マンション管理費横領と他の理事の責任。横浜市の法律事務所

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FAQ(よくある質問)

 

Q.マンション管理費横領で、他の理事の責任は?

マンションの管理について、管理会社への管理費支払がもったいないとして自主管理に切り替えた場合、会計チェックが甘くなり、理事による不正、横領事件が起きるケースもあります。

横領した理事以外に、その当時の理事長や監査まで責任追及されることがありますので、そのような理事の人や、自主管理のマンションに居住している人は注意しておきましょう。

理事長と会計監査の責任が問われた東京地方裁判所平成27年3月30日判決を紹介します。副理事長も訴えられましたが、副理事長は責任を免れました。

この判例は

  • 自主管理のマンションに居住している
  • マンションの理事になった
  • 理事長などの立場にあり、責任追及されている

ような人はチェックしておくと良いでしょう。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.8.7

 

マンション法律

事案の概要

原告は、マンション管理組合法人

もとのマンション管理組合で、会計担当理事によって同管理組合の金員が着服横領されました。

そこで、当時の管理組合の役員を被告として、善管注意義務違反に基づく損害賠償として、着服行為により被った損害元本額5489万6617円等を請求した事件です。

 

原告は、平成20年に設立された東京都世田谷区所在の鉄筋コンクリート造陸屋根七階建のマンションの区分所有者全員で構成される管理組合法人。

原告は、その設立によって、本件マンションの区分所有者等全員によって構成され、昭和51年頃に結成された権利能力なき社団である管理組合の権利義務を承継。


被告らはいずれも本件マンションの区分所有者又は区分所有者であった者であり、平成7年から平成19年11月4日までの理事長、平成7年から平成19年11月4日まで会計監査役員、平成6年から平成19年6月21日までの副理事長でした。
管理組合においては、理事長には年間6万円、副理事長には年間5万円、会計担当理事には年間6万円、会計監査役員には年間5000円の謝礼が支払われていました。

 

会計担当に対する判決


会計担当は、平成6年から平成19年11月4日まで管理組合の会計担当理事を務めており、同年9月まで「自治会会計●●」名義の銀行預金口座の預金通帳、印鑑、キャッシュカードを管理していました。

管理組合では、毎年5月頃に開催される定期総会において、前年度の収支決算報告書の承認が行われており、会計担当理事は、会計監査役員に対して収支決算報告書や本件預金口座の残高証明書(ただし、偽造されたもの)を提示していました。

原告は、会計担当が本件自治会の会計担当理事の立場にあることを利用して本件預金口座から金員の払出しを行った上、これを着服横領したと主張し、平成21年、会計担当ほかを被告らとして、東京地方裁判所に不法行為に基づく損害賠償請求等を求める訴訟を提起。

同裁判所は、平成23年9月7日、原告の会計担当に対する請求を認め、会計担当に対し、不法行為に基づく損害賠償として、領得残元本額5489万6617円及び遅延損害金の支払を命ずる判決をしました。

 

その後に、本件裁判を起こしたという流れ。賠償金の支払いが進まないので、このような訴えを提起したものと推認されます。

被告らは、平成26年6月16日の本件第一回口頭弁論期日において、仮に被告らの責任が認められるとしても、平成26年4月28日の本訴提起までに10年が経過した平成16年4月以前の横領行為に係る被告らの損害賠償債務について消滅時効が成立すると主張し、同時効を援用。また、被告らの責任が認められるとしても、相当の減免がされるべきだと反論しました。

 

着服横領額

まず、裁判所は、会計担当の着服横領額を認定。

会計担当は、本件預金口座から預金の払戻しを行うことにより、合計1億1528万0600円を着服横領。

他方、合計7729万3587円を一部返還。

遅延損害金の計算をし、本訴提起時点において、残元金5489万6617円と遅延損害金の損害を受けたと認定しました。

 

着服横領についての善管注意義務違反

最大の争点が、他の理事の善管注意義務違反。

裁判所がこれを判断する際に考慮した事実は次のようなものでした。

会計担当は、平成6年に本件自治会の会計担当理事となって以降、平成19年11月4日に臨時総会でその職を解任されるまで、再任され続け、本件自治会の会計担当理事の地位にありました。

本件自治会では、平成6年以前から管理会社に管理を委託しない自主管理の体制を取っていました。

会計担当理事は、本件自治会の管理費、修繕積立金、駐車場使用料等が入金される本件預金口座の管理を行い、その預金通帳、銀行用印鑑の保管を行い、また、総会に報告する前年度の収支決算報告書を作成していました。

 

マンション管理規約による理事らの職務

本件規約では、理事長は、本件自治会を代表して自治会業務を統括し、その職務に関し区分所有者を代理することとされ、また、毎年5月末までに前年度の経費に関する計算書を作成し、自治会員に報告しなければならないとされていました。

会計担当による本件預金口座の管理、その預金通帳及び銀行用印鑑の保管並びに総会に報告する前年度の収支決算報告書の作成は、少なくとも平成7年以降につき、理事長の上記権限及び義務に基づく同被告からの委託に基づくものと認められます。

理事長は、会計に関して、その報告を行う定期総会の直前に会計担当から簡単な説明を受けるのみであって、本件預金口座の通帳の残高を確認することもなく、その具体的内容について十分な確認をしないままとしていました。また、会計監査役員に対し、会計監査について具体的な指示をすることもありませんでした。

 

会計監査役員が行っていた職務は、前年度の収支決算報告書の確認・点検及びこれについての定期総会での報告でした。

会計担当による収支決算報告書の確認・点検方法は、定期総会開催日当日の開催時間の約1時間30分から2時間前頃に会計担当から連絡を受けて、年度末収支決算報告書、銀行発行名義の本件預金口座の残高証明書(ただし、偽造したものであった。)、領収証の束等を示され、収支決算報告書の残高と残高証明書の金額を照合するなどして間違いがないかどうかを点検・確認した上、収支決算報告書及び予算案を受け取るというもの。

なお、会計監査役員は、会計監査役員に就任した当初は本件預金口座の預金通帳又はその写しを見たような記憶があるものの、それ以降、同預金通帳又はその写しを見せられたことはなく、本件預金口座の残高確認については、毎年度、収支決算報告書に記載された預金残高と残高証明書の金額を照らし合わせるだけでした。


横領事件発覚の経緯

平成19年5月27日に開催された平成18年度定期総会において、会員から収支決算報告書の残高を裏付ける銀行発行の残高証明書を取得して開示せよとの要求が出され、後日に臨時総会を開催してこれらの開示をすることとなりました。

ところが、同年9月23日、臨時総会が開催されたものの、会計担当は、無断で同臨時総会を欠席し、残高証明書及び預金通帳は提出されませんでした。

同月26日、理事長は、会計担当からの連絡を受けて同人と会ったところ、大分前から本件預金を流用して投資活動をしたが失敗して穴を空けてしまったこと、それを埋めるためにいろいろなところから借金をしてやり繰りをしたが多重債務者となったこと、横領額は約5000万円であることを告げました。


また、同年10月10日、臨時総会が開催され、出席した会計担当は、本件自治会の管理費及び修繕積立金を横領したこと、横領額は約5500万円であること、会計監査役員に提示していた本件預金口座の残高証明書は自分のワープロで偽造したものであったことを告げました。

 

総会等の出席状況

本件マンションの区分所有者は39戸で、総会の議決権は39件。

定期総会の出席状況についてみると、いずれも日曜日に開催されており、更に平成10年度以降は比較的出席しやすい会員が多いと思われる日曜日夕方に開催されているにもかかわらず、平成7年度は本人出席15名、委任状提出17名であったが、平成8年度は本人出席10名、委任状提出23名、平成9年度は本人出席12名、委任状提出18名、平成10年度は本人出席13名、委任状提出22名、平成11年度は本人出席8名、委任状提出25名、平成12年度は本人出席9名、委任状提出24名、平成13年度は本人出席9名、委任状提出22名、平成14年度は本人出席6名、委任状提出23名、平成15年度は本人出席5名、委任状提出23名、平成16年度は本人出席5名、委任状提出25名、平成17年度は本人出席7名(議決権9件)、委任状提出24名及び平成18年度は本人出席13名(議決権14名)、委任状提出19名であり、本人出席者のうちの約4ないし5名が役員であって、役員でない一般の自治会員の本人出席は少ない状況が続いていました。

任せきりに近い状況といえます。

このような中で、平成13年度定期総会においては、毎年の総会に出席する自治会員がほとんど同じで、自治会運営の実態としては好ましくないことから、もっと多くの自治会員が本件自治会の管理、運営に関心を持ってもらいたく、いかにしたら総会への出席がしやすくなるのかを各自治会員が考え、提案をしてもらいたいとの意見が出されましたが、、その後も総会への本人出席が少ない状況が続いていました。

 

会計監査役員の責任

裁判所は、会計監査役員の責任を認めました。

会計監査役員として、会計担当理事が作成した前年度の収支決算報告書を確認・点検し、会計業務が適正に行われていることを確認すべき義務があったにもかかわらず、定期総会直前に示された虚偽の収支決算報告書の記載と偽造した残高証明書の残高等を確認するだけで、本件預金口座の通帳の確認をせず、横領行為を看過したものと認定。

銀行発行名義の預金口座の残高証明書については、それが真実銀行発行のものであるならばその内容の信用性が極めて高いものであるが、他方、本件預金口座の残高証明書は、ワープロで偽造したというものであって、その体裁等からして真実の銀行発行の預金口座の残高証明書の原本とはかなり異なるものであったことが推認され、このような偽造された残高証明書を安易に信用し、その確認が容易である本件預金口座の預金通帳によって残高を確認しようとしなかった会計監査役員には、善管注意義務違反があったと認めざるを得ないとしました。

監査役員としては、通帳原本を確認しないと、責任追及されるリスクがあるといえるでしょう。

 

理事長も損害賠償責任を負う

裁判所は理事長の賠償義務も認めました。

本件自治会の理事長として、前年度の収支決算報告書を作成して総会で自治会員に報告する義務を負っていたとしています。

たとえ会計については会計担当理事に委託しており、また、会計監査役員による会計監査が行われていたとしても、やはり理事長が会員に対して収支決算報告をすべき最終的な責任者であることに照らすと、収支決算報告書を確認・点検して適正に行われていることを確認すべき義務があったといわざるを得ないと指摘。

それにもかかわらず、会計担当に本件預金口座の管理、その預金通帳及び銀行用印鑑の保管を任せていたにもかかわらず、会計の報告につき、定期総会の直前に簡単な説明を受けるのみであって、本件預金口座の通帳の残高を確認することなく、また、会計監査役員に対し、本件預金口座の通帳を確認するなどの適正な監査をすべき指示を出したり、適正な監査をしているかを確認したりすることもなく、その結果、会計業務の具体的内容について十分な確認をしないままとしていたものであると認定。

理事長として、善管注意義務違反があったと認めざるを得ないとしています。

 

副理事長の損害賠償責任は否定

副理事長は、理事長を補佐し、理事長に事故があるときはその職務を代行することとされていました。

また、副理事長も構成員である理事会は、総会の議決、本件規約による自治会の業務遂行に当たるほか、必要と認める事項を決定しこれを処理することとされていました。

さらに、理事長は、平成7年以降、役員の役割分担を決め、副理事長については、①理事長の補佐、②定期的な共用部分の保守管理、③管理名簿等の日常管理資料の作成をその具体的な職務としていました。

裁判所は、このような前提で、副理事長は、本仕規約上も実際の職務分担のいずれにおいても、会計事務について具体的に何らかの権限が与えられていたものではないところ、会計事務について何らかの措置を講ずべき場合とは、理事長が会計に関して行っていた行為について副理事長として何らの補佐をしなければならない状況が存在することになった場合又は理事長に事故があった場合であると解されるとしました。

しかるところ、当時、会計事務において副理事長が何らかの措置を講ずべき状況にあると認識されておらず、理事長に事故があるとの状況にもなかったことに照らすと、会計担当の横領行為につき、副理事長において予見して何らかの措置を講ずべきであったということはできず、善管注意義務違反があったと認めることはできないとしました。

 

消滅時効

会計担当からは、一部の返還がされていました。

一部返還についての不法行為による損害賠償債務への充当については、会計担当が各別の横領行為を特定した上でその金額の全部又は一部を返還したと認めることはできないことから、これを民法489条ないし491条に従って充当すべきとしました。

まず、各領得に係る不法行為による損害賠償債務につき発生している遅延損害金に充当し、その残額については、債務者である会計担当のために弁済の利益が同じであるといえることから、弁済期が先に至ったものとして、発生が古い順に領得した元本額に充当されることになると指摘。

そうすると、理事長からによる消滅時効の援用により、横領した金額で弁済充当されていない部分のうち消滅時効の対象となるものは、本訴提起から10年前までの間の各領得額の合計となるとしました。

 

過失相殺の類推適用で9割減額

理事長らの消滅時効が成立していない金額について、さらに減額されるかが争点となりました。

理事長らは、謝礼を受け取っていたとはいえ、別に仕事に就いており、夜間や休日に時間の都合を付けて、自主管理によっていることから多様な業務に関わらざるを得ない本件自治会の役員の職務を分担してきたと指摘。

定期総会の本人出席者数は、比執的出席しやすい自治会員が多いと思われる日曜日に開催されてきたにもかかわらず、本人出席数は少なく、本人出席者のうち役員を除く一般の自治会員の出席は数名程度であることも多く、平成18年度定期総会において、本件預金口座の残高証明書の取得・開示の要求が出されるまで、自治会員の会計を含めた本件自治会の管理運営への関心は高くなく、大多数の自治会員は本件自治会の管理運営について役員に任せるままであったと考えられるとも言及。

会計監査らが本件預金口座の通帳を確認するなどして本件預金口座の期末残高を確認せず、また、偽造による残高証明書の内容を信じたことは軽卒であったといわざるを得ないが、会計担当は、偽造した本件預金口座の残高証明書を会計監査に提示し、また、理事長に対しても会計について説明しており、同被告らは一定のチェックはしていたものであるとも指摘。

本件は、以上のような事情の下において、会計担当理事の横領行為という不法行為につき、非専従で多額とはいえない謝礼を得るのみであった理事長や会計監査役員の過失が問題となっているものであると言及。

しかるところ、本件規約においては、理事長が前年度の経費に関する報告書を作成し、自治会員に報告しなければならないとされているなど、理事長を含めた役員の選任・監督については各自治会員も責任を負っているといえるものであって、それにもかかわらず、上記のとおり、各自治会員の会計を含めた本件自治会の管理運営への関心が高くなく、役員に任せるままであったことも、横領行為が継続して行われた原因の一つであるといわざるを得ないとしました。


以上の諸事情によると、横領行為による損害を理事長及び会計監査役員にのみに負担させることはできないというべきであって、損害の衡平な分担の見地から、過失相殺の法理を類推し、理事長らの責任を9割減ずるのが相当であるとしました。

理事長らが負う責任は、確定遅延損害金を含めて、約485万円と判断しました。

 

横領事件に学ぶ教訓

通帳・印鑑・キャッシュカードなどを一人に持たせ続けるのはNG。

監査では、通帳原本も確認すること。

自主管理物件では、住民も無関心になってはいけない、任せきりNG。

 

 

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