起きそうですし、東京の破産管財人としては、自分の近くの裁判所の方がラクです。
裁判所は移送申立を却下
この移送について、裁判所は却下しました。
そのまま福井地方裁判所で行うとの内容です。東京地裁ではなく、依頼者の住所地で行うという判断です。
信託契約の締結
この事案では、すでに依頼者は亡くなっており、相続人が当事者になっています。
基本事件は、亡Aの相続人である相手方ら(福井県敦賀市居住)が、破産者弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所との間で、亡Aの債務整理に関する件(過払金返還請求を含む。)を破産者に委任することを内容とする委任契約及び破産者が回収した過払金を破産者の預り金口座で管理することを内容とする信託契約を締結。
株式会社プロミスは、相手方らとの間の和解契約に基づき、破産者の預り金口座に過払金の返還金を振り込んだところ、破産者は、破産手続開始決定を受け、管財人は、本件返還金を破産財団に組み入れたが、本件返還金は信託財産であり、破産者の破産財団に属しないとして、相手方らが、管財人に対し、不当利得返還請求権に基づき、本件返還金額の支払等を求めた事案。
委任契約に信託契約が含まれるという主張。
本人尋問が必要かもしれない負担
本事件について、義務履行地である相手方らの住所地を管轄する当庁のほか、管財人の普通裁判籍の所在地を管轄する東京地方裁判所にも管轄があると指摘。
東京地裁でも対応できる裁判という話ですね。しかし、本件では本人尋問の可能性を考慮。
相手方らの本人尋問も必要となるものと考えられるが、仮に本件が東京地方裁判所に移送されたとすると、相手方ら及び相手方ら訴訟代理人が東京地方裁判所に赴くこととなるところ、相手方らは、いずれも破産者との間で委任契約を締結した個人契約者であり、基本事件は、破産者の破産という相手方らにとっては偶然の事情に起因するものであることに加えて、相手方ら訴訟代理人の事務所は福井市内に所在することにも照らせば、相手方ら側の費用、労力の負担には大きいものがあるといえると指摘。
以上によれば、本件申立ては理由がないからこれを却下するとの結論でした。
ただ単に、預り金を返せという裁判だと、本人尋問までされない印象を受けますが、信託契約の合意があるという点に争いがあり、立証する必要があるなら、本人尋問となりそうですね。
この点を考慮して判断したものといえます。
民事訴訟法17条の移送とは
移送は裁判所を変える手続です。違う地域の裁判所に移されることになります。
民事訴訟法17条では、遅滞を避けるための移送が決められています。
裁判が管轄裁判所に起こされたとしても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所等を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者の衡平を図るため必要があると認めるときには別の裁判所に移送することができるとされているのです。
この移送が認められる要件としては、
- 訴訟の著しい事態を避けるため必要があること
- 当事者の衡平を図るため必要があること
のどちらかの要件を満たす必要があります。
訴訟の著しい遅滞を避けるための判断要素としては、予定されている証人の住所なども考慮されることになります。
2つ目の、衡平性の判断では、一般市民と企業との裁判などで、市民が遠隔地の裁判所に出頭求められると、経済的時間的に困難が生じるとされます。このような当事者構造の時に使われる可能性がある規定です。
移送の判断要素として、予定証人の所在地のほか、過去の裁判例では、当事者が病気療養中のために遠隔の裁判所に出頭できないという事情が考慮されたケースもあります。
また、選任された代理人である弁護士の住所地も判断要素になっているケースも見られます。
遠い裁判所で裁判を起こされてしまったら
消費者金融と借主の裁判などで移送申し立ても比較的行われています。
消費者金融が支店で取り扱った契約で、契約内容等に争点があり、証人尋問が必要となる見込みの場合には、契約をした支店の所在地に移送されたケースもあります。
全国的に展開している企業が破産した場合、破産管財人が訴訟当事者になることもありえます。
弁護士法人の破産以外でも、同様の問題が発生することがありえますので、管轄に関する裁判ということで頭の片隅に入れておきましょう。
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