マンション管理費と相殺【否定例】。横浜市の法律事務所

HOME 〉FAQ(よくある質問) 〉Q.マンション管理費と相殺できる?
法律相談風景

FAQ

相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

FAQ(よくある質問)

 

Q.マンション管理費と相殺できる?

高裁レベルの裁判例では、否定されています。マンション管理費の全体的な必要性から、性質上、相殺できないという結論となっています。東京高等裁判所平成9年10月15日判決です。

この判例は

  • 管理費請求をしているマンション管理組合
  • 管理費請求されたが、自分も権利があるので相殺したい

ような人はチェックしておくと良いでしょう。

 

マンション法律

 

 

事案の概要

原告が管理組合。被告が管理費等を滞納したので、管理費等を請求した事件です。

被告の言い分は、立て替えている費用が多数あるので、相殺するというものでした。

一審の地方裁判所は、被告の言い分を認めず、管理組合の請求を認容。

そこで、被告が控訴。

高等裁判所は、被告の立替費用について、大部分を否定していきますが、一部を認定。

そこで、未払管理費と相殺できるか問題となりました。


管理人の対応で、管理費の支払拒絶はできない

控訴人の代表取締役がロビーで来客と面談していると10分もしないうちに管理人が来てロビーを使わせないようにしたとか、鍵を渡してほしいと管理人に言ったところ103号室の用事はできないと言われ、それでは鍵をポストに人れていると伝えてほしいと頼んだところ管理費を払ってないのだから103号室の依頼は一切できないと言われたというような主張がされています。

しかし、そのほかには控訴人のために一般管理業務がされていないことについて触れる具体的な証拠はないと指摘。

そして、右陳述書の記載によれば、そのようなことがあったとしても控訴人が本件管理費等を滞納し始めた後のことであることが明らかである上、一般管理費は管理人のする管理業務と直接の対価関係のある性質のものではないから、これをもって一般管理費の支払を拒絶する理由とすることはできないと一蹴しています。

 

自分が関する訴訟費用を理由に管理費の支払拒絶はできない


また、被控訴人の平成4年度から平成6年度までの通常集会の議案の中に、控訴人方(一階)の天井の漏水につき二階の区分所有者が控訴人から損害賠償を求める民事訴訟を提起されたときはその者のため被控訴人が弁護人の選任その他の協力をし訴訟費用、弁護士費用を負担する旨提案するものがあり、これが可決されていることについて言及。

控訴人は、一般管理費は右のような控訴人相手の訴訟の費用として使用される可能性のあるものであるから控訴人にその支払義務はないと主張するのであるが、被控訴人がこのような議案を用意し集会で可決されたとしても、それ故に控訴人が一般管理費の支払を拒絶することができると解すべき理由はないとして、この主張も否定しています。

裁判所は、この議案は、被控訴人が二階からの漏水防止のために二階の区分所有者方の排水管エルボの交換工事を実施しようとしたのに対し控訴人が反対したためこれが実施できなかったことを受けて提案されたものであることが認められるから、この点からしても右主張は理由がないとしています。

 


境界壁の修理工事費の償還請求権との相殺

控訴人は昭和61年4月17日前所有者から本件建物を買い受けました。

本件建物は赤坂アーバンライフの一階部分で登記簿上の床面積319・73平方メートルという広い専有部分。

赤坂アーバンライフの敷地は本件建物の南側及び東側が相当広い庭園になっているが、管理規約(赤坂アーバンライフ管理規約)では「一階専有部分に直接南面および東面して造園された庭園の一部は、その専有部分の区分所有者が無償で専用することができる。但し、庭園以外の目的に使用し、第三者に転貸し、占有させ、または構築物を設置してはならない。この場合、樹木の維持管理は、その区分所有者が行う。」と定められています。

一階専有部分の区分所有者に該当する控訴人が右の南面及び東面する庭園について専用使用権を有していました。


庭園と東側隣地との境界は直線の境界であるが、その境界には万年壁が設置されており、万年壁の西側にはこれに沿って少し間を隔てて丈の低いコンクリート製の擁壁(境界壁ではない。)が設置。

そして右の二つの壁の間には土が入れられ、樹木が一列に植えられていました。

控訴人は、昭和62年11月、前記コンクリート擁壁の壁面に煉瓦様タイルを貼る工事をしたが、右工事費用は226万2000円であり控訴人がこれを負担して支払いました。

控訴人は、コンクリート擁壁は共用部分であるところ、前記のように植えられていた樹木の根が右擁壁を圧迫して変形させ、地震等で倒壊して人的被害の出ることが予想されたため、被控訴人のためにする意思でその壁の修復を行い表面をタイルで補強したものであるから、前記費用について被控訴人に償還を請求する権利があると主張。

しかし、工事が必要であったことまでを認めることはできず、そのほかに右事実を認めるに足りる証拠はないとして否定。

かえって、控訴人は前記庭園について前年の昭和61年に大規模な造園工事を施し立派な庭園に仕立てたが、右のタイル張り工事の結果右庭園は更に見映えのするものになったことが認められるのであり、このこととタイルをコンクリートの壁面に張ったとしても倒壊防止策として特に有用なものとまで考え難いことに照らすと、控訴人は庭園の専用使用権者として主として控訴人自身の利益のために前記工事をしたと推認せざるを得ないと指摘。

そうすると、控訴人は被控訴人に対し右工事費用の償還を請求することはできないから、右償還請求権を自働債権とする控訴人の相殺の主張は、その余の点について判断するまでもなく採用することができないとして否定しました。

 


万年壁に隣接する竹壁の工事費償還請求権との相殺

控訴人は関連会社名義で、平成2年5月、前記東側べルト状部分の樹木の外側(前記境界の万年壁の内側)に沿って竹の桂垣を巡らしたこと及びその費用として109万4323円を要しました。

控訴人は、右工事は前記境界壁たる万年壁が老朽化し倒壊が予想されたので被控訴人のためにする意思でしたものであるから、右費用について被控訴人に償還を請求する権利があると主張。

しかし、竹垣が必要があったため設置されたことを認めるに足りる証拠はないとしました。

かえって、竹垣は右主張の倒壊に備えた被害防止の面でそれほど効用のあるものではなく、前記タイルと同様に庭園の美観を増す効用が著しいものであることを認めることができるから、控訴人は庭園の専用使用権者として控訴人自身のために右工事をしたと推認せざるを得ないと指摘。

そうすると、控訴人は被控訴人に対し右工事費用の償還を請求することができないから、右償還請求権を自働債権とする控訴人の相殺の主張は、その余の点について判断するまでもなく採用することができないとして主張を排斥。

 


共用部分の樹木剪定費の償還請求権との相殺

控訴人は昭和61年10月ころから、東側べルト状部分に植えられている樹木の剪定等の手入れを控訴人の費用でしてきたことが認められるところ、控訴人は、右手入れの費用は共用部分に係る費用であり被控訴人のためにする意思でしたものであるから、控訴人は被控訴人に対しその費用の償還を請求する権利があると主張。

しかし、現地の状況によると、東側べルト状部分は隣地との境界の内側でありそこに植えられている樹木は控訴人が専用使用権を有する庭園の一部に該当すると認めるのが相当と指摘。

そして、管理規約によると、庭園の樹木の維持管理は控訴人がその費用負担においてすべきものであることが明らかであり、この定めを無効とすべき事情があることを認めるに足りる証拠はないとしました。

そうすると、控訴人は費用の償還を被控訴人に請求する権利はないから、控訴人の前記相殺の主張は、その余の点について判断するまでもなく採用することができないと排斥。


カンボジア大使館敷地内の樹木剪定費の償還請求権との相殺

庭園の南側は旧カンボジア大使館の敷地に接し右大使館敷地は高木が植えられた庭園になっているが、昭和61年ころ以降は右庭園の手入れがされなかったため、樹木の枝が赤坂アーバンライフの敷地にはみ出し、通風障害、害虫被害等の支障を及ぼし放置し得ない状況になりました。

しかし、右大使館敷地の管理者は正常な対応ができない状態にあり、赤坂アーバンライフ側が自衛として対処せざるを得ない事態になっています。

そして、管理規約では「敷地及び共用部分の管理については管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。但し、バルコニー、庭園等の管理のうち、第七条第一項乃至第三項に定めるものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担とにおいてこれを行うものとする。」と定められていました。

被控訴人は一部この状況に対処し、例えば平成6年4月には被控訴人が越境する樹木の剪定等をしその費用29万4580円を負担。

しかし、被控訴人は、控訴人が専用使用権を有する前記庭園に面する部分は控訴人の負担ですべきものとして右部分については右剪定等をしていません。

控訴人は、昭和61年以降この部分について自ら注文して剪定作業をしているが、その費用として、昭和61年10月の作業については10万8000円(ただしこの費用には専用庭園の手入伐採費用も含まれている。)、平成元年10月の作業については32万円(ただしこの費用にも専用庭園の手入伐採費用が含まれている。)、平成6年7月の作業については35万0200円、同年12月の作業については36万8740円の合計114万6940円を要しました。

ところで、庭園の樹木の維持管理については、控訴人が自らの費用で行うことを要することは前記のとおりであるが、前記管理規約は、右庭園に面する敷地外に存在する樹木が右庭園を含む敷地及び赤坂アーバンライフの居住者の生活に被害を及ぼす場合にこれを予防しあるいは除去することまでを控訴人の義務とするものではないと指摘。

そして、旧カンボジア大使館敷地の樹木は控訴人を含む赤坂アーバンライフの区分所有者全員の利益のため右区分所有者側で剪定せざるを得ない実状にあると認めることができるとしています。

そうすると、控訴人のした前記作業は、真に必要であった限りにおいて被控訴人がする義務のあるものを控訴人が代わってしたということができるから、被控訴人は控訴人に対しその費用を償還する義務があるというべきであるとしました。

そして、控訴人は平成6年中に2度作業をしているが、そこまでの必要があったことを認定するに足りる証拠はないから、そのうち低額の35万0200円が必要費用であったと認めるのが相当と判断。

また昭和61年及び平成元年の作業はいずれも専用庭園の手入伐採費用も含むものであるところ、専用庭園関係の費用部分は多くても4万円を上回るものではないと認めるのが相当であるから、これを差し引くとそれぞれ6万8000円及び28万円になり、これらが償還請求することのできる費用に当たると認めることができるとしました。

 

勝手にした工事費用を管理組合が負担?

被控訴人は、区分所有者の一人にすぎない控訴人は被控訴人の承諾を得ずに管理行為をすることはできないところ、控訴人のした前記剪定等は被控訴人の承諾がなくその意思に反してされたものであるからその費用の償還を請求することはできないと主張。

しかし、控訴人は被控訴人がその義務のある管理行為を怠ったのでやむなく自らこれをしたのであり被控訴人はこれにより右費用の負担を免れる利益を得ているのであるから、控訴人は被控訴人に対し事務管理費用の償還として右費用の償還を請求することができるというべきであるとしています。

 

管理費とは相殺できない

そして、控訴人が平成7年4月13日の原審第四回口頭弁論期日において右債権を含む債権を自働債権とし被控訴人の本訴請求債権(ただし拡張前)を受働債権として対当額で相殺する旨の意思表示をしたことは本件の記録上明らかであるとしました。

しかし、本件請求債権のようなマンションの管理等は、マンションの区分所有者の全員が建物及びその敷地等の維持管理という共通の必要に供するため自らを構成員とする管理組合に拠出すべき資金であり、右拠出義務は管理組合の構成員であることに由来し、その内容は管理組合がその規約に定めるところによるものであると指摘。

また、マンションの維持管理は区分所有者の全員が管理費等を拠出することを前提として規約に基づき集団的、計画的、継続的に行われるものであるから、区分所有者の一人でも現実にこれを拠出しないときには建物の維持管理に支障を生じかねないことになり、当該区分所有者自身を含む区分所有者全員が不利益を被ることになるのであるし、更には管理組合自体の運営も困難になりかねない事態が生じ得るとしています。

このような管理費等拠出義務の集団的、団体的な性質とその現実の履行の必要性に照らすと、マンションの区分所有者が管理組合に対して有する金銭債権を自働債権とし管理費等支払義務を受働債権として相殺し管理費等の現実の拠出を拒絶することは、自らが区分所有者として管理組合の構成員の地位にあることと相容れないというべきであり、このような相殺は、明示の合意又は法律の規定をまつまでもなく、その性質上許されないと解するのが相当であるとしました。そうすると、控訴人の前記相殺の意思表示は結局効力を生じなかったことになると結論づけました。

 

以上によると、被控訴人の当審における拡張前の請求は理由があるから、これを認容した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないとしました。

管理費の支払義務は残ることになります。

 

相殺ができない場合

相殺は、お互いに債権を持っている場合に、対当額で消滅させるものです。

当事者の合意で相殺を禁止することはできます。契約などで相殺禁止条項をつけることがあります。

また、法律で禁止されているケースもあります。

それ以外に、債務の性質上、相殺を許さない場合には、相殺ができないとされます。今回の管理費との相殺は、この声質を理由に相殺できないとされました。

この判決に対しては、一律禁止されるものではないのではないかとの指摘もされています。

相殺する債権の性質や金額によっては、相殺が認められる可能性もあると考えます。

 

このように相殺自体が否定された場合には、管理費自体は支払い、立替金の請求は別途することになります。

 

関連リンク

 

横浜にお住まいの方で、民事裁判に関する法律相談をご希望の方は、以下のボタンよりお申し込みできます。

相談の予約、お問い合わせは 0120-141-961

弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

法律事務所ロゴオフィス

ジン法律事務所 弁護士法人

横浜駅前事務所

代表者:弁護士 石井琢磨

〒221-0834
横浜市神奈川区台町16-1
ソレイユ台町805

TEL:0120-141-961

8:00~20:00

 

 

<主要業務エリア>

神奈川県地図

クリック 相談予約

ジン法律事務所弁護士法人Webサイト

横浜駅前事務所

6/21相談会開催


厚木本店

6/21相談会開催

ページトップへ