FAQ
FAQ(よくある質問)
Q.マンション総会招集通知の注意点は?
マンションの総会召集手続に問題があり、規約改正決議が無効とされた事例があります。
東京高等裁判所平成7年12月18日判決です。
- マンションの理事を担当
- 規約改正などの重要事項の総会がある
などの人はチェックしておくと良いでしょう。
事案の概要
原告は、マンションの区分所有者。
同マンションの管理組合法人が被告。
平成元年2月19日開催の定期総会で「管理組合・規則」の改正に関する決議がされました。
原告は、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)35条5項に規定する招集手続に瑕疵があるから無効と主張。
管理組合法人を被告とし、決議の無効確認等を求めた事件です。
規約改正と招集通知の記載ルール
総会で規約改正など一定の重要事項を決議する場合には、議題だけではなく、議案の要領をも通知すべきこととされています(法35条5項)。
このような総会の招集手続に暇疵があった場合について、その暇疵が重大なものであれば無効となるとされています。
本件での総会の招集通知書には、「規約・規則の改正の件(保険条項、近隣関連事項、総会条項、議決権条項、理事会条項)」と記載されていました。
管理組合法人は、招集手続に瑕疵があるとはいえないと主張。
また、仮に招集手続に瑕疵があったとしても軽微であるから、その瑕疵が治癒されたと解すべきであると主張しました。
地方裁判所は総会が有効と判断
一審である地方裁判所は、総会の招集通知書には、区分所有法35条3項に規定する「議案の要領」が記載されているとは認められず、招集通知に瑕疵があるというべきであるとしました。
しかし、通知の瑕疵は、基本的には軽微な瑕疵であって、法的安定性を犠牲にしてまで常に決議の無効事由になると解するのは相当ではなく、本件の場合、右招集通知の瑕疵が決議に重大な影響を及ぼすべき特段の事情があったものとは認められないとしました。
結論として、招集通知の瑕疵は、決議の無効事由とはならないと判断し、本訴請求を棄却。
原告が控訴しました。
高等裁判所は無効と判断
高等裁判所は、決議が無効と判断しました。
瑕疵が重大な影響を及ぼすものと認定したものです。
総会の招集通知の趣旨
総会の招集通知においては、通常は、その目的たる事項(議題)を示せば足りるが、規約の改正等一定の重要事項を決議するには、そのほかに議案の要領をも通知すべきこととされているところ(区分所有法三五条五項)、右の趣旨は、
区分所有者の権利に重要な影響を及ぼす事項を決議する場合には、区分所有者が予め十分な検討をした上で総会に臨むことができるようにするほか、総会に出席しない組合員も書面によって議決権を行使することができるようにし、もって議事の充実を図ろうとしたことにあると解されると指摘。
法の趣旨に照らせば、右議案の要領は、事前に賛否の検討が可能な程度に議案の具体的内容を明らかにしたものであることを要するものというべきであるとしています。
本件招集通知は具体的ではないと判断
これを本件についてみるに、本件招集通知には、議案として、「規約・規則の改正の件(保険条項、近隣関連事項、総会条項、議決権条項、理事会条項)」と記載されているにすぎないところ、右をもって議案の内容を事前に把握し賛否を検討することが可能な程度の具体性のある記載があるとは到底いうことができないとしました。
そうすると、本件決議の決議事項については、議案の要領の通知に欠けるから、その決議には区分所有法三五条五項所定の総会招集手続に違背した瑕疵があるといわざるを得ないと指摘。
そして、右議案の要領の通知を欠くという招集手続の瑕疵がある場合の決議の効力について検討するに、法が議案の要領を通知することとした趣旨は前示のとおりであるから、議案の要領の通知の欠缺は、組合員の適切な議決権行使を実質上困難ならしめるものというべきであって、これをもって軽微な瑕疵ということはできないとしました。
決議内容も重大だから無効に
とりわけ、本件決議のうちの規約44条(議決権)の改正は、従来、最小区分所有単位を一票とし、その所有する専有面積比割合により議決権の票数を算定していたものを、所有戸数、所有専有面積のいかんにかかわらずすべて一組合員一票にするというもので、組合員の議決権の内容を大幅に変更し、複数の票数を有していた組合員に極めて大きな不利益を課すことになる制度改革であるから、事前に各組合員に右改正案の具体的内容を周知徹底させて議決権を行使する機会を与えるように特に配慮することが必要であると指摘。
しかし、本件においては、区分所有者は右通知において議決権条項の改正が審議され、決議されることは認識できたものの、その具体的内容を把握できなかったため、右のような重大な議決権内容の変更を伴う規約改正が行われることを事前に知ることができなかったものであり、その結果、58票を有していた杉本建設、24票を有していた日刊工業、2票を有していた○山勝男においては、その議案の重要性を認識することなく管理組合法人に対し、理事長に一任する旨の委任状を提出したこと、しかし、右決議まもなく右内容を控訴人から知らされて初めて決議内容の重大性を知って驚き、事前に知っていれば理事長に一任する旨の委任状を提出することはなかったとして、控訴人を通じて管理組合法人に対し、委任を取り消す旨申し出ていたことが認められるとしました。
そして、本件決議の議決が成立するためには区分所有者及び議決権数の各4分の3以上の多数の賛成が必要とされるところ(区分所有法31条1項)、証拠によれば、右各組合員らが一任の委任状を提出せず、これらの議決権数が賛成票に算入されなければ、議決権数657票の4分の3である493以上の賛成票を集めることはできず、右決議は可決されなかったことが明らかであるとしました。
以上の事実を勘案すれば、本件決議については、重大な手続違反があり、これを無効と解するのが相当であるとしました。
決議全体が無効になるわけではない
なお、控訴人は、本件総会の招集手続における重大な違法により、本件決議全体が無効になる旨主張していました。
しかし、ほかの決議などは、問題となった規約改正決議に先行して決議されたものであり、その決議は従前の議決権条項に基づく議決権割合によってなされており、同議案についての要領の通知の欠缺が他の議題の管理組合法人の解散決議について影響を及ぼすと解すべき特段の事情も見当たらないとして、この点に関する控訴人の主張は採用しないとしました。
規約改正部分についての決議のみ無効とした判断です。
管理組合の方々、規約改正など重要な決議事項がある際には、ご注意ください。
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